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俺と屍と鉄パイプ。  作者: 橘月 蛍
第1部 悪夢の始まり、日常の終わり。
21/47

俺と屍と鉄パイプ。で、また緑のやつ。てゆうかトカゲ野郎。

すまない。遅くなった。

予想外に文字数が伸びて久しぶりに6000文字を超えた。


少々皆グダってるがギャグ回だと思って楽しんでくれ。

痛い…。


皮膚から筋肉から骨から内蔵、脳に至るまで全身が訴える鈍い、それでいてキツイ痛みの中で目が覚める。

どうやら、昨日のアレは結構クルらしい。もう滅多なことではやらんようにしないとな。コレはアレだ、一番肝心な時に行動不能になるパターンだ。テンプレ怖ぇ(笑)


「おーい。起きろー。ご飯作れ―。」


何故寝起きで飯の催促されないといけないんだよ。

ジトーっと睨んでくる紗那を微妙にスルーしながら起き上がる。


「………ん?そういや、今何時だ?」

「11時40分。」

「昨日結構早くに寝たんだがなぁ。寝過ぎだろ。」

「そうだねぇ。軽く35時間くらい寝たんじゃない?」

「へー、一日寝てたのか。」

「そそ。だから、微妙な料理しか食べてないんだよ。」

「そりゃそ…っ!一日!?マジか!?」


紗那がニヤニヤと含み笑う。

交差した視線は完全に面白いものを見る目だ。腹立つ…。


「気付くの遅(笑)ご飯のたびに起こしに来てるけど全く気持ち良さげに寝てたよ。揺すろうが叩こうが爆睡爆睡。」

「うわー。羞恥プレイかそうか。」

「いや、意味わからんし。」


呆れた顔で見てくるがスルーだ。どうせ冗談の才能はない。


「そういや、武器の練習とかしたか?」

「あー、取り敢えず使ってなかったハンドガンの練習はやったけど。手榴弾は皆怖がって使わないんだよね。いやー、龍人戻ってきた時に手榴弾投げたでしょ?それを見てたんだよね。今の主要戦闘メンバーがさ。」


思わず溜息を吐く。自業自得じゃねえか…。


「まぁ、手榴弾はいいだろ。自爆しても困るし。ま、自害用に一つ持たせとけや。」

「もう持たせてる。えげつないケドしゃーないよねー。」

「まぁ、化物になるよか綺麗に死にたいだろ?」

「あ゛ー、否定はしない(笑)」


くっくっくっ、と二人で品のない笑いをする。


「で、飯。」

「わーったよ。お前らちょっと待て。」


そんな期待の籠もった眼差しでこっち見んなっ!さり気なく囲むな!怖いわ!


「よし、昼飯は確保した!皆の者!散れ!」


紗那の号令と共にわらわらと集まっていたのが散ってゆく。何気に統率しとるか、お前は。あれか、胃袋を掴んだものは~ってやつか?…胃袋つかむの俺じゃね?つか、主婦連中どうしたんだよ…。

タイミングを図ったかのように振り向く。


「ちなみに、主婦達は体調不良でほぼ寝込んでる。緊張が緩んだのが原因じゃない?剣岳って人だけ元気に働いてるけど、人数が人数だから。」

「そりゃ、そうだ。お前らは?」

「フルタイムで訓練してた。手がちょっとしびれて痛い。」


ぷらぷらと振る両手は掌が普段より大分赤い。


「程々にな。疲れて逃げれませんじゃお話にならない。」

「わかってるけどねー。色々と恨みつらみがあるから。」

「んーそんなもんか。とりあえずテキトウに食材見繕ってきてくれ。準備しとくから。」

「おー。」


さて、何を作るかねぇ。









さて、ご飯を無事食べ終えたぞ。っと言いたいところだが、皆好き嫌い多過ぎだわ…。追加で作るこっちの身にもなってくれよ。食材はいいんだけどさ。食品売り場とレストランの食材で余裕余裕。みんな忘れがちだが食品売り場の裏方には冷凍室があるからな。冷蔵庫も。冷凍なら肉類でも一ヶ月は持つし缶詰関係の保存の効くモノも大量にあるからな。

