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the joy ~戦場の歓喜~  作者: どうしようも納言
2/5

the pearl haborr  ~奇襲~


RRPG[the joy]内では六十年間に一度、運営側から世界中で戦争が起こることが許可される。リアルタイムでは一カ月に一度ほどのことで、プレイヤーの過半数が参加するこのビックイベントはthe joyの壮大さが窺われる。なぜなら人類の三分の一以上が、このゲームに参加しているため、当然その規模は大きなものとなる。

 世界の総人口は八十億人ほどであったので、25億人ほどということになるだろうか。90億を超えた時もあった。だが、豊かな国の出生率が下がるのは全国共通のことらしく、その後、徐々に下がり21世紀初めとほぼ同じ80億になり、今も徐々に減りつつある。


 ゼロ戦の大群が日本を出征したのは、日曜日の朝のことだった。まだアメリカチームには公式に宣戦布告したわけではなかった。そもそも太平洋戦争も起こってから150年近くたつと、その戦争自体童話のように扱われ、日本が奇襲を仕掛けた、という話はネットの中で一つの笑い話となっていた。

 そのため、日本のチームは今回も宣戦布告をするつもりはなかった。だが、公の場では公表しないだけであって、むしろ個々人では、「いまから奇襲、行ってきます!」「こいやジャップ!」などとジョークの掛け合いがその朝には頻繁にされていた。

 日本の奇襲は、カルフォルニア州を狙った。カルフォルニアには急襲にそなえ、およそ一千万のプレイヤーが集結している、との情報だった。

 

 ~最前線~

 先頭の男の挙手に従って、カルフォルニアの大都市、ロサンゼルスに数千のゼロ戦から一気に爆撃が開始された。

 地面に火が付いた、と思った次の瞬間、街は火炎に包まれた。

ゼロ戦の重低音があたり一面に響き、建物という建物に爆撃を加える。

「五十六さん、そろそろ...」

五十六、と呼ばれた先頭の男は応じ、ゆっくりとうなずいた。

「阿部」

右手を横にまっすぐ伸ばす。すると、後ろの機体に着物を着た男が現れ、一礼し、1枚の札を懐から取り出す。強風にあおられ、札は激しく左右に動いていたが、しっかりとつかんでいる。

 「それでは、五十六様、また後で」

着物の男はそう言い残すと、上空一万メートルの機体から飛び降りる。

「落下傘部隊、続け」

五十六が発するやいなや、後続のゼロ戦から、プレイヤーが次々と飛び降り、地面すれすれのところで花が咲き誇る。

 

「秘術、大太郎法師...」

地上まであと千メートルというところで阿部晴明は静かに唱える。

その瞬間、晴明の目下に縦三十メートル、横二十メートル、世界一、長い大仙古墳並みの足跡が二つ、くっきりと浮かび上がる。周囲の山々は消え、代わりに足跡の上に土が、見えない力によって積み上げられていく。二つの足跡の上に積み上げられた土は百メートルほどの高さで合流し、その後、人の形を整えていく。最後に顔が形成される。鼻の穴が大きく開く。深呼吸しているようだった。胸のあたりの土が膨張し、ぱらぱらと下に落ちていく。その胸を張った状態で一度止まると、次の瞬間、この世のものとは思えないような声量で咆哮した。

 あらかじめ支給された耳栓をしている日本チーム以外、巨人の周囲10キロ圏内のすべての鼓膜という鼓膜が破壊される。

 「トラトラトラ...」

もう一度、山本五十六がつぶやくと、彼はその場から姿を消した。

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