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俺と屍と鉄パイプ。  作者: 橘月 蛍
第1部 悪夢の始まり、日常の終わり。
6/47

俺と屍と鉄パイプ。あと生きるための策。

「よし、これでどうだ?」

直人から、班分けされた紙を渡される。そこには…

第1班

無月龍人(むつきりゅーと)

杉田玄白(すぎたげんぱく)

伊藤夜無(いとうよな)

・佐々木恋司(ささきれんじ)

中島和夫(なかしまかずお)


第2班

赤城直人(あかぎなおと)

原雄介(はらゆうすけ)

和田忠司(わだただし)

楠木太一(くすのきたいち)

平聡司(ひらそうじ)

真門淳(まかどあつし)


第3班

穂月綾(ほづきあや)

佐藤雅也(さとうまさや)

安部正徳(あべまさのり)

須籐平(すとうひとし)

剣岳遥(つるぎだけはるか)


以上。

と書かれていた。まぁ妥当だな。

直人に頼んで班毎に固まらせ、説明を始めた。


「ちゅーもーく。話は直人から聞いていると思うので、さっそく詳細の説明をします。

1班はラルズで食糧の確保及び制圧。

2班は町民体育館と美深高校の生存者の探索及び武器の確保。

3班は美深スーパーで食糧の確保及び制圧。

1班は後で俺から説明する。2班はどちらかで生存者を見つけたら、一度ここに送り届けて再探索。3班は終わり次第戻って来て、周辺の制圧。

っと、こんな所だな。質問は?」

皆、近くの人とぼそぼそと話をする。何人かが手を上げる。

その中から、茶髪で身長が170前後のまだ幼さの残る青年を指差した。


「じゃあお前から。とりあえず名前は?」

「佐々木恋司だ。何でアンタそんな偉そう何んだ?気にいらねぇ。」

苛立ったように言い、こちらを睨みつけてくる。

まぁ、そりゃあそうだ。何処の馬の骨とも分からんやからに命令されりゃな。


「そう言いたいのは分かるが、生き残るためだ。この人数を養って生きていくためには、誰かが動かなければいけない。今回はそれがたまたま俺だったって話だ。それが嫌なら勝手に動いて勝手に死ね。そんな奴面倒見てられん。」


「てめぇ!」

佐々木は立ち上がって、俺の襟首を掴む。

ん?胸倉の方がいいのか?今は関係ないが(笑)


「何笑ってやがる!」


「血気盛んなのは良いが、冷静でいられないと簡単に死ぬぞ?大体、お前自身が皆のために何かしようとしていたか?何もしようとしないで吠えるだけなら犬でも出来る。」


俺を突き飛ばし、舌打ちする。

事実を言っただけでこれか。つか、コイツ俺の班じゃねぇか。だるいな。


「はい、次。」

ふてくされた佐々木をスルーして、他に無いか聞く。

すると、何人かがまた手を上げた。さっきよりは少ないが。


「じゃあ次アンタ。」

黒髪、無精髭のおっさんを指差した。何というか…おっさんだ。…ひたすらおっさんだ。


「おう、俺は真門淳まかどあつしだ。かまど熱しじゃねぇからな。言った奴は、女子供問わずぶん殴る!」


…言えとゆう事か。


「で?かまど熱し。どんな意見だ?内容によっては、一生かまど熱しって呼ぶぞ?」

真門は怒りに肩を震わせながら呟く。


「言うなって、言ったばかりじゃねぇか…お前……殺すぞ!」


「甘いな。俺は女でも子供でもない。お前に殺される筋合いは無いさ。はっはっは。」


「屁理屈こくなぁー!糞がきゃあああぁぁぁ!!!!!!!!」

怒りの余り、真門が吠える。


「はぁ?俺はガキじゃねぇって。聴こえなかったのか?お前の耳は節穴だな。」

節穴発言はショックだったようで、真門はガックリと肩を落とし俯いてもそもそと喋る。


「もういいわ。何が悲しくてこんな事してんだか…。」

弄るの飽きた。本題行こうか。


「で?質問は?」

真門はグッタリしているが、知った事ではない。


「あぁ、質問な…。あれだ。ずっとここにたてこもるのかどうかだ。いくら、食い物が沢山あってもライフラインはいつか止まるんだろう?ここにいるのは限界がある。」


俺はニタニタしながら質問に答える。


「いいとこ突くじゃねぇか。ここはあまり保たない。2、3日で移動する事になるだろうな。名寄に拠点を一つ作っている。そこへ行くつもりだ。そのうち自衛隊の基地にも行かないとな。覚悟しとけよ?お前ら。」