速攻で立て籠もって略奪とかもされてないから意外に物資は豊富なんだよな。バリケードも一階全体に作って、何層かに分けてるから突破されても平気だし。ストレスまではどうにも出来ないが見た限り落とし所見つけたようだしな。


「しかし、これはどういうことだろうな…。」

「あんたが無駄に多才すぎんのよ。」

「それはそれはありがとうさん。」

「褒めてない。」


皆と話す時とは打って変わって辛辣な言い方をしてくる伊藤。ジト目で見られても私には効かぬわっ!はっはっはっは。

で、何がどう知ったって目の前でドーナツを貪る亡者の群れ……ならぬ甘党集団。いや、訓練疲れたろ―なーって作ったのになぜ全員集合した?


「どうでもいいけど、美味しいわねコレ…。」


伊藤さんや…さっきからポンデリングばっかり食うんじゃない。


「おま、それは俺のだ!」

「ごち。」


このやろう…。たしかココに…。


「いひゃぁっ!?」

「ざまぁ(笑)」


ふっ。ドーナツ売り場に氷が無いとでも思ったのか。


「酷いよ!何するの!?」


悲鳴で注目を集めたからか速攻で擬態しよった。


「まぁ、みなの分のドーナツを食らった者への制裁だな。」

「ひっ!ごめんなさいぃ!!!」


バッっと擬音が聞こえそうなほどの勢いで亡者たちが振り返る。らんらんと光る眼は狩人のそれだ。まさに食べ物の恨みは恐ろしい。ってな。


「ま、材料はあるから、とりあえず今あるのを仲良く食ってろ。」


返事をするもの、また食べ始めるもの、半分寝てるもの(?)、それぞれの反応に苦笑してキッチンに戻った。









ドーナツが無くなり完全に昼寝タイムになっている。

これはもう呆れるしか無いな。周りは地獄だってんのによう気持ちよさげに寝よるわ。かまやしねぇけども。


「なんか変わったことは?」

「んー…無いんだけど…無いんだけどなぁ…。」

「わけわかめ。でもないな…。」

「でしょ?」


見回りをしてきた紗那曰くは妙な違和感を感じるらしい。少し前から俺の方も感じていたが。

今までの疲労諸々が祟ってか、俺を含めて起きているのは精々5~6人というところだ。

この人数で凌げる程度の脅威なのかは今のところ漠然とした感じだが、確実に何かあることだけは否定しようがない。


「人に限って言えば全員集合している此処なら特に問題は無いとは思うがな。一応に警戒するもいいんじゃないか?」

「さっきからずっとしてるけど。」

「そうかい。






             二階、階段付近。」


確信するほどの気配に見に覚えがある。あのトカゲ野郎こっちにも出てくんのかよ。


「行く?」

「行く。」

「人は?」

「俺ら三人で十分。」

「あー、はいはい。」


ちらりと起きている人間に目配せをして役割を振る。話を聞いていたためにこの程度で問題ないのは助かる。変に反論も来ないし。とりあえず


「灰斗、行くぞ。」

「んぁ?あー?ん…なんかあったか?」

「あった。行くぞ。」

「そうか。」


パタンと読んでいた本を閉じる。相変わらず本の虫だな。

外してあった剣帯をパチンと腰に付けて階段の方へ歩き出す。紗那は周囲への被害を考えてかMP7を構え、灰斗はVSSと先端をナイフに変えたショートスピアを持って付いて来る。


気配は徐々に濃くなっていた。








「ストップ。」


階段から少し離れた所で静止をかける。

後ろの二人が疑問を挟むこともなく武器を構える。気配は階段の直ぐ側、降りてくるのを待つか、仕掛けるか。それより…


「気のせいか…二体いないか?」

「そんな気がしないでもない。」

「関係ない。さっさと行け。」

「はいよ。じゃ、二人で片方よろしく。」


無言で頷いて返すのを横目でみながら階段を上がる。


視界の端に見えた緑に這うようにして近づき切り上げる。さすがに超低姿勢からの攻撃は予想外だったのか、ただ気付かなかっただけか、ザックリと感触が手に残る。後ろから近づく気配に、短槍が突き立てられるのを感じながら、思わずニヤリと口角を上げた。


