俺と屍と鉄パイプ。あと、新しい目的。
・・・やっとか。
役場に着いた。いくら軽いとはいえ人一人を背負って奴らをかわしながら行くのは大変だった。
「怖い顔すんな。あと、誰にも言うなよ。」
返事は返ってこない。無言は肯定と受け取ろう。人の首を絞めている白髪の少女を降ろす。
睨まれても困るんだがな。
役場のバリケードをずらし、中に入る。
「戻ったぞ。」
「たっだいまー!」
切り替えの早いこって。
「お帰り。他は全員戻ってるぞ。」
「そうか。すまんな。」
どうやら最後だったようだ。
「いつまでもここに居ても仕方がない。明日名寄へ出発しろ。この感じだと他の生存者は絶望的だからな。」
「そうだな。お前は?」
俺か。知り合いもいないようだし、何人かは殴り壊した気がするからな。もう用はないな。
「もう用もないし、先行ってるわ。集合西條な。」
「了解。またな。」
「おー。じゃあな。」
密かに睨み付けてくる夜無を無視し、直人に別れの挨拶をして、役場を出た。
一人になりたかった。
自分の中に在る衝動。
誰かを傷付けたい訳じゃないんだ。
まだ、奴らと同じに成りたくない。
俺はまだ人間でいたい。
服屋で適当に服を漁り、コンビニに戻って来た。
腹減った。何喰うかな。
ごそごそと商品を漁るが、結局朝と同じ物を手に取る。
「これからどうするか・・・。」
これから。
西條に戻ったところでどうしようもない。まぁ一度は戻らなければならないが。社長のおかげでライフラインは生きてるし。どうやって合流するか・・・。
だるっ!電話しよ。
社長と打ち合わせんのが手っ取り早いだろう。
電話をかけるとワンコールで出た。速いな。
「どうした?」
「いやな、どうやって合流しようかと思って。」
「・・・あと三日か四日待て。そしたら西條の屋上に輸送ヘリ降ろす。」
「待つってのがなぁ。気に喰わん。」
「そうか。なら、西條に送った物資はかなりあるはずだから、それで屍共を掃討して貰えるか?」
「んー。悪くない暇つぶしだ。武器は何が?」
「お前用に22LRを撃つルガーMK2の模倣改良品とブレードが入ってる。」
「ブレード?」
「全長86cmの片刃直刀だ。鍔は最低限だから扱いに気をつけろ。」
「今時そんなもん作ってるってどうよ。」
「五月蝿い。趣味だ。鍔がある以外は某ステルスアクションそのまんまだぜ?」
「それはある意味ナイスだ。ありがたく使わせてもらおう。」
「22LRはマガジン容量が10発。それが20と予備弾が1万程入ってる。メンテ無しの耐用射数は3000発だからな。2000くらいでメンテしとけよ。」
「やり方の説明書とかあるのか?」
「当たり前だ。素人に何も無しでやれとは言わん。」
「そりゃよかった。じゃ、取り合えず西條向かうから。またな。」
「おー生きていれば・・・な。」
「ゴキブリ並みさ。なめんなw」
「クククッ。じゃあな。」
切れた。
「あーーー・・・・。行くか。」
荷物を纏め、店を出る。
二度と来ないかもしれない町に背を向けて、別れも無しに歩き出した。
奴らを壊そう。徹底的に。名寄がすっかり奇麗になるぐらい。
「クククククク・・・・・。」
不気味に嗤いながら西條に歩き出すその背中は・・・。
まだ俺はマトモだろうか?
自分で考えたって無駄だ。
分っていても問うのなら。
俺はまだ。
少なくとも俺だろう。
全て壊せたら。
そしたらラクになれるかな?