場がざわめく。

役場には既に50人近い人間がいる。この人数が生活するには狭すぎる。

ただでさえ狭いのに、これからまた人を連れてくる予定なのだ。ここに止まり続けるのは無理があるというものだ。

真門はその事に気づいていたようだが、苦々しい顔をしていた。


「他に質問は?」

一瞬静まり返る。


沈黙の後、一人の女性が手を上げた。見た目はちょっと若い主婦といったところか。自然なライトブラウンの髪が肩甲骨の間位で緩く止めてある。


「一つだけ、いいですか?」

「あぁ。いいぞ。」


「私は剣岳遥です。…どうしてあなたはそこまで冷静なんですか?怖く無いんですか?」

こちらの眼をしっかりと見据えて言ってくる。


「怖いに決まってるだろ?だけどな、そんな事言ってたら生き残れないんだよ。ほんの少し脚が竦めば死は俺たちを喰い尽くす。何より…」

口角がつり上がるのを抑えられない。


「俺はもう壊れてる。どれだけ感情が泣き叫んでも、俺の心まで届かないんだよw

壊れかけた機械はふとしたキッカケで治らない程にグシャグシャに壊れるんだ。」

抑えられない壊れた心が、冷たく感情の無い笑みとして顔に張り付く。ピエロのように吊り上がった口角が、面白くもないのにピクピクと痙攣する。


剣岳がとても悲しそうな顔でこちらを見る。


俺は酷い笑みを張り付かせたまま問いかける。


「酷い面だろ?こんな壊れてるくせに!人を助けようなんざぁ、笑えるだろう!

でもな、それくらいしかやることがないんだよ。この壊れた世界でそれ以外何をしろと?

新しい世界を作れるほど、俺は出来た人間じゃあないさ!」

よくわからん事を口走りながら、面白くもないのクツクツと嗤う。


「…たとえあなたが壊れていても。」

剣岳がゆっくりと言葉を紡ぐ。


「…私たちのために動いてくれるなら、私はそれを手伝いたいです。

…私たちは、自分から動く事が出来なかったから。自己満足だとしてもです。」


「そうか…なら頑張って貰おうか。課題は山積み。使える人間は多いに越したことはない。」

いつの間にか冷たい嗤いは引っ込んでいた。


「ふぅ。他は?」

数人が首を振り意思を示す。他の奴らも手を上げない。


「じゃあ、武器を持ったらすぐに出る。急げよ。」

俺はそう言って役場から出た。



俺はいつから壊れていた?


奴らが現れた時から?


もっと前から?




いや、


最初からだ。


あいつら来る前に話ししとくか。

電話をかける。まだ繋がるようだ。数回のコール音の後、相手がでる。


「俺だ。アレは?」


「そうか。分かった。」


「あぁ、頼む。俺は美深を見終わったら、名寄に一度戻る。その時に。」


「あぁ、お前もな。」


「そだな、落ち着き次第迎えにこい。かなり人は多いがな。」


「おう、じゃあな。」

携帯を閉じる。

丁度、その時にあいつらが出てきた。


「来たか。揃い次第行け。一班はこっちだ。」

俺の口調にも慣れたのか、ムスッとしたやつはいたが、言い返してくる奴らはいなかった。


だらだらと集まってくる班員を待ち、説明を始める。


「俺たちは、食糧確保の後移動手段を探す。出来るだけ頑丈で、走破性の良い車だ。あとは、普通二輪が二台に、側車付きの二輪が二台だ。見つかるかどうかで、今後の動きに影響が出る。分かったか?」

言い終え、班員を見る。

先までの険悪な空気は無くなり、皆真剣で厳しい表情をしている。そりゃあそうだ。自分の肩に他の人間の未来が、ずっしり乗っかっている。


「エンジンかけられるの?キー無い車多いんじゃない?」


白髪の少女が口を開く。

たしか…伊藤夜無だったか。


「問題無い。わざわざキーを抜いて逃げるほど余裕があったとは思えない。車を置いて逃げ出したなら、回収しに来る事は無いだろう。」

俺がそう言うと「そっか。」といって黙った。


ここからの動き次第で、状況は色々と変わってくる。ここで上手く立ち回らなければ、全滅も有り得る。それほど、今回の作戦は重要だ。


「さぁ、くぞ。」


始まったばかりで、ゲームオーバーは遠慮するぜ(笑)


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