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俺の世界  作者: 鉢木萌
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第一話 終始

 この世では生まれた瞬間に能力が付与される。

 例外は今のところ存在していない。

 僕もそうだった。

 そのせいで悟ってしまった。

 明るい未来はないと。

 たくさん模索した。寝るふりをしてまで模索した。ただ明るい未来は一向に来なかった。

 絶望に暮れる僕に一つ天啓が降りた。

 その未来に僕がいる必要はない、と。僕以外のみんなが笑って幸せに生きてくれればいいと。

 そうなったらあとは簡単だった。どうしても犠牲は出てしまうけれど、僕の大事な人たちが守られるならそんなのはどうでもよかった。

 さて考えが終わったので、早速行動に移していこう。まずは、そうだな神様にでも会いに行こうか。




 私は悩んでいる。

 この世に蔓延る悪共についてだ。

 私が直接手を下せればいいのだが、奴を放置するわけにもいかない。

 このまま有耶無耶に進めば、奴の侵攻が進みこの世は終わってしまうだろう。一体どうしたものか。

 

 「やぁ。神様であってますか?」

 「そうだが、どうやってここまで来た?そして君は誰だい?」

 「あぁよかった。

  色々相談があって来たんですけど、簡単に言うとこの世を救いに来ました。

  ただ、僕一人じゃ限界があるので手を貸してほしいです。」

 「この世を救いに?もしかして君は奴のことを知っているのか?」

 「そうですね。なんでも知ってますよ。」

 「なるほど。ならちょうどいい。

  私ができることなら手を貸そう。

  その代わり、ちゃんと奴を抹消してもらう。」

 「えぇ大丈夫です。

  必ず抹消してみますとも。

  それでは最初のお願いです。

  あ、その前に計画の全容を伝えておきますね。」

 「なるほど。私も犠牲がゼロだとは思っていなかったが、いいのか?」

 「問題ないです。」

 「わかった。ではその計画を進めていこう。」





 「翔はすごいなー。もうそんなに文字が読めるのか?」

 「まぁね。僕は将来国に仕えようと思ってるから、これくらいのことはできないとダメなんだけどね。」

 「弟が優秀すぎて怖いなー。」

 「あら、利人もこの間国の護衛騎士と戦って勝っていたじゃない。あなたも十分すごいわよ。」

 「そうだけど、僕はまだ将来についてなんも決まってないからなー。」

 僕の名前は利人。今は5歳だ。すごい強い騎士団の隊長だったお父さん星と、国の学者だったお母さん樹香の間に生まれた長男で、双子の弟の翔たちと王都から少し離れた森の近くで暮らしてるよ。

 今日は家族仲良くピクニックに来たんだ。ピクニックといっても、森が安全かどうかの調査も含めてやってきているんだ。

 あと一年したら学校に入らないといけないんだけど、お父さんとお母さんがすごい人たちだから、優秀な人たちしか入れない学校に行かないといけないんだ。

 学校は寮制だから、お父さんお母さん翔とも会えなくなっちゃうんだよね。

 ちなみに翔は国に論文?というものを提出して、それが認められたから僕が学校に入るのと同じタイミングでお母さんと同じ学者になることが決まっているんだ。


 「利人も父さんと同じく騎士団に入ったら?」

 「まぁたしかに。それがいいかもねー。」

 あと一年たくさん家族との思い出を作っていくんだ!!

たくさん遊びに行った。一緒にお風呂も入った。ご飯も必ず家族全員で食べた。そして僕は幸せな気持ちと、将来への少しの不安を胸に学校へ入学した。




 学校というものは案外いいものかもしれない。家族に会えないのは寂しいけどたくさん友達ができた。親友と呼べる存在もできた。授業も難しかったけれど、何とか食いついていった。そして、将来の夢も出来た。お父さんと同じように騎士団に入ることにした。早く家族に伝えたいと思いながら、僕は最後の一年を過ごしていた。


 「利人は卒業したらそのまま騎士団に入るのか?」

 「うん。家に帰って、報告したらすぐ入るよ。

  夢勇はまだ学校にいるんだよね?

  はやく騎士団に来てね。」

 「あぁ。できるだけ早く合流するよ。

  じゃあお互い頑張っていこう!

