哀しみのヴォルガ
高倉先生は善人だったがお金持ちのお坊ちゃまだったため、世間知らずなところとちょっとわがままなところがあり、歌謡界の大御所芭蕉さんを年に一度の講演会に呼ぶと言い出し、紫先生や三条校長はにがりきっていた。
定家くんの父俊成さんは温厚な人だったが芭蕉さんのことは「あいつは悪人!」と一言で切り捨てていた。(-_-;)
講演会の当日、芭蕉さんは絶好調だった。
「まあ、僕なんかはね、こんな雅な街の水で育ってね、下賤な生まれだけど、どこか影響を受けてるんだろうね、ギャハハ。おかげさまで紅白のオオトリも何度もやらせていただいてね、ギャハハ。NHKの「村人ナウ」では長野県、北陸、東北なんか回らせていただいてね、スペシャルは明石からお送りしましたね。村人たちが歌合戦をやり、私が審査して最後は私の歌唱で締める。まあ、バカだね。歌バカですよ。ついに無能無才にしてこの一筋につながれる!」
その言葉とともに最大のヒット曲「哀しみのヴォルガ」のイントロが流れ出し、高倉先生、三条校長、鳥羽くん、式子ちゃん、啄木くんらは総立ちになり、涙を流し、叫んでいた。
定家くんと紫先生だけ同じ悪人の香りを察知し、眉間のシワを深くしていた。
体育館のステージの上にスモークがモクモクし、七色のライトがきらめく。
熱狂するみんなに囲まれ、定家くんと紫先生は体育座りしていた。