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俺と屍と鉄パイプ。  作者: 橘月 蛍
第1.5部 状況把握、目標策定
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侵入、つまり戦闘開始

 さて、オリヴィアの指示に従って階段を下り気配の多そうな所を伝えて、誘導を受ける。

 見つけた奴を片端から気絶させて、バンドで縛って捨てる。結束バンドは先の尖ったものか刃物で簡単に外れるが、複数箇所縛って関節を固めれば抵抗しようが無くなる。

 ちらと、研究資料らしきものをいくつか覗いたが、さっぱり読めない。どうにも語学関係は苦手だな。


「オリヴィア。ここは何やってるんだ?」

『医療関係、特に病原体に対する特効薬の開発を行っています。表向きは』

「ここの奴らは何も知らなそうだな。下か」

『上に隠すのは無理がありますから』

「輸送が面倒だがな。次は?」

『誘導します。外へ』


 さて、さくさく行こう。




「しっかし数が多いな。戦線に近い割には避難しているような感じじゃない」

『社長によれば、フェリックアームズの戦力上、避難は考えないだろうとの事ですが』

「にしても、態々前線近くのこんな所で業務させるかよ。大体他の企業は大方撤退してるし、治安も明らかに悪いだろうに」

『治安悪化の原因は警察組織の撤収です。だからこそこうして襲撃できるのですが』

「まあな」


 上から順当に騒ぎを起こしているため、俺一人でも取り逃しは出ていない。まあ、出ていても逃げられはしないし、戦えるような奴は混じってないし。


「オリヴィア、下の状況は?」

『38階まで制圧完了です。現在上層の制圧に5班、隠し通路を探す為に2班が行動中です』

「了解。取り敢えず、音響探査一回目」


 オリヴィアが通信を切ったのに合わせ、複数の音叉が並んだ共鳴箱を二つ床において音叉を軽く打った。箱から響く音から雑音が消えるのを待って耳を澄ませる。音叉が描く純音が、壁や床に触れて乱されるのを丁寧に拾い上げて、思考の上に組み上げる。


「ふむ。ひとまず上下5階分は特に変なところはないな。オリヴィア、標高は?」

『+0.3前後です。観測誤差の範囲を出ません』

「そうか。表からわかるような造りにはしていないか」


 各階の高さを少しづつずらせば、中間に一階分は作れるはずだ。それか隠し部屋があるかだが。上層階の殆どが窓なしであることを考えれば、ここいらにあっておかしくはないがな。


『社長から連絡です。戦闘員確認できず。道を探れ。以上』

「ふうん。流石にこれだけ暴れれば下に逃げたか。気配はないし取り敢えずぶち抜く方向で」

『了解しました。通路の先、二つ目の扉の前で抜いて下さい』


 短く返答して移動する。

 鉄筋コンクリートとは言え階層間に完全に打ち込むと重量がバカにならない。大した材は噛んでいないはずだ。多分。音響探査で聞いた限りでは恐らく大したことは無いはずだが。

 紗那であれば踏鳴(ふみなり)一つで上下10階層以上精密に調べられるが、俺では道具を使って大体の地形を探るのがやっとだ。音が響きやすいよう真っ直にぶち抜いてやろう。

 一応、オリヴィアに下の位置を確認してブレードを抜く。これで下が吹き抜けとかだと笑えない。下は廊下らしいので遠慮なく行こう。

 四辺をブレードでさっくりと斬り、嵌ったままの床に飛び乗って踏み抜く。あっさりと床ごと下の階へ落ちた。


「ここいらを適当に抜いていいのか?」

『南に四メートル移動して下さい』

「あいよ」


 さっさと移動してぶち抜く。ぼちぼちと誘導されなから五階ほど抜いた時に異常に気付いた。


「おい、通路無いぞ」

『当たり、ですね』


 一部屋、と表現していいのかわからない。中央にエレベーターが通っていると思われる壁に覆われた部分と階層間を貫く、ビルの本支柱群だけが部屋の中にある。外壁は窓張りだが、マジックミラーになっているようで、微妙に色がついている。

