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俺と屍と鉄パイプ。  作者: 橘月 蛍
第1部 悪夢の始まり、日常の終わり。
19/47

俺と屍と鉄パイプ。あと、小さな姿。

グロ注意。表現的に分かりづらいトコあり。

灰斗がスナイパーなのと、紗那がランチャーなのだけ覚えとけばわかるはず。

スロープを下り、バリケードの前へ。


「紗那、一発打ち込め。そこに俺が潜り込む。直人、俺が潜り込んだら撃ち方始めだ。俺の左右に割り振れ。」


二人が頷くのを横目に前にでる。バリケードは低いところで、地面まで2メートル程しかない。十分着地できる。


「カウント!」


紗那の声と共に2つに班が分けられる。


「3!


 2!


 1!」


0の声の代わりに響いた低い銃声と共に走り出す。

銃声とほぼ同時に弾けた半径3メートル程の空間に向かって飛んだ。


「撃て!」


直人の声と共にパラパラと銃撃が始まる。紗那の放った低い銃声に驚いていた者も、直人の声で我に帰ったのか。

悪くない傾向だ。生きたいなら慣れないとな。


着地の体勢から起き上がり様、一閃。

よろよろと近づいてきた屍を斬り倒す。高周波を使わずとも十分な切れ味がある。

カチリとスイッチをいれると、刀身の振動と加熱が始まる。始動時に僅かに響いた耳鳴りに顔をしかめて、周りを見た。

円周形に対峙する奴らの数は20程。左右の銃撃にかなり流れているようだ。

右前方が突出しているのを確認し、前に出る。


さて、皆殺しの時間だ!




迫る姿を意識せず、首だけ意識に並べて刃を振るう。名寄の人口から考えて、いくら振るったところでたかが知れていようが構わない。

まず、正面の2、一薙に首を落とす。

次、左後ろ、駆け寄ってきた奴の脳天を振り向き様かち割る。

次、振り抜いた刃をふわりと上げて、反時計に薙ぐ。

次、

次、

次!


ボトボト落ちる死に首を危なげもなく躱しながら、刃を振るう。加熱された刀身は、肉を切りやすい硬さに一瞬で焼く。骨を断つ感触すら軽い。時折不意を突かれるも、灰斗の援護が的確に降る。

掠めるのなんか気のせいだよなw


全体を見回し突出しないように気を使いつつ、首のない死骸を量産する。奴らは生者よりも強く心臓が動いているため、一太刀ごとに紅い霧がかかる。オレンジだった服はあっと言う間に赤黒く染まり、だんだんと視界の端に朱が入る。少し口角が吊り上がる。

少し熱が入ってきたか。


「紗那!」

「おー!」


紗那がバリケード側へ引き始めた俺に合わせて、追ってくる奴らをMP7で撃ち倒す。誤射されないように気を付けつつ群がる奴らを機械的に斬ってバリケードに駆け寄る。

垂直2.5メートルか。片手では行けないな。

納刀して、二丁の拳銃を抜く。Shadow Mk-Ⅱ。スターム・ルガーMkⅡターゲットモデルにサプレッサーを付けて艶消しの黒で仕上げた物だ。弾薬は22LRだが、しっかり当てれば威力の弱さは気にならない。

寄ってくる奴らを無造作に撃つ。たかだか5メートルの距離で外すようなヘマはしない。バリケードの周りがある程度開けたら拳銃をしまって駆け出す。バリケード少し手前で踏切り、取り付くと同時に腕を引き寄せ壁蹴りで一気に飛び越えた。


「ぅっ!?おぉ!!!?」


飛び上がった先には、白い壁。空中で姿勢を整えることもできない。

ならどうする?

