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第7話

 あいつは俺を幸せにするのではなかったのか? 麻友が倒れたのは、あいつが貧乏神だからなのかもしれない。

 いや、違うな。何かの考えがあるのだろう。元は悪魔、しかも、堕天使サタンがその正体だ。もしもの時は、俺が呪ってやるぞ、貧乏神め。


 貧乏神が姿を消してから、1時間が経過しようとしていた。奴が戻る気配はない。もしかして、天界へ帰ったのかと思ったが、今の俺にそれはどうでも良いことであった。

 静かに眠っていた、麻友の瞼が薄っすらと、そして、大きく見開いた。どうやら、目が覚めたようだ。ベッドのリモコンを操作して、身体を起こしてやった。

「麻友、気分はどうだい?」

「隼人君、ずっと見守っていてくれたのね。ありがとう。お陰様で、もう大丈夫よ。それにしても、私、どうしたのかなぁ…」

「医師が言うには、軽い貧血だそうだ。念の為、簡単な検査をするらしいが、それが終われば帰っていいそうだぞ」

「あのね。聞いてくれる?」

「俺で良ければだけどな」

「うん、隼人君だからこそ、聞いてもらいたいの。それにね、他の人には言えないな」

「これは俺を信用してくれていると受け取って良いのかい?」

「うん、お願い」

「わかった」

「私のことなんだけどね。この半年くらい、ずっと、頭が痛く、頭痛が治らなかったの。それでね、倒れたのはそのせいかなと思ってみたりしたんだけど、今は何ともないの」

「勉強のし過ぎからの疲れではないのか? 気持ち良さそうに寝ていたぞ」

 麻友の様子がおかしい。顔が赤くなっている。もしかして、何かの病気ではないかと思ってしまう。

「そういえば、見られていたのね、私。親以外の男の人に寝顔を見られたのは、隼人君が初めて。恥ずかしいな」

「ん、そうだったのか。いや、これは良いものを見せてもらった。まあ、これは冗談だ。可愛い寝顔だったぞ、麻友」

「恥ずかしいわ、もう」

「うん、眠った顔も可愛かったが、照れている顔も、これまた可愛いではないか。いや、本当に良いものを今日は見せてもらった」

「もう、からかわないで、恥ずかしいわ」

 そう言うと、俺から視線を外して俯いてしまった。

 俺は本当のことを言っただけなのだが、女性にとって、寝顔を見られる恥ずかしさは、何となくであるが、わかるような気がする。

 その時、病室のドアが軽くノックされる。

「鈴木さん、入りますよ」

「あ、はい」

 ドアが開くと、一人の男が入って来た。言うまでも無い、担当医だろう。その服装を見ればわかる。初老の老人に見えるが、白衣を纏っていた。

 鈴木とは、勿論、麻友のことだ。

「気分はいかがですか? どうやら、軽い貧血のようですが、そこの彼氏さんが大騒ぎをしましてね。大切に思われているようで、年寄りには眩しく映りましたぞ」

「彼氏さん?」

「あ、いや、俺は、その何と言うか…」

「はい、頼もしい、彼氏です」

「おい、麻友?」

「私じゃダメかしら?」

「そうじゃなくてだな、俺で良いのか?」

「言ってみるものですね、先生」

「若いとは良いことですな、彼氏に彼女さん」

 これが、俺と麻友の始まりであった。

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