(12)
1週間が経った。
またも天気は良くなかった。
それでも、厚い雲が太陽を遮ってはいたが、雨粒は落ちていなかった。
「雨、のち、くもり、のち、晴れ」
店長と会う時間には晴れているように空に願掛けをして、パンをトースターに入れた。
*
出かける時間になっても電話はかかってこなかった。
今日はキャンセルはないようだ。
空はまだ曇っていたが、「よし!」と気合を入れて、心の中の暗雲を吹き飛ばした。
*
喫茶店には待ち合わせの20分前に着いた。
夢丘は席に座っていた。
周りに人のいない一番奥のテーブルだった。
わたしは胸の前で手を上げてから近づき、彼女の横に座った。
*
店長が顔を見せたのは、ちょうど5分前だった。
「待たせた?」
「いえ、ちょっと前に着いたばかりです」
「そう」
それだけ言って座ったが、その表情から読み取れるものは何もなかった。
コーヒーが運ばれてくるまでは3人とも無言だった。
こちらから話を向けるわけにもいかないし、店長も切り出すタイミングを計っているのかも知れない。水を何度も飲んで、視線は入口の方に向けていた。
店長がコーヒーに砂糖を入れた。ブラウンシュガーを一欠片だったが、前回はブラックで飲んでいたので、もしかしたら彼の脳が甘さを要求しているのかもしれない。
ということは、スムーズな話ではないということになる。
嫌な予感がしたが、それをコーヒーで胃の中に押し込んで、彼の口が開くのを待った。




