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「わかりました。さっそく募集を始めます」
東京美容支援開発の担当者は、独自システムによって選別しているSクラスの美容師に声掛けをするという。
その説明に驚いた。
東京都内の登録美容師をAIを活用してランク付けしているというのだ。
現在の勤務店のレベル、美容師としての経歴、自己申告による技術水準や考え方や趣味などを基に、S、A、B、Cの4クラスに分類しているという。
「もちろん、最終的には面接をして、技術力と人柄を見ていただくことになりますが、質の高い候補者をご紹介できると思います」
自信満々の声で言い切った。
過去の成功体験に裏打ちされているのは明白なように思われた。
20人の候補者が出そろった段階で再度打ち合わせをすることを約束して、会社を辞した。
*
「さあ、次は店長だね」
「そうですね」
夢丘は頷いたものの、言葉とは裏腹に不安そうな表情を浮かべていた。
それは、引き抜きという形になることを心配しているためだと思ったが、こればかりは本人に会って確かめなければわからない。自らの意志で動いてくれるかもしれないのだ。
「とにかく、会ってみようよ」
「はい」
返ってきた声は小さかったが、一歩踏み出すことに同意してくれたのは間違いなかった。わたしは次のステップに意識を集中することにした。
「さて、どういうふうに切り出していくか……」
単刀直入型でいくのか、それとも、徐々に本題に持っていくやり方でいくのか、店長の顔を思い浮かべながら、ああでもない、こうでもない、と思いを巡らせた。




