六年二組
キーンコーンカーンコーン!
終業のベルが鳴る。
六年二組の教室は歓声にあふれた。
高倉先生が教科書などを片づける。
高倉先生は若く、ハンサムで、優しい先生だった。
週末は街のオーケストラでフルートを吹いていた。
乱暴者でガキ大将の鳥羽くんが元気に立ち上がる。子分の子規くんを連れて、野球に行くのだ。
優等生の式子ちゃんが立ち上がる。
式子ちゃんは富豪の白河家に生まれたお嬢様だった。
可愛く、優しく、高倉先生のオーケストラと共演でアリアを歌ったり、ピアノを弾いたりしていた。
そんな式子ちゃんを暗い情念の眼差しで見ているくら~い子がいた。
定家くんだった。(-_-;)
定家くんはパパが高齢になってから生まれた子だった。
定家くんのパパは文学に夢を持ち、「世界」や「図書」を定期購読していた。
若い時に前橋市青少年の詩コンクールで銅賞を取っていた。
定家くんもその影響で暗い情念の詩を書いていた。
「つるつるつるつる僕のツル。式子ちゃんにぐるぐる巻きつく(以下自主規制)」
高倉先生は定家くんがクラスに入ると知った時、ちょっとイヤだなと思ったのだが、定家くんは高倉先生を慕って、甘えていた。
定家くんは式子ちゃんのことも不気味につきまとっていたが、クラスの宮内さんという女の子が、式子ちゃんは隣街の大金持ちの平くんという子が好きなのだとおしゃべりしていて、ガラスのハートに矢を突き立てられた。
定家くんは精神のバランスをとるため、式子ちゃんのリコーダーをなめようと企んでいた。
「年も経ぬいのるちぎりははつせ山尾上の鐘のよその夕暮れ」
「わが恋よ何にかかれる命とて逢はぬ月日の空に過ぐらむ」
また訳の分からん詩を作っている。(-_-;)
みんなが帰った後、定家くんは式子ちゃんの机を探った。
あったリコーダーだ!
定家くんはリコーダーをはむっとくわえた。
ピ~ヒョロロ。
と、そこに人の気配がした。
定家くんは慌てて、リコーダーを袋にしまった。
「お~、定家、俺のリコーダー、お前が持ってたのか」
ガーン!(-_-;)
「隣のクラスの実朝にかしてやったんだけど、実朝は式子ちゃんに渡したって言ってたんだよな」
定家くんは硬直していた。
「消えわびぬうつろふ人の秋の色に身をこがらしのもりの下露」(続く)