表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/102

(6)

 

 カットと違って今度は目を開けて作業を見ていると、両耳に色がつかないようにカバーをかけ、ヘアマニキュアを塗布(とふ)する作業が始まった。

 プシュという音と共に黒い泡のようなものがブラシの櫛の間から出てきたと思ったら、それを髪を()かすようにつけていき、数分で髪が黒くなった。

 髪型はオールバック、つまり、すべての髪が後ろに撫でつけられていた。


「このまま15分ほど置きますので、雑誌でもお読みになってください」


 そして、タイマーをセットし、「コーヒーになさいますか、それともお茶がよろしいですか」と尋ねてきた。


「コーヒーを、ホットでお願いします」


「お砂糖とミルクはいかがいたしましょう」


「二つともお願いします」


 運んできてくれたコーヒーを飲みながら、さり気なく店内を観察した。

 客は全員女性で、美容師との会話に夢中になっていた。

 自分のこと、家族のこと、仕事のこと、趣味のこと、いろんな会話が飛び交っていたが、プライバシーに関する内容が多かったので驚いた。


 そんなことまで話すんだ……、


 わたしの耳はダンボ*になった。

 その時、


「よしの!」


 店長がまた彼女を呼んだ。

 何かを指示しているようだった。


 吉野さんか~、 


 頭の中で漢字に変換したわたしは彼女に向かって、〈これからも担当になってくれたらいいな〉とキビキビ動く姿を見ながら心の声をかけた。



*ダンボ…ディズニーのアニメに出てくる空を飛べる子供のゾウの名前。そのことから、ゾウの耳のように大きくなって聞き耳を立てるという意味で「耳がダンボになる」という表現が使われるようになった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