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俺と屍と鉄パイプ。  作者: 橘月 蛍
第1部 悪夢の始まり、日常の終わり。
28/47

俺とお前らと僅かな休息。

「...........」


誰一人口を開かない。強敵を退けて生き残ったというのに。

重い空気を破ったのは紗那だった。


「で?その手は?」

「もげた。止血ついでに切り落としたが。」


盛大な溜息と共に、また沈黙が落ちる。


「片付け終わったよーってなんだなんだ!?この暗鬱な空気は!?」


やってきた伊藤が大袈裟に(いやコレぐらいが普通の気もするが)驚いて人に向かって指を刺す。


「ちょっ!?えぇぇえぇ!?う、うで!腕どうしたの!?」


半分パニクっているところへ横っ腹に灰斗から一撃が入る。見事なブローだ。


「落ち着け。」

「は...ぃ.....。」

「灰斗、ちょっと効きすぎだ。」

「誰のせいだ、誰の!」

「え?え?わたくしですか?」

「「「「当たり前だっ!」」」」


伊藤を除く人からツッコミが入った。直人は良いとして何故嫁さんまでいる…?


「えー...いや、だってさ~...死にかけたら興奮するじゃない、死にたくないから。で、こう、拳で語り合おうとして、パンッとですね....。ご理解いただひぃっ!」


般若も裸足で逃げ出すような形相で睨まれる。怒りすぎじゃない?


「生き残ってんじゃからいいじゃないかよ!それよか疲れたし!甘いもの食べて寝たいのっ!」

「龍人、キャラ。」

「あ....。いや、だから、とりあえず疲れたから今日は休むぞ!」

「遅ぇよ.....。」

「ひぃっ。」


灰斗の指摘と地を這うようなおどろどろしい低音で発せられた紗那の言葉に思わず竦み上がる。


「え、誰コイツ?え、頭打った?」

「真顔で言うなし!俺は俺じゃ!」

「え、いっつもこうゆうのじゃないの?この子?」

「何時もは、横柄で偉そうな態度で面倒くさがりだが....。」

「言っておくが主もキャラ被っとんのじゃぞ?」


俺の指摘にフッ...と薄笑いを返す直人。余裕綽々だなこのやろう。


「てか...似合わないって言うのかな.....いや、うん、ごめん。正直言ってキモい。」

「自覚あるからこんなキャラしとんのじゃろうが貴様らぁっ!」

「え、私しか言ってないよね?」

「ひょ・う・じょ・う!」


伊藤思っきし目ぇ逸らすな!つか、あからさまに引くんじゃねぇ!直人の嫁とか笑顔引き攣ってんでねぇかよ!


「キャラは戻ったが訛りがひどい。」

「あーあーひょーじゅーんごー。つか、ちょっと興奮し過ぎた...傷に響く...。」

「一応、救急箱持ってくるね。」


俺の腕をもう一度見て、思い切り顔を顰めて伊藤は部屋を出て行った。


「もうすぐ来るんでしょ、迎え。とりあえず安静にしてろし。」

「そのつもりではあるが、お前もな紗那。至近距離で爆風浴びただろ。」

「あぁ、まだ猫被るんだ。」

「灰斗さん灰斗さん貴方とはOHANASIしなけr「あ゛あ゛?」いえ、なんでもありません。」

「何故自爆バレたし。痛恨のミスだ...。痛いだけに、なんちて。」


混沌とし始めた俺たちに直人が盛大な溜息を吐く。


「ちょっと落ち着け。とりあえず、腹を満たして休もう。(戦いに)出た奴らもかなり消耗してる。」

「よし。パフェ作るぞ。手伝えよ。」

「うちも食う。」

「俺パス。」

「俺と深月に一つ頼む。」

「いや、まず手伝えよ。」


結局重要な議題に目を逸らしながら食事へと突入した。



----



「我々はー....お腹いっぱいです。おかしいな、俺デザートしか食ってねぇぞ...?」

「いきなり在庫減ったな。甘いモノばかり....。」

「うちもうちょっといけるよ。」

「もういいだろうよ.....。」


さすがにラーメンのあれでパフェ作ったのは余計な気がしたがそんなことなかったな。

紗那なんぼ食うんだよ。つか、甘党多過ぎだろうよ....。


「しかし、想定以上に不便だなコレ。」

「当たり前だバカタレ。どうすんだよ。」

「社長に相談だが、もしかして治ったり~なんてな。」

「お前、何気に化けの皮剥げてきてるぞ。」


やべ、また素がでた。灰斗の指摘を否定出来ねぇ...。


「さっきメール来ていたが、明日か明後日には付くそうだ。とりあえず明日はバリケードの修繕して、もう少し片付けておくぞ。もしかすると拠点代わりにでも使えるかもしれないしな。」