思い切って壁に手を着く、重い衝撃に顔をしかめながら無理やり手を軸に姿勢を整え、


「ぐはっ!?」


勢いよく反転して頭から落ちた。

滲む涙を払いながら周りを見渡せば、直人と紗那な白い目でこちらを見ていた。


「「アホ。」」

「ハモんなっ!!!」


馬鹿にしやがって。全く。まだこの体には慣れないな。元から比べて思い通り動きすぎる。思ってるより癖で力入れるせいでやりすぎる。動かなければ慣れないししゃあないか。

パラパラと射撃を続けるのをぼんやりと見る。命中率はライフルで70%ってとこか。距離は近いが射線が見えてないな。


「直人!ちょっと貸せ。」


ライフルを引っ手繰って構える。

僅かに腰を落とし肩幅より少し広く足を開く。ライフルを構え頭に狙いを合わせる。

あくまで、機械的に、無感情に、そして自然に。


狙う、撃つ

狙う、撃つ

狙う、撃つ


バリケードに近いものから一秒に一発間隔で淡々と撃ち続ける。


「素人とは思えないな。」


直人の呟きと共に射撃を止めて、ライフルを返す。


「まー適当だよ。こんなもん。フロントサイトとリアサイトをしっかり見通して撃てばこの距離じゃ外せねぇよ。」

「そんなもんか。やってみよう。」


直人は二秒に一発ほどの間隔で撃ち始める。

命中率は90%を超えているだろう。時折、おかしな方向に撃っているが。


カチンッ


そうゆう音と共に射撃が止まる。


「弾数ちゃんと把握しとけ。」

「そうだな。今のは結構焦った。」


直人は苦笑いしながら弾倉を素早く交換する。

お前だって素人に見えねぇよw手付きが慣れすぎだろ。

言葉には出さずにクククッと笑いつつ、奴らを見据える。


「しかし、多いな。」

「名寄の人口を考えれば不思議ではあるまいに。」

「そうじゃねぇよ。明らかに俺がここを出た時より多いんだよ。軽く10倍以上いるぞ。」

「…他が全滅したか?あとは、こちらの行動が目立っているかか。」

「ん、まぁそう言うこったな。」


まぁ全滅の線が濃厚だがな。

徐々に命中率が上がっていくのを見ていると、よくわからない違和感を感じた。


「直人、射撃止め!」

「全員射撃止め!補給して、待っててくれ!」


まばらな返事とともに止んだ銃撃を横目に感覚を研ぐ。

嫌な感じがするな…。これは…


「悲鳴かっ!」

「何!?」

「灰斗!!!距離200!!!」


上に聞こえるように大声を張り上げてバリケードから飛び出す。飛び出した俺の横を榴弾が通過して着地点付近に着弾する。開けたそこに転がり込んで、起き上がり様に刃を二本とも抜いた。


「援護!絶対に龍人に当てるなよ!」


直人の声とともに俺の前にいる奴らの一部が倒れる。一気に走りだしトップスピードまで加速する。

邪魔な奴らだけを最低限の動きで斬り伏せ、走る。


まだだ!これじゃ間に合わん!


早く!速く!!もっと疾く!!!


意識の端に朱が入る。視界が鮮明に歪む。邪魔になった眼鏡を毟り投げて、刃を振るい進む。



もっと疾く!!!



カチンッと、スイッチが入るような、それでいて何かが外れたような音が頭の中で響く。


そう思った瞬間、歪んでいた視界は鮮明で整然としたモノに移り変わった。

そして全身の骨がギシリと壮絶な悲鳴を上げる。激痛に顔をしかめながら、それでも疾走る。有り得ないレベルで加速していく体に快感と恐怖と激痛を感じながら、限界まで飛ばす。それでも、群れる奴らを切り倒す手間が速度を落とし始める。


「見ッえたっ!!!」


必死で逃げる小さな姿を捉えて、認識できる限界を超えて体を動かす。



もう一つ!!!上だ!!!



ほんの一瞬意識が飛ぶ。感覚だけなら無限に近い暗転の後、世界は一転した。


遅い!


