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fall to darkness  作者: クロシン
1/2

1 浅き夢

長編を書こうと思ってあれこれ設定を考えていたら書けなくなったので思いきって書きながらストーリーを作って行こうと思います。読んで下さる方が読むだけ無駄だったと思われないよう、せめて暇潰しくらいになれば幸いです。

幾つもの星の間をすり抜け、悠久の時を浅き眠りに揺られながら目覚めの時を待つ。貴方はその時、そばにいるのだろうか。



帝国暦79年 4月 帝都アンカレス_某所


目が覚めると小窓から光が指している。春の空気と母親の焼くパンの匂いが寝室を満たしている。

アレイは顔をくしゃくしゃとなで回すとベッドから這い出しキッチンへと足を引き摺った。キッチンでは朝食の準備をする母と妻のミランダの微笑ましい姿があった。

「あら、おはようアレイ。今日は自分で起きれたのね?」優しいミランダの声だ。

そう、いつもならミランダが起こしてくれるはずだったが、変な夢のせいで目が覚めてしまったのだ。どんな夢なのかは覚えていないが妙に寂しい夢だったように感じる。

アレイはテーブルに座りながら二人の姿を眺めていた。時折、母の小言が聞こえるがアレイは気にしない。父親の大きな身体か狭いキッチンを更に狭くした。

朝食は母の他愛もない話で一人盛り上がり、アレイと父親は黙々とパンを頬張る。時々ミランダが愛想笑いをする。それで平和な一日が始まるのだ。

「ねぇアレイ聞いてる?」

母親が神妙な面持ちで聞いてくる。もちろん聞いてなどいなかった。

「なんだい母さん」

「だからさ、今度軍が大規模な侵攻作戦をやるんだって」

「侵攻作戦??どこを攻めるのさ。」

「さぁね。ただ南部に軍が集結してるって噂よぉ」

帝国の南方に広がる草原の先にリリノイカと言う狩猟民族がいくつも集まる国がある。近年国王であるダムサキ大王が部族を束ね幾度となく国境付近で小競り合いを続けていたが、最近では軽視出来ないくらいの軍団になりつつあった。隣国のコーエム中立国が裏で手を引いていると言う噂まで流れていた。

「うちら民間人には関係ないさ。」

「関係なくありません。あなたはまだ赤ん坊だったから知らないでしょうけどあの戦争の時はみんな徴兵されたんだから」

子供のころから母親に何度も聞かされていて戦争の話は恐らく経験者並に良く知っている。


今から28年前、いまはなきササリア王国と我がイカルガ帝国の激しい戦争が起こった。始まりは定かではないがササリアの王妃の怒りをかった現皇帝ザルシュベルトがササリアの軍隊を迎え撃ち、壊滅させ更に敵地を焦土と化して戦争は終結した。


戦場となった地にはいまは避暑地として幾つかの施設が点在している


なぜ一国を壊滅させるまで打撃を与えたのかは未だに明かされていない。


「また戦争だなんて…」

ミランダが声を震わせている。

「大丈夫さミランダ!!帝国にはシュリングナー将軍がいるし帝国軍は強くなったんだ、それに…」

アレイの話を遮るようにテーブルにバンと手をついて父親か立ち上がった。

「仕事だ。行くぞアレイ。」

声こそ穏やかではあったが父親の顔には怒りとも悲しみともつかない表情が滲んでいた。


アレイの父親は28年前の戦争で徴兵された兵士の一人だった。戦争が終わると妻と二人で商売を初め、真面目にコツコツと信頼を重ね、家族を養っている。

アレイは戦争孤児だった。戦場で亡くなった母親らしき女性に抱かれたアレイを救いだし、子供がいなかったこともあってそのまま養子としたのだ。アレイがその事を知ったのは15歳の時だった。家族と目や髪の毛の色が違うのに気付いてはいたがなんとなく聞けずに悶々としていたある日、父親に真相を告げられた。


その時にその母親らしき女性が身に付けていた星の形をしたペンダントを受け取ったのだ。なぜ戦場に赤ん坊を抱いて倒れている女性がいたのかはこれまた不明だ。戦争は混沌としたもなだからだと父親は言う。


きっと実の母親にも事情があったのだろうと割り切れれば良かったが、そんなこと一生無理だろう。その話を聞いた夜、自分のなかの感情がぐちゃぐちゃに掻き乱され混乱した。感情をどう処理したらいいか分からなかったのだろう。当時幼なじみだったミランダの家まで走った。そして感情の赴くまま彼女を求めた。そして彼女は全て包み込んでくれたのだ。次の日、ミランダの父親に死ぬほどほど殴られたがアレイは平静を取り戻していた。


時間はかかったがミランダとの交際も許され、今では結婚して最愛の妻となった。


しかし、一度戦争が始まればこの平穏な日々も一変する。


そしてこの半年後、帝国暦79年 10月

帝国南部 フェレット平原にてリリノイカの5万の軍団と帝国軍8万の戦闘が行われた。

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