表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/102

(4)

 

 私の売り……、

 差別化……、


 夢丘は考え続けていたが、何一つ、これはというものは浮かんでこなかった。

 もちろん、やりたいことはわかっている。

『お客様に輝きを与えることができる美容室』を作ることだ。

 髪だけでなく、全身を素敵にしてあげて、トータルの美を提供できる美容室を作り上げるのだ。

 だから、ヘアデザインだけの美容室は考えていなかった。

 エステもネイルもメイクも着付けもできる総合美容室を目指していた。

 そのために講習を受けて、管理美容師の資格を取得した。

 衛生管理の責任者として店のマネジメントをする準備はできているのだ。 


 でも、グランドデザインは描けていても、自分のことを棚卸しするということはまったく考えたことがなかった。

 他の美容師と違う『自分だけの売り』という観点で考えたことなど一度もなかった。

 差別化という言葉は頭の中にまったく存在していなかった。

 必死になって練習をして技術を向上させれば、それだけでお客様が付いてきてくれると思っていた。

 だけど、それだけでは〈差別化=自分だけの売り〉にはならない。

 そのことに気づかされた。

 優れた美容師は山ほどいるのだ。

 経験が数年しかない自分が、ましてや、トップデザイナーではない自分が前面に打ち出せるアピールポイントは何もないのだ。


 それでも、自分の店を持ちたいという想いを止めることはできなかった。

 一旦火が付いたハートの炎を静めることはできないのだ。


 夢丘は秋田の方を向いて、手を合わせて、頭を下げた。

 祖母に救いを求めた。

 導きを求めた。

 何らかの答えが返ってくることを信じて、ひたすら待ち続けた。

 でも、いつまで経っても優しい声は聞こえてこなかった。

 夢の中にも現れてはくれなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