自分も、周りも、全部。

体のギヤより遥かに高く。

弾丸を視認できるレベルでの意識の、感覚の加速。


急激に襲い来る頭痛を黙殺して、小さな姿を追う。



無意味で無味乾燥な義務感、罪悪感、その他諸々。



ころすことへの、躊躇い。



それをするための独善的な、偽善的な、言い訳。



そんなモノにその小さな姿を利用しなければならない、弱さ。



くだらない。



くだらない。



くだらない。



くだらない。



くだらない。






「んなどうでもいいわ!助けんだよ!」


渦巻く思考を吐き飛ばして疾走る。



とうとう転んだ小さな姿。

襲いかかる奴ら。

まさに掴み掛かろうとする奴が、



脳髄をぶち撒けて倒れた。



左の刃を手の中で回し、鞘に叩きこむ。その小さな姿に駆け寄り、開いたその手で抱え込み反転する。

戻る道が塞がれている。当然だ。加速した体も、感覚も元に戻っている。

戻れるか。

その問は無意味だ。全方位逃げ場は無い。なら、戻るより外はない。


腕の中の小さな姿を見て、ふっと笑みが零れた。


まだ俺は人間らしいな。


一瞬浮かべた笑みを消して、来た道を戻った。




----




「で、どうすんの?その子ら(・・)。」

「置いとくしかないしょ。」

「子供を放り出すとでも?」

「そっちじゃない。」


奴らは理由は不明だが、人を狙う。故に、動物は奴らにならない。

俺の前にいる、二人・・の子供の周りは、プチ動物園と化している。

だからこそ、生き残った。


「この子たちは一緒にいちゃダメなんですか?」

「いや、食い物さえあれば別に構わん。わかるか?」

「はい。」

「じゃおkで。」

「龍人…あんたが二人の世話見るんだぞ?」

「え?は?なんで?」


奥様連中に預けりゃいいじゃん。面倒くせえ。


「いや、動物大好きな人があいにくいなくてな。」

「そう言う問題か!?」

「黙れ。連れてきたのは貴様だ。」


直人のしれっとした発言に意見すれば灰斗にぶった切られる。四面楚歌かよ。


「まぁ、しゃあねぇか。」


そうゆうと、二人は俺には少々眩しすぎる笑顔で笑った。




この双子の姉妹の名前は、「シャル」と「シエル」だそうだ。シャムシエル。神の強き太陽か。ハーフどころじゃらしい。なんでも、毎回別の人種の人と子供作ってる家系みたいだ。


「お母さんに逃してもらったんです。」

「…(こく)」


とりあえずシャルさんや、喋らないのかい?まぁ、自己紹介の時少し喋った?けど。一言「シャル」って。


「さて、まずは体を洗うぞ!」


実を言うとまだ着替えてない。正直動物達に対応するのに大変で余裕なかった。さすがに大型動物上に上げるのは死ぬかと思ったw


「どこでですか?」

「…?」

「調理場。あそこは中が一段低くなってってな。で、邪魔な調理台一個外したからスペースもある。汚れ跳ねさせないよう気を使わないといけないが後処理は楽だ。」

「えっと…お湯とかは?」

「沸かすよ。心配すんな。洗濯機もあるし、服屋もある。バスタオルもある。あとは…あー石鹸もあるぞ。」

「えっと…その…。」

「あとなんかあったか?」

「あ…いえ「えい。」ひゃぁ!?」

「あーわかった。無いから作るわ。」


シャルが実は容赦無い子だとゆうことが判明した。あと、シエルがお年頃なのも。ふむ。


「お前らほんとに14歳か?」

「?そうですよ。」


いや、どう頑張ったって小学校低学年…


「痛っ!」

「……。」

「なんでもない!なんでもないぞ!」


シエルはキョトンとしてるが…。つか、脛蹴ンなよ。


「まーいーや。作ってくるから先行っとけー。あ、こいつらはここで待機な。」

「はい。」

「…(こく)」


なんか、問題児多いな。夜無といいコイツらといい。まぁいいや。




「もう、12時か。」


電気は一部を除き消され、人も疎らにしか起きていない。そして、俺の隣にゃ安心した顔で寝やがるガキ二人。全くどうしたもんか。離れると悲しそうな顔するとか卑怯すぎる。


「寝るかー。」


明日も奴らを的に訓練だ。殲滅するとか社長に言ったけどちぃと厳しいな。まぁ、ある程度減ればいいだろ。恐らく、あいつは原因に目星つけてるんだろうな。早めにスペックに慣れないといけないな。


ぼんやりと考えるうち眠りに落ちた。

これで、人は出た。救出される直前まで人増え無い。


26.1.5 距離500を距離200に変更。

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