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プロローグ~破滅の王女~

 ソレイユ王国____黄金に輝く太陽の名を持つその国は、広大な草原と蒼い湖、そして魔法と共に生きる人々によって栄えていた。


 その城の奥深く。

 王族にのみ許された区画で、ひとりの少女は膝を抱えて震えていた。


 彼女の名はレナ。ソレイユ王国の第一王女として生を受けた少女である。


 けれど、彼女は気弱で、人前ではしばしば涙をこぼすほどの心細さを抱えていた。

 だが、彼女の内には王家の血がもたらす強大な魔力が宿っていた。


 ……いや、あまりに強すぎたのだ。


 8歳のある日。


 レナはいつものように人目を忍び、人気のない中庭で魔力のコントロール練習をしていた。父王に叱られることを恐れ、母や兄の目からも隠しての、孤独な努力であった。


「大丈夫。今日はきっと……」


 小さな両手を組み、そっと魔力を練り上げる。赤子のように震える呼吸とともに、彼女の周囲に淡い光が生まれた。


「だめ、また……」


 光が大きく弾ける。

 瞬間、まるで夜明け前の雷鳴のような衝撃が塔を貫き、石壁が砕け散った。

 崩れ落ちる瓦礫、悲鳴。少女はただ震えていた。


 ____それが、すべての始まりであった。


 王は厳格な人物であり、情に流されることを何よりも嫌った。

 娘の力を「いずれ国を滅ぼす呪い」と見なした王は、妻や息子の懇願を聞き入れず、冷徹な決断を下す。


「お前をこの国から追放する」


 幼い王女はただ、震える小さな手でドレスの裾を握りしめ、「ごめんなさい」と何度も何度も繰り返すことしか出来なかった。


 やがて、夜明け前の馬車がひっそりと城門を抜けた。

 星の光すら届かぬ森の道を、ひとりの少女を乗せて。

 ____それが、王女レナが……『私』が“消えた日”だった。


 表向きには「好奇心旺盛な第一王女が学びのために旅に出た」と広く布告されたが、それは体裁を保つための欺瞞に過ぎなかった。


 幼き彼女はただ一人、涙と絶望の中で見知らぬ大地に打ち捨てられたのだ。

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