表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/102

(5)

 

 その夜、新婚旅行の夢を見た。

 ヤシの葉が揺れる海岸沿いを歩き、そこから海上の誘導路を渡って海上コテージに辿り着き、部屋のドアを開けると、ベッドいっぱいに敷き詰められた真っ赤なハイビスカスの花が出迎えてくれた。

 それを見た妻が少女のような目をして、「素敵」と言った。

 わたしは妻をお姫様抱っこして、ベッドルームに入った。

 テレビで見た通りのことをして笑い合った。

 それがくすぐり合いなった。

 笑いながら唇を合わせたが、すぐに夢中になり、舌を絡ませた。

 そしてお互いの服を脱がせながら体中にキスをした。

 たまらなくなって愛し合った。

 何度も愛し合った。

 日付が変わってからも愛し続けた。


        *


 翌朝、睡眠不足の目をこすりながらも早起きをして、コテージから外に出た。

 浜辺はまだ薄暗かった。

 砂の上に座るわたしたちは波の音を聞きながら、その瞬間を待った。


「あっ、出てきた!」


 妻は立ち上がり、波打ち際へ歩き出した。

 朝陽が顔を出そうとしていた。

 空が(あけぼの)色に染まり始めていた。

 爽やかな風が妻の髪を優しくなびかせ、その髪がきらきらと光りだした。

 この世のものとは思えない美しさに、目を奪われた。

 まるで妻の髪に神が宿ったように感じた。


「かみ……かみ……」


 思わず呟いた言葉にハッとして、口を手で押さえた。

 これは降臨(こうりん)だと思った。

 これから先を示す言葉が天から降ってきたのだ。


「ああ~」


 わたしは空を見上げ、この奇跡に感謝した。

 そして天から贈られた言葉を口に出した。


「髪神」


 その瞬間、眩い黄金色の光が煌めいた。


「何か言った?」


 振り向いた妻は神秘的な光を纏い、女神のような微笑みを浮かべていた。



 了


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