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Episode.002

“ふぅ…朝から大変だったね…ありがと。あ、レイアさん来た、おはよー”

“ああ、朝からよくやってくれた。おや、サザンカも今日はいるんだな。”


颯爽と現れ、サザンカにそう声をかけるのは、僕らの大師匠、レイアさんだ。

大師匠なのだが彼は敬語をひどく嫌う。距離感がどうとか言っていた。

そのため僕らは彼に対してタメ口で話している。

不敬罪に当たりそうだが、おそらく敬語で話す方が不敬罪になるに違いない。

なに、さっき「よろしくお願いします」と敬語だったって?…ついついだ、見逃してくれ。


さて、彼のことだが。

一言で表すと、天気を操る大精霊だ。しかもかなり高いランクの。

そんなすごい大精霊がいったいなぜサザンカの元に来たのか。それを話せば長くなりすぎる。

というかそもそも彼についてしっかり話そうとすれば、紹介だけでおそらく一晩は余裕で過ごせてしまうだろう。

とりあえず今は、サザンカと僕についてくれている守護霊という認識を持っていただければ十分だ。


“あ、レイアさん!今日もなんだかんだで頑張ったよ!まだまだ今日は長いけど頑張るね!”

“1人の時くらいは無理せずのんびりしろ。…ところで、そろそろお前自身の名前を考えてはどうだ?”

“