Alice、ドア
連れてこられたのは、
崖にそびえ立つ傾いた
カラフルな建物。
正直…悪趣味……
「悪趣味とか思ったでしょ?」
未だに本名を教えないチェシャ猫さん
があたしの心を当てる。
「いいえ…。す…素敵」
チェシャ猫はほほえむと
白いスーツから出る白い手で
その傾いた建物のドアをノック…
するかと思ったらぶち破った。
「アドルフ?いるんだろ」
しかも人んちか、おい
アドルフ?誰だろ…
1、2分程その場にいると
黒い作業着に身を包んだ人が
あらわれた。
「さーせん!!師匠今いないっす」
その人は茶髪にピアス、
美形だけどあまり絡みたくない容姿
をしていた。
その人はチェシャ猫と
会話を始めた。
会話の中でチラホラ聞こえる
アルフ、というのが
彼の名前なのかな。
その間もチェシャ猫は
左手であたしの手を握ってるから
動かずに待っていたけど…疎外感。
その時、
「おかしいな…
でかけるまえはドアはドアだったのに」
背後から低い声がきこえて振り返る。
気のせいか、
チェシャ猫が手を握る力が
強くなった…
「やぁアドルフ。」
チェシャ猫の妙に上擦った声が
気になるけど
アドルフ、と呼ばれた人は
赤と紫、青、黄色の混ざった
不思議で大きな帽子に
真っ赤なスーツ、
木製の杖をついていて
多分30前半ぐらい…?
もっといってるかも
その人は
あたしをジロりとみると
「やあアリス。中に入りたまえ」
と笑顔で言った。
アドルフはチェシャ猫を
ちら、とみると挨拶もせず
真横をすり抜けて悪趣味な
家に入っていった。
彼の家か…
納得。
「チェシャ猫、入ろう?」
固まってるチェシャ猫に
そう言うと
どこを見てるのか心ここにあらず
といった表情で
軽く頷いた。
「アリス、俺の手を離さないで」