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俺と屍と鉄パイプ。  作者: 橘月 蛍
第1部 悪夢の始まり、日常の終わり。
2/47

俺と屍と鉄パイプ。あと、生存者。

「987…」


300辺りで顔は麻痺して能面の様に無表情になっていた。


「988…989…」


視界にはあと数体。


「990…991…992…」


腕の感覚はかなり前から無い。


「993、994、995…996…」


あと少し。もう少し。


「997。」


辺りを見渡す。もう奴等は見えない。太陽が随分高くなっていた。


「ッチ。惜しいな。」

後、3体で1000人切り達成なのに。


そんなことを考えながらももう、腕を上げる気力はない。もう一度奴等がいないことを確認して、サックを取りに行く。


「あ゛」


ふと、下を見ると自分の全身が赤黒いことに気付く。


そういや、昨日着替えてねぇや…。


サックを取りに行くのを止め、近くの洋服屋に入る。服を適当に脱ぎ捨て、適当に取った衣類で身体を拭く。それを投げ捨て、適当に良さそうなのを取って着替える。黒い長袖のインナーにコヨーテブラウンのパンツとオリーブドライブのジャケット。


ふむ、かなり適当だったが色がかなりミリタリーだなぁ。


店を出て屍を踏みしめサックを取りに行く。そしてまた気付く。


ナイフ回収してねぇ。


とりあえずサックを回収して、ナイフを探す。30分ほど探したが、結局2本しか見付からなかった。


「はぁ、しゃあねぇか。」


ちょっと愚痴って役所の方に歩き出す。本来の目的を果たしていない。でもぶっちゃけ帰りたい。だがそんなわけにもいかないので、ある程度周囲を警戒しつつ歩いて行く。





奴等を壊すことに。





躊躇いは要らない。





生き残るために。





手段は選べない。



ひとまず何事もなく役所に着いた。見た限り、バリケードはしっかり作られているし、建物の大きな損壊も無い。ぽつりぽつりと周りに屍が転がっているのを見るに、奴等が来たら壊しているようだ。ほったらかして囲まれるよりは良い。

時刻はAM10:27。美深町役場探索開始。


正面のバリケードを叩いて叫ぶ。


「おーい!だーれーかーいーるーかー?」


中で物音はしたが返事はない。


「誰かいるかー!」


今度はハキハキ叫んでみた。←ハキハキ叫ぶってなんさ?


「誰…だ?」


おぉ生存者発見。とりあえず入れてもらお。


「んーと、生存者探して歩いてんの。とりあえず、入れてくれねぇ?」


沈黙。考えこんでんのかね。


「分かった。」


そう言ってからベリベリと何かを剥がすのと重い物を動かす音が聞こえた。こちらからも、一番外側の長椅子をずらすのを手伝う。中から出てきたのは、中肉中背のいかにも中間管理職のおっさん。


「入ってくれ。あと、その非常に微妙そうな顔は止めろ。」


声が渋い(笑)顔も渋い(笑)


「あぁ、失礼する。」


さっさと入る。

中には、数人の職員らしき人が武器になりそうな物をもって、警戒していた。


「これだけ?」


正直、さっきの大量破壊でかなり疲れていた。なので単刀直入に聞く。


「いや、上に町民がまだ30人以上いる。」

多いな。調べないと不味いかな。


「そうか。お疲れさま。でも、もうしばらく頑張って。」


そう言うと、おっさんは


「フッ、それが仕事だ。」


と言って、薄く笑った。

時間が惜しいので次に行く。


「念のため、全員調べさせてくれ。噛まれたりしていたら危険だ。」


おっさんは余り悩まず、


「あぁ、良いぞ。手が足りなくて調べて無いからな。」


中々話の分かるおっさんだ。


「じゃあ、やらせてもらうよ。」


おっさんに、案内人を付けてもらい、2階へ上がった。


生きているだけでは。



生き残れるとは限らない。



生き残るなら。



情けは要らない。



ほんの少しの油断と。



一瞬の躊躇いがあれば。



簡単に奴等と同じ。





屍 と なる だけ だ 。




10分ほどで33人全員を調べた。軽傷者はいたが、奴等によるものではなかったため、手当てをしてて下へ戻った。


「食糧は?」


降りて早々そう聞くと、少し眉間に皺をよせたが、律義に答えた。


「あまりない。良くて今日か明日までだ。」


最悪じゃねぇか。サックの中の食糧を全て出し、武器も使えそうな物を出す。


「やる。明日もう一度来るから、その時に食糧を確保しよう。電気はあるようだから、管理をしっかりやればしばらく持つ。」


おっさんはうなずいて、こちらに手を出す。


「よろしく頼む。俺は、赤城 直人だ。」


あぁ自己紹介してないな。

握手をする。


「ん、よろしく。俺は、無月 龍人だ。細かいことは明日な。疲れたから帰るわ。」


そう言い手を離して、踵を返す。


「どこへ?」


「コンビニ。」


おっさんはまた、フッと薄く笑って「じゃあな。」といった。

時刻はPM12:05。美深町役場探索終了。




生き残るために。





ただそれだけのために。





必要な事は。





諦めない事と。





ただ生き残ろうとする。






   “意志”







途中、もう一つのコンビニに寄って、使えそうな物を物色した。


現在の拠点であるコンビニに帰って来た。時間は早いが疲れたので、寝ることにした。

中に入りバリケードを組み直して、適当に食糧を漁って、二階へ上がる。

サックを休憩室のコート掛に引っ掛けソファに座り、食糧を喰う。メニューは…おにぎり2個に100円カット野菜、アクエリアス。因みに2Lだ。

腹が膨れたら眠くなったが世話になっている鉄パイプを手入れする。椅子に掛かっていたタオルを取り表面の血糊を拭き取る。それから、また滑りやすくなっている包帯を替え、鉄パイプを手の届く所へ置く。寝転がり、何度か鉄パイプを取る練習をして、時計を見た。

時刻はPM1:18。


「明日は忙しくなりそうだ。」


そう独り言を言って、眠りに落ちた。




在るか判らない。





地獄の様な。





明日のために。





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