 とりあえずぐるりと見回した感じ変な所はない。一つ一つ柱を確認していく。エレベーターは外観と内装の大きさが一致しているから無視していい。

 いくつか調べてわかったことは、ご丁寧に防音処理が行われていることだ。さっきの音響探査で柱が引っかからなかったのは、全部同じような反応を返すように処理されていたかららしい。この調子ならレーダーや磁気辺りも対策されてるだろう。贅沢なこってな。金持ちめ。


「よくわかんねぇし、ぶっ刺してみるから。一応、下に警告よろしく」

『了解です』


 外部からわからなければ内部を調べればよし。

 とゆうわけで、柱を片っ端から突いていく。気持ち悪いほどすんなりと刃が通るが勢い余って切ってしまうと建物が崩壊しかねない。さほどかからずに、感触が明らかに違う本支柱を見つけた。


「ナンバリング」

『61番です』

「No.61は中空構造で鋼材の量が多い。感触的にはエレベーターのガイドレールを切ったみたいだな。」

「了解。伝達します」


 オリヴィアが社長たちに伝えている間に、情報端末から下へ降りるルートを考える。最速なら61番本支柱の中を下るのが速いが、穴を空けても影響がないとは限らない。あとは、非常階段か外を落ちるか...

 いや、外を落ちるルートは本支柱の中と違って手掛かりになるような部分が少なすぎる。流石にこの高さからまともに落ちると復帰にどのくらい掛かるのかわからない。


『紗那さんから連絡です。感じる?だそうです』

「あぁ、今感じた」


 連絡が入る直前、支部ビルの地下に無数の気配が湧いた。どうやって隠蔽していたかはわからないが、StD関係の奴らだな。


「俺は61番を直接降りる。奴らメンテナンスシャフトを通って上に登ってきているようだ。そちらは任せる」

『了解。伝達します。メンテナンスシャフトは南北に出入りがあります。下の部隊はそちらからになるでしょう』

「あぁ、わかった」


 展開が終わる前に出入口へ溢れると面倒だ。さっさと行こう。

 61番本支柱の側面に四角の穴を開けてケミカルライトを投げ入れる。良くフィクションで丸い穴を開けているが無駄にも程がある。最小なら直線三本の三角で良い。そのほうが剣が傷まない。

 本支柱内部にエレベーター用のワイヤロープが見えた。それにフックを掛けてワイヤーに足を掛ける。腰に繋がるフックとと両足の三点で支えてワイヤロープを滑り降りる。

 ケミカルライトが落ちる音が聞こえない。遠すぎるか?わからんな。

 そういえば、機械室のあるカゴ吊り下げ型のエレベーターに見えるが、屋上にそれらしい建屋がなかった。おそらく空調設備の屋上突出部に埋め込んであるんだろう。配電盤の扉に混ぜれば出入り箇所も誤魔化せる。


 靴底が鋼線と擦れる軽い摩擦音を立てながら降下を続ける。

 俺たちが履いているのは、全体が柔らかめに作られた立体機動用の高グリップのブーツだ。土踏まずと側面の一部には硬質な素材が使われている。そこを利用してワイヤーの上を滑っているわけだ。高グリップを使うのは壁走りとか三角飛びとか四角立体跳躍とかその辺だ。四角立体跳躍ってのは床・壁・天井・壁・床って感じで飛ぶことだが、実用性があるのかは知らん。そもそも普通の人間は出来ないだろうが。

 ケミカルライトの落ちた音が僅かだが帰ってきた。大分下だな。地下フロアに箱は止まっているらしい。そのまま滑り降り、ケミカルライトの光が見えてきた辺りでブレーキを掛ける。ゴムと金属が擦れ合う少し高い音と摩擦熱による焦げ臭い匂いが五感に伝わる。擦り切れることは無いだろうが、グリップ力は少し落ちそうだ。

 ブレーキ音を聞きつけたのか、何体か寄ってくる気配がする。着地と同時にさっさとフックを外し、天板をぶった切ってエレベーターの中に落ちる。たかられてはかなわない。ドアをたたっ斬り外に出る。

 ぱっとみエレベーターホールはそこそこ広いが、相手の数が多すぎる。もっと広い場所を探したほうが良いか。


「おっけー、オリヴィア。殲滅開始だ」

『了解しました。状況が動けばお伝えします』

「あいよ! よろしく」

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