  またな!」


 「うん!またね!」


 そうして僕は学園を卒業した。



 「お父さん、お母さん、翔ただいまー!」

 僕は家に帰った。ただ家には誰もいなかった。


 「あれ?

  どこ行っちゃったんだろう。

  帰る日は伝えてたんだけどな。」


 そうして、翔が仕えてるところへ向かった。


 「え、どういうこと?

  言っていることがわからないんだけど。」


 「お父さんとお母さんは死んだ。

  森に出た魔獣の駆除に向かったんだけど、手に余る敵だったみたい。」


 「なんで?ちゃんと国が確認してから駆除命令が出るはずだよね?そもそもそんなことがあったのなら僕に連絡が来ると思うんだけど。」


 「定期探索のときに出たみたいだ。

  ちなみに魔獣は駆除済みだよ。

  そして、連絡は僕がさせなかった。」


 「どうして?せめて一目だけでも会いたかったよ。」


 「まず、一つは遺体が見つからなかった。

  二つ目は、利人に無駄な精神的負担をあの時かけたくなかった。」


 「遺体が見つかってないのに、なんで詳しい状況が分かっているんだ?」


 「それは僕の固有能力のおかげだよ。」


 「翔の能力?探査だったよね。それでなんで過去のことがわかるんだ!」


 「能力を鍛えたからね。

  過去もみれるようになった。

  あともう一つサプライズがあるよ。」


 「なんだよ。」


 「僕は騎士団の隊長になった。

  今すぐ利人も入ってもらう。

  役割的には副隊長だね。」


 「騎士団に?それはいいけど、騎士団長になれたの?」


 「うん。騎士団に入ってた人たちを全員倒したからね。」


 「倒せたの?」


 「まぁね。

  だけどそれはどうでもいい。

  僕に手を貸してくれるかい?すべてはこの国のために。」


 「というかなんでお父さんとお母さんが死んじゃったのに、そんなあっさりしているんだ?僕はまだ立ち上がれないよ。」


 「簡単にいうと、悲しむ余裕がない。

  今はこの国を早く、強く地位がある国にしないといけない。」


 「なんだよ、それ。そんなに国が大事なのか。僕はそんなのどうでもいいよ。みんなと平和に過ごしていたいよ。」


 「平和に過ごすために、国を強くしないといけないんだ。

  学校で何を学んできたんだ?」


 「そんな言い方しなくてもいいじゃないか!わからないよ!何を言っているんだよ!僕は翔みたいに頭がよくないから、翔が何を言いたいのかわからないし何をしたいのかがわからないよ。ただ帰ってきて、また家族と暮らせると思っていたら、いきなり死んだって言われて悲しむ暇もなく騎士団に入れとか言われても、理解も納得もできないよ!僕は今とても悲しいんだ。翔だってそうじゃないのか?」


 「割り切るしかないだろう。

  そうすることで未来に進めるならそうするべきだ。」


 「できるわけないだろう!!普通だったら悲しむんだよ!翔、普通じゃないよ。一体どうしたんだ?家族を失って何も思わないのか?」


 「だから言っているだろう?時間の無駄だよ。そんなの考えるのは。それよりこれからのことを伝えるよ。」


 「なんなんだよ。おかしいよ。」


 「話を聞いてくれないか?

  じゃあこうしよう。今から訓練場で戦おう。

  それで利人が勝ったら、利人のことを最大限尊重しよう。

  僕が勝ったら、僕の言うことを聞いてくれる?」


 「あぁ、いいよ。やろうじゃないか。」

 翔は僕のことを舐めているな?騎士団長になったからって。僕だって学校では無敗の戦績なんだぞ。先生にだって負けなかった。絶対に勝ってやる。そして昔みたいに二人でもいいから、平和に暮らすんだ。


 「では双方準備はよろしいですか?」


 「はい。」


 「いつでもどうぞ。」


 負けるわけにはいかない。翔には正しく生きてもらう。


 「それでは、始め!!」


 「うおーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

  翔が反応できる前に勝負を決める。長引けば、僕の能力を知っている翔のほうが有利になる。最初の5秒にすべてがかかっている。翔は学園に行く前の僕しか知らない、あの時より10倍は早くなっているんだ。力加減だけ気遣って寸止めで決着だ。