「さて、殺し合いの時間だ。」

「近接上等。援護よろしく。」

「お~。」


ガチガチと歯を鳴らす二匹のトカゲ野郎に灰斗と俺は切っ先を向けた。



どうせ取り逃しはしないだろうと、さっくりともう一匹を意識から外す。

さすがにゲームじゃないんだ、体格は違うな。前回の奴と違って身体つきが明らかにゴツイ。下手に打ち合うと膂力で負けるかもしれないな。ま、武器も違うしなんとも言えないんだがな。

脇腹辺りにザックリと入った切傷を気に知ることもなくこちらにトカゲ野郎が振り返る。左手が異様にデカイ。2倍以上はあるだろう。爪も太く長い。バランスの悪さが目立つが、恐らく筋力で無理やりカバーしているだけだろう。


「先ずは小手調べ!」


浅めに踏み込んで肩口を狙って振り下ろす。向かう様に振り上げられた爪に弾かれる。弾かれた勢いを殺さずに二撃、三撃、相手に攻められないように気を使いながら次々に斬撃を繰り出す。どれも弾くのが紙一重なのはこちらの速度か相手の速度か。左手の方が反応も速度も力も上だが動きには雑さが伴う。前に殺りやった奴と違い、流れるような動きではなく力強い動きだ。

だが、とにかく…


「雑なんだよ!」


刃の振るう軌道を僅かにずらして、手の上を滑るように腕を斬りつける。刃のない剣術では全く通用しないが、真剣であれば僅かずつ相手の体力を削ることが出来る。何度も繰り返すうちに両腕の上腕全体が血の赤で斑になっていく。決定打にならない戦術は双方に苛立ちを募らせる。


本能に負けたのはトカゲ野郎の方だった。

大振りな後先の見えない爪撃が振るわれる。それを難なく弾いてガラ空きの首に一太刀、確かな手応え。

真っ赤な血をぶち撒けながら、トカゲ野郎が一歩二歩と下がる。それを許してやる理由もない。深く踏み込んで、腹を薙ぐように振るう。我武者羅に振り回された爪がたまたま刃を弾いた。


パンッ

「は?」


爆竹を一本だけ爆発させたような乾いた破裂音。音源を辿って目をやれば半ばから折れた?ブレード…。

状況を理解して即座に飛び退く。左手で短い方を抜く。目線で折れた先を見れば、折れたとゆうよりも砕けたといった方がいい状態だった。爪の当たったと思われる部分から放射状に歪な罅が入り内側から爆ぜるような形で刀身が無くなっている。そういえば、解説書になにか書いてあった気がした…。まぁ、今はどうしようもない。短いのでやるか。


すっかり、立ち直したトカゲ野郎を見据える。奴ら、一度死んでいるクセに大量出血で酸素が回らなくなると動かなくなりやがるうえに、刃物で傷をつけると噴き出す様に出血する。浴びても問題にならないのが良く判らないところだ。

ふらふらと揺れているのは酸欠になってきているからだろう。前のやつより活動力は無いようだ。頭だけでのた打ち回ったアレが異質だったってことか?または出血に弱いかだな。前回は全て打撃でそれほど血は出ていなかったしな。

さっきより若干鈍い動きで、左手が振り上げられる。単純な軌道のそれを手で払い背中に手を伸ばす。短い方のブレードではリーチが足り無い。なら、威力は下がるが強度は上の鉄パイプで応戦するだけだ。

暴れ過ぎかすっかり動きの鈍くなったトカゲ野郎に抜き打ち気味に鉄パイプを振り下ろす。今までの反応通りにこちらに向かうようにして振られる腕を軌道をずらして避ける。この一撃は捨てる。振る動きから腕を引きつけ突きの形に移る。大した威力は出ないが、


「せっ!」


ザックリと斬られた喉に向かって容赦なく突きを繰り出す。めちゃくちゃに振り回される腕を掻い潜るように三回。突きの勢いのまま一歩踏み出して相手の間合いの内側に突っ込んで肘をぶちかます。なんとも言えない鈍い打撃音と共に、トカゲ野郎は大きくよろけた。これで倒れなかった辺りバケモノにも程がある。

様子からしてもう一押しで落ちるだろう。後ろも大詰めのようだし、ここらで殺ってしまおうか。

少し離れた距離を詰めるように前に出る。爪は相変わらず滅茶苦茶に振り回されているが単純な動き故に読みやすい。振り回すうち交差した腕を下から掬い上げる。左手に持ったブレードを心臓辺りに突き立てて蹴り倒す。全体重を乗せた蹴りはさすがに堪らなかったのか、意外と派手に倒れた。

空いた左手でトカゲ野郎の手を掴み、鉄パイプでもう片方の手を押さえ込みながら背負投を角度を調整し首が下になるように決める。

鈍い音と共にトカゲ野郎は動かなくなった。一応前回の反省として、ブレードをトカゲ野郎の胸から引き抜き首を切り落として潰した。

二回、金属音と空気の抜けるような音が混ざった音が聞こた後、後ろでも何かが倒れる音が聞こえた。


「終わったか。」

「あぁ。そっちも終わったな。」

「終わった。が、一本ちゃかした。」

「アホだ…。」

「ついさっき思い出したが長い時間起動させると強度が落ちるんだったんだよ…。さっきので大体5分かそこらだから平気だったはずなんだけどなぁ。結構おもっクソぶっ叩かれたからかも知れないが。」

「ふーん。こっちは淡々と突きまくって、動きが鈍くなったところに頭撃って終わりだ。簡単なお仕事ってな。」

「灰斗の凶悪な笑顔にうちはドン引きだったけどね。」

「なんでもいいや、戻ろうぜ。」

「「おいw」」


ツッコミを入れつつも足はすでに階段を下り始めている。

入手早々ぶっ壊したが短い方もあるし鉄パイプは折れる気配がない。とゆうか殆ど傷もついてない。どんだけ丈夫なんだこれ?


「あー、オレの槍もそれでつくりてー。」

「やめろよw絶対振り回すだろ?」

「当たり前だ。効率いいし。」

「巻き込まれる気しかしねぇ…。」

「いや、お前はまず射線に突っ込むのを止めろよ、邪魔だから。」

「ふっ…見え「えばるな」ごフゥッ!?」


綺麗に鳩尾にめり込んだ拳を払い除けてゴロゴロと転げまわる。

ゲロる…おろろーってなる…もどす…で、でる…。


「吐いたら、刺すぞ。」

「やめいっ!」


バッっと擬音ではなく実際に服が鳴るほどの勢いで起き上がる。

なぜ折角生き残ってるのに身内に刺殺されねばならん。


「とりあえずお腹すいた。ケーキ。」

「さっきドーナツ食ったじゃないの…。」

「ケーキの気分(ドヤァ」


見事なドヤ顔で胸を張る紗那に溜息を付きつつ、ボソリとつぶやく。しかしそれを聞き逃さない辺り嫌なやつらである。


「くっそ…生チョコケーキ作って1ホール食ってやる。」

「「太るぞ。」」

「うっっっせぇ!只今絶賛減量中なんだよっ!」


そう、つい最近測った体重に比べて今日測った体重は10kgは落ちているのである。短期間で体重が落ちた割には元気なのだが、余計に動きすぎたりと感覚が追いついてきていない。徐々に慣らすしか無いが体の変化が何時まで続くか分からない以上、まめに体を使う必要がある。

結局、それを考えるとお菓子作りも有りなのだ。


「一人でやるには手間が多いから手伝えよ。」

「「おー。」」


のんきな二人に微妙にグッタリしながら戻るのだった。

この話からまたメインが鉄パイプに戻る。

さすがに試作品。あっと言う間にダメにしたな。


次回からは遠出回の予定だ。

まぁ、楽しみにしないでのんびり待っていてくれ。

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