Alice、チェシャ猫
「あ。…動けないのね」
そういうとその声は
あたしをふわりと持ち上げ
すとん。抱きしめた。
この男の人からは
薔薇の香りが強くした。
お礼を言おうと顔をあげると
…美しい。
その一言に限るよね。
日光に反射してピンク色や
紫に輝く髪の毛
金色の目
白いスーツ。
まるでホストのような格好だけど
それがその人の自然体のような
とりあえず今まで見たことがないほどの
美しい顔に戸惑った。
「あの…ありがとう」
とりあえずお礼をいうけど
ドキドキしてしまう。
「あの…お名前は。」
さりげなく聞いてみた。
目の前でまだあたしを
抱きしめてる彼は
甘い声に戻って
「うーん… チェシャ猫。
俺、チェシャ猫っていうんだ。」
チェシャ猫…
聞いたことがあるような…
「名前らしくないのね」
「うん、君の名前も聞いてないのに名乗るわけないじゃん」
?!
性格悪いな…
「あたしは、ジュリア」
「違うよ」
?!
「いえ、ジュリアです」
「君はここでは…アリスというんだ」
意味がわからない。
「何言ってるかわかりません。」
「まぁ、いいよアリス。」
その人はあたしをアリスと
決めつけて手をひいた。
「血の匂いに敏感な人たちがきてしまう、さぁこっちにおいで」
?わからないけど
その一言に言いようのない不安を
覚えるとともに、
ここは、どこなのか。
その一言であたしは
どんどんあの家と離れられるような
気がしていた。
そして、お姉ちゃんの名前が
彼からでたことは
当然、とでも言わんばかりに
しっくりあたしの心に落ち着いた。
あたしはお姉ちゃんに
会えるのかもしれない…
そう思ったよ。