 「勝負あり!勝者、騎士団長翔!」


 「だめだよ、利人。

  僕に怪我をさせてもいいから全力来るべきだった。

  そんな甘い思考じゃ家族は守れない。

  練習だろうか、実践だろうか一つに全力出せないならどこであろうと負けるよ。」


 なんだ。動けない、しゃべれない、目も開かない。ただ声だけが聞こえる。


 「じゃあ、勝負はついたってことで。とりあえず騎士団に入ってもらうよ。」


 あぁそうか。負けたのか。僕は翔を舐めていたのか。悔しい。いつの間にか弟は兄より強くなっていた。本来ならば喜ばしい事だが、とてつもなく悔しい。翔に言いたいことはまだまだある。なぜ穏やかな暮らしをするのは駄目なのかが、わからない。翔の考えていることがわからない。でも負けてしまった。これは正式な決闘だ。それに負けたのなら、約束は守らなければいけない。平和に暮らせないのならば、せめて翔と一緒にいたい。もう家族を失いたくない。だから強くなる。騎士団に入り、皆が笑顔で暮らせる国にしたい。




 2年後月王国近郊の森


 「索さん、そろそろ夕暮れになってきました。」

 「了解。じゃあもう一度計画を説明するよ。」

 「「「はい!!!」」」

 「まず、俺たちは商人として月王国に入国する。

  入国書も無事偽造できた。

  その後、王国内でリサーチをして、一番高い宝石店に盗みを仕掛けに行く。

  問題はその後で、王国の騎士団だ。

  宝石強盗に強いやつが何人も来るとは思えないが、最大限の警戒をしておこう。

  わかったか?」

 「「「はい!!!」」」

 「じゃあ、入国しに行こう。」



 月王国門前


 「入国書を出しな。」

 「はい。どうぞ。」

 「ふむ。商人か。新商品の売り込みかい?」

 「いえ。既存商品の入荷ですね。」

 「そうか。問題はない。入っていいぞ。」

 「ありがとうございます。お仕事がんばってください。」

 無事に入国できたな。もう少し検問が厳しいイメージを持っていたんだが、そんなことはないのか。


 「それではお前ら騒ぎを起こさずに、国内の探索に行ってきてくれ。俺もここから道を探す。日が完全にくれたらまた宿屋に戻ってきてくれ。」

 「「「はい!!!」」」




 「どうだ?月王国は?」

 「そうですね。遅い時間なのに治安もよく、国民の活気や優しさも素晴らしかったです。なぜなんでしょうか?」

 「簡単なことだ。

  それほど護衛隊が優秀なんだ。この国も約9年間までは、これほどまでの国ではなかった。当然護衛隊は周辺国の中でも秀でていたが、今ほどではない。」

 「一体何が変わったんですか?」

 「簡単に言うと、犯罪への罰だな。

  普通の護衛隊長は防衛や他国への攻撃時以外の権限は少ないんだが、新護衛隊長は国の役人にもなっている。

  つまり非常時以外の権限も持っているんだ。

  それで犯罪者への罰を重くし、実際にどうなるかを国民にも伝えることで大きく犯罪が減少したんだ。

  その他にも、入国検査も厳しくしたり色々しているんだ。」

 「そんな国で犯罪しても大丈夫なんですか?」

 「正直、100%の自信があるとはいえないな。

  俺の能力をフル活用して、よくて70%くらいだろうな。

  ただ、ここで成功できれば一気に俺らは自由になれる。

  それほど今この国は、金に溢れている。」

 「自由になれる、、、」

 「あぁ。山で暮らすこともなくなるし、街で贅沢もできるようになるぞ。」

 「「「おぉ!!!」」」

 「やるしかない!一攫千金のチャンスなんだ!絶対に成功させるぞ!!」

 「「「おーーー!!!」」」

 「最後に改めて懸念点とトラブルが起きた時の対処法を確認しておく。

  まず懸念点だが、一つだけだ。王国騎士団が出てくることだけは避けないといけない。出てきたら即刻退散だ。

  次に何らかのトラブルが起きたとき。これも即退散だ。

  リスクを取ることも大切だが、自身の身を守ることが何よりも大切だ。

  わかったな!?」

 「「「はい!!!」」」

 「よし!じゃあ準備が整い次第、出発する!成功させるぞ!!」

 「「「おーーー!!!」」」

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