(3)
「いいですよ」
神山はあっさり頷いた。
「いいですよ、って……」
二の句が継げなかった。
口が開いたままになっていると、神山不動産の取り組みについて話してくれた。
「実は、女性活躍推進室という部署を3年前に作って女性社員が働きやすい環境の整備に取り組んでいるのですが、その一環として、今年、本社内に社員専用の保育所を作ったばかりなのです。ですので、そこを利用していただければいいのではないでしょうか」
国からの補助を得て運営している企業内保育所で、まだスペースと保育士に余裕があるので、数人程度なら十分預かれるという。
「もちろん、タダというわけにはいきませんが、月額1万円とリーズナブルな価格設定にしていますので、余り負担を感じないでご利用できると思います」
神山不動産の社員と同等の費用で利用してもらって構わないという。
「うわ~、ありがたい。これを聞いたら夢丘がどれほど喜ぶか」
思わず神山の右手を両手で握ってしまった。
美容室といい、保育所といい、彼の発想と行動力には頭が下がるばかりだった。
「本当にありがとう」
両手で握ったまま深く頭を下げた。




