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俺は今奴の船の中の檻の中にいる。
俺が奴隷船に至るまでの話をしうか。
俺は鬼人が治める領地で新たな生を受けた。
俺には嘗て此の世界人族として生きた記憶が有った。此の世界では、人が生まれ落ちると同時に体の何処かに呪印が刻まれる。その呪印の形によって使われる魔法が決まる。
只此の世界は、嘗て俺が過ごした時代よりも優れており、呪印を魔石に刻むことによって、威力は小さくなるが自分に刻まれた呪印以外の魔法を使う事が可能になっていった。
此を人は魔導具と呼んでいる。
魔導具が流通し始めると呪印にも変化し始めた。
例えば、戦闘用の魔導具が使えない代わりに魔法が強力になったりする特殊な呪印も出てくるようになった。
此のような特殊な呪印を持って生まれてきた子供は忌み子とされ不遇の扱いをされることが多かった。
此の説明である程度はお気付きだと思うが、此の時代において俺に刻まれた呪印は特殊だった。
俺に刻まれた呪印は、二種類強化と鍛冶の呪印だ。これだけ聞くならそんなに特殊ではないように感じるかもしれないが、まあ、理由を一つ一つ説明しよう。
まず通常の強化と鍛冶の呪印の説明から始めよう。まず、強化の呪印だが効果としては、武器の強化、通常の武器の威力を二倍にする。それと、身体能力の強化と感覚器官の強化で、効果としては、本来の能力の二倍程度に強化される。
それと、本来此の呪印を使用する場合は、此の内のどれか一つだけ使用するのが此の呪印の本来の使い方だ。
そして、此の世界の大半の人間が刻まれる基本的な呪印でもある。
次に、鍛冶の呪印だが、本来の鍛冶の呪印がもたらす効果は、生物の解体と、木材や鉱石、生物の素材を壷か何かにいれ、その壷に手を触れながら鍛冶の呪印を発動すると、加工の手順をすっ飛ばして、壷の中に完成品が出現する。もちろん、此の完成品は、通常の手順を踏んだ完成品には劣る。
これらの効果が鍛冶の呪印の特性になる。
これが俺の場合になると、嘗ての人族の時代にも同じ呪印をしていたこともあって、少し変化している。
そして、此の変化こそ、俺が忌み子と認定され奴隷として売られる原因の一つになった。
まぁ、とにかく俺の呪印の特性を説明すると俺の強化の場合は、身体強化、感覚器官の強化、これらの身体強化の効果は約1.5倍、武器強化に関しては、弓にしか強化の効果はなく、その代わり弓矢を強化した場合効果は通常の強化の効果は約5倍になる。
それと、もう一つ変化した特徴がある。
それは、通常強化は、今まで説明した効果の内のどれか一つしか通常使用出来ない、それが俺の場合は、此の強化の効果を同時に3つまで使用することが出来る。勿論その際強化の効果は、身体強化で1.2倍、武器強化は2.5倍にまで低下することになる。
次に、鍛冶の呪印だが、俺の場合鉱石系だとかには効果はなく、木工加工にのみ効果を発揮し、特に弓矢を加工した場合には、通常よりも高い性能の弓矢を作成出来る。
それと、素材加工に関しては、今のところ生物の皮と肉の解体にしか効果を示していない。