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「よろしく頼みます」


「はい、こちらこそ、よろしくお願いいたします」


 最初の客はわたしだった。

 カットとヘアマニュキュアを施術してもらった。

 いつも通りに仕上げてくれたので、礼を言ってお金を支払おうとすると、きっぱり断られた。


「高彩さんは恩人ですからお金を受け取るわけにはいきません。もちろん、これからも」


 さも当然というように笑みを返された。

 それは予想していたことだったので、上着の内ポケットから袋を取り出した。

 10万円が入っている祝儀袋だった。

 差し出すと、少し躊躇ったようだったので、「お祝いは拒否しないでくれよ」と言うと、「ありがとうございます」と素直に受け取ってくれた。


 翌日の客は東京美容支援開発の担当者だった。

 もちろん施術料はいただかなかったが、お祝いだけは頂戴した。

 会社名義と個人名義の袋にはそれぞれ1万円が入っていた。

 ありがたかった。


 その後は、神山や西園寺、宮国が来てくれたし、神山の奥さんも来てくれた。

 その度にお祝いをいただいたが、全員が10万円を包んでくれていた。

 まだ一般客が見込めない中、涙が出るくらいありがたかった。


 わたしは毎日、仕事帰りに夢丘の部屋に立ち寄って、その日あったことを聞いていた。

 神山の奥さんは友達を連れてきてくれたし、西園寺は会社の女性社員を紹介してくれた。宮国もガールフレンドを伴って来店してくれた。もちろん、夢丘の元同僚も足を運んでくれたという。

 更に、花輪や花束もいただいた。

 その度に夢丘は涙を止めることができなかったらしい。

 多くの人に支えられていることに感謝してもしきれないと涙目になった。


「この気持ちを忘れないようにしなきゃね」


 常に感謝の心を持って、かつ、謙虚に仕事をしていこうと誓い合った。



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