「そうだな。この前の緑の奴の侵入ルートだが、上からみたいだな。屋上、開けっ放しだったところから入ってきたらしい。お前が言ってた黒いのとかそう言うの含めてスロープ側は侵入ルートになりえると思っていいな。」

「上にはコンテナの資材でルート絞ってやるしか無いだろ。とりあえず、何箇所か防火扉とシャッターで塞ぐぞ。」

「とゆうわけで、赤城、任せた。」

「お、おう。」


灰斗からの振りに一瞬、反応を遅らせながら、返事をした直人が席を立つ。


「俺は、車を見てくる。相当無茶しただろうからさすがに心配だしな。」

「ん、あー......あぁ...うん、いんじゃね?」

「ん?何故疑問形?」

「行けば分かるわ。」


灰斗の反応に頭を捻りつつ、俺も席を立った。




----



「...そこになおれ。」

「「はい。」」

「お前ら車で何してんの?」

「な、ナニを...」

「あ゛ぁ゛?」

「いや、何だ...すまん。」

「一応、LAVは借り物だ。で、今は非常事態だ。理解できるか?」

「すまん。嫁不足で。」

「するなとまでは言わんがなぁ...臭うわ!さっさと掃除してこい!」

「...え、臭うかな?」


直人の嫁が自分の匂いを嗅ぎ始める...そうじゃねぇ…。


「知るか!水拭きして消臭剤かけて換気してこい!」

「おぅ...コレに関しては全面的に俺たちが悪いわ。すまんな。」

「微妙に哀れんだような目ぇするんじゃねぇよwさっさと行って来い。あと整備もしとけ。」

「あぁ。分かる範囲でな。」

「構わん。」


シッシとしてやると苦笑いしながら出て行った。まったく。


「あんたも早う行け。」

「後でお詫びに「あ゛あ゛?」失礼しまーすっ」


後ろでゴゴゴというくらい睨んでやったらとんずらこいた。まぁいい。


「あ、コンテナから色々持ってこねぇとダメだな。」


気付いたらさっさとやっちまおう。忘れるからなwww




----




「こう、不穏な空気があると非常に疲れるな。」

「あんなの何体も来たら対処できないよ。」

「何も無いのが一番なのになぁ。全く。」


伊藤と二人で盛大に溜息をつく。コンテナの中を引っ掻き回し、色々と使えそうな物を引きずり出す。


「思ったより色々あるものだな。リストに全て目を通しておいたほうがよかったか?」

「全部見たんじゃなかったの?」

「トラップ辺りで呆れてやめた。こんな使うと思ってないしな。」


実際、変異ってもんを甘く見積もっていた。よくあるネタ故にそこそこ実は警戒していたが、強くなる方にそう都合よく変異することも無いだろうと高を括っていたところもあったしな。


「まぁなんとかなるっしょ~。どーせもうちょいで迎え来るわけだしねぇ。」

「あんた....。」

「あ......もうイヤや死にたい。」

「え、困るし。誰が纏めんの?」

「え、直人でよくね?」

「あ、そう。じゃ、「止めろしw」チッ。」


ちょ、こいつ思っきし舌打ちしよったぞ。なんてぇヤロウだ。野郎ではないが。


「あ。」

「あ?」


伊藤が奥の方から黒いアタッシュケースを引っ張りだして....は?


「Rって書いてあるんだけど。」

「マジかよw」


渡されたケースを迷いなく開けて中身を確認する。長い方のブレードが二本と.22LR弾が納められている。


「予備有るんじゃねぇかよ....。」

「おー。良かったじゃん。」

「なんか納得いかねぇよ....ったく。」


ケタケタと楽しそうに笑う伊藤を横目にブレードを装備し直す。短い方もガタが来ていたし丁度いいといえば丁度良かった。


「ふぅ....あれ、結構いい時間だね。」

「お、そうだな。引っ張りだしたもんの説明もあるし戻るか。」


持ち運びやすいものから適当に引っ掴んで伊藤とペリカンへ戻った。



----



あぁまったく。

冗談とすればどれほどのものか。


されど.....



----


「準備はいいか?」

「問題無い。」


帰った返事に、見渡した面は覚悟を決めたようだ。


「さて、状況に不備がなければ残り30分。ここからは休憩なしだ。死にたい奴は多くを殺せ。生きたい奴は全てを殺せ。屋上の奪取及び階段とスロープの死守が優先。必ず三人以上で動け。誰からの指示でも基本は遵守。だが身勝手な奴は無視だ。いいな?共に生きようとする限りに於いて今から俺たちは仲間だ。忘れるな。」


全員が無言で頷いたのを確認して、コンテナの扉に手を掛けた。


「......。」


呟いた言葉は扉の軋みに掻き消され、誰の耳にも届かなかった。

リア充爆破ーっ!は別にしなくて構わんのだがよ。


13/11/25 最後の3時間を30分へ変更。3時間は無理ゲー。気付けよ...自分...

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