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俺と屍と鉄パイプ。  作者: 橘月 蛍
第1部 悪夢の始まり、日常の終わり。
20/47

私と屍とVSS。

VSS・アルシェ仕様


銃身長300mm/全長860mm/重量3140g/装弾数10、20/使用弾薬9mm×39SP-6/有効射程500m


狙撃手である、アルシェの私物。灰斗に貸し出された。銃身の延長がされているが、消音効果は消音装置が違うためそこまで低下していない。

LG社のパーツで組まれているため、精度が非常に高い。

アルシェが使うと700mまで狙撃してしまう。


(なんだろうな。妙にしっくりくる。)


手に持った狙撃銃を弄りながらふと思う。

微妙に削られたグリップや、やや小振りのストックが手に肩にやたらと馴染む。軽く頬を乗せてスコープを覗けば照準が驚くほどに安定している。重さも悪くなく立ったままでもそれなりの距離が狙える気がする。


「おk?さっそく練習しようか?」


龍人のの言葉に何人かが動き出す。

私も着替えることにしよう。




さて、着替えたわけだが。伏射を考えてか、前面装備がない。しかし、ここからの射撃を考えると伏射はしないようにも思えるが。装備は、VSSの弾倉4本にUSP9の弾倉が4本かちょっと重いな。

スロープで龍人が説明するのを聞き流しながら、動作チェックをもう一度行う。手で動かせるところは余さず滑らかに動作する。引き金も軽く、引っ掛かりもない。貸出し品でよかったかな。AWMもよさそうだけど、新品っぽいし動きが渋そうだ。

説明も終わって準備し始めたのを見てから、狙撃組を引き連れて三階踊り場(龍人は二階と言ったが三階だ。二階に踊り場はない)に向かう。


「よし、全員2mくらい開けて並べ。座って膝を立ててその上に肘を乗せる感じで…よし、そうだ。あとは適当に狙って…って、龍人の前10mくらいを狙え!落ち着いて一発でやれ!」


説明途中だが、龍人が飛び出したために途中から叫んでしまった。まぁ、思ったより落ち着いて撃ってるようだし、見た限り半分はちゃんと当たってる。頭に…とはいかないが。

スロープの塀に腰掛けて片足を乗せて構える。狙う先は300m向こう。的は疎らだが困るほどでもない。

スコープの先に確かに頭を捉える。相手の動きを特に考えず雰囲気で狙う。


(いまっ!)


ストンッと触れるような感触で引き金が落ちる。

重いがキツクはない反動と殆ど同時に、狙っていた頭が脳梁をぶちまけた。


(とんでもないな)


狙った瞬間に狙った場所に、まさに吸い込まれるように弾が飛ぶ。撃っていて全く違和感が無い。これでも実銃初心者のはずなんだけど。銃がいいのかね。


もう一度狙う。

今度はスコープを覗いたまま撃って狙い撃って狙い撃って狙う。ブレもせず、こちらの動きについてくる。面白いようにヘッドショットが決まるな。

しかし、龍人暴れすぎだろう。狙ってるこっちの身になって動かないかね。あ、今掠めた。こっちか。

ん?引くか?なら後ろ潰すか。


刻々と過ぎる状況を気負いもせず淡々と撃ち続ける。


「カチンッ」


金属音に何も考えずマガジンを落とす。背中のマガジンを引き抜き、ストレートに叩き込んでボルトリリースを押す。ガシャンッっと意外大きい音を聞きながら次を狙う。

はっきり言って、狙撃より龍人の動きの方が気を使う。予測は簡単だが無駄に早い。なんか知らんがあいつ運動能力上がってないか?

あ、頭から落ちた。怪しいな。まあ、いいけど。


ライフルを龍人が掻っ攫うのを見ながら、弾倉を新しいものに変える。空弾倉にバラの実包を詰めながら下を眺める。実に短い時間だったが、相当な数を撃った。それでも奴らの数は目に見えて増えている。った奴らより音で集まった奴らの方がどう見たって多い。

ふっと溜息をついた時、龍人が叫んだ。


「灰斗!!!距離200!!!」


スコープで龍人の方を覗きこみ、飛び出した方向へ動かす。3-6xスコープのため低倍率で広く視界を取る。

目測200m、2つの小さな影がスコープの中を走る。


「なんだ…これ…?」


信じがたい光景が広がっていた。2つの小さな人影の後を追うように、無数の動物が走っている。まるで小さな影を守るように…。短くない間呆然としながらも、援護の必要は無いと割りきって、龍人の援護に回る。

二本の直刀を軽快に振り回しながら凄まじい勢いで突き進む龍人の背後はガラ空きで、奴らが迫る事に見向きもしない。援護を期待しているようには見えなく、ただ前に進むことだけを考えた動きだ。時折手が後ろに回って追跡を免れていることにもきっと気づいていないだろう。野生児め。

龍人の前後をひたすら誤射に気をつけて撃ちまくる。セミオートであることを活かして黙々と撃つ。残弾は残り12発。









残り6






残り3


2


1



VSSの弾倉を抜かずに、素早くその場に置く。弾を込める時間もない。無言でAWMをひったくり、初弾が装填されているのを確認して立ったまま構えた。

何時の間にか援護が効くようなスピードを遥かに超えている龍人を無視して、もう一度小さな影を探す。無数の動物を頼りにしてすぐに見つけることが出来た。

しかし、その時には奴らに組み付かれる寸前だった。


殺らせるかっ!


ピタリと狙いを合わせて、気持ち堅い感触の引き金を引く。VSSよりも大分強い反動に、銃が跳ね上がる。


外れた!


着弾点は見ていないが感覚が警鐘を鳴らす。このままでは助けられないと。

AWMをひったくった奴の方へ放って、足元のVSSを拾い上げる。ボルトストップによって開いたままの排莢口から、無造作に掴んだ実包を一発装填して、ボルトリリースを叩きながら構えた。その間約1秒。

氷よりも更に冷たい、冷えきった頭で照準を合わせる。後少しで小さな影に顎が届くだろうその時に。



静かに引き金は落とされた。



26.1.5 距離500を距離200に変更

    VSSを構え直すまでの時間を約2秒から約1秒に変更

28.8.2 修正しきれてなかった。直しました

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