孤独な王女
夜明け前の空は、まるで傷ついた心のように灰色だった。
小さな馬車の中で、私はただ、震える膝を抱きしめていた。
涙を流しても、慰めてくれる者は誰もいない。
王家の紋章を削ぎ落とした薄い外套。
心にはまだ、父王の決断を告げに来た騎士の残した言葉が深く刺している。
※※※
「陛下のご命令です。これ以上、貴女様をこの城に置くことはできません」
※※※
冷たく、短い言葉。
けれどその裏にあったのは、確かな恐怖だった。
あの日、私が暴走させた魔力は城の一部を崩壊させ、炎を巻き上げ、多くの者を傷つけた。
誰も死ななかったことだけが唯一の救い。
こうして私は、王女である資格を失った。
馬車はひどく長い時間、森を抜け、山を越え、やがて一つの村にたどり着いた。
見知らぬ土地、見知らぬ空。冷たい風が頬を刺す。
護衛の兵は淡々と私を降ろすと、何の言葉もなく馬車を走らせ去っていった。
残されたのは、たった8歳の私と、重たい沈黙だけ。
「……うぅ……どうしよう」
自分の声が震える。
最初の夜、私は小川のそばで身を寄せ、泣きながら眠った。
森は深く、風は冷たく、空には無数の星が瞬いている。
(こんなにたくさんの星があるのに、どうして私はひとりなんだろう……)
その問いが胸の奥で何度も何度も反響した。
幾晩も彷徨った。
雨に打たれ、空腹に耐え、倒れかけたその時。
月明かりの中に、一人の男が立っていた。
灰色の外套に、鋭い眼差し。
長い髪の間から覗く、深い森のような緑色の瞳。
「強大な魔力の気配を辿って来てみれば……ただの子どもとはな」
低く、静かな声。
その声を最後に、私は意識を手放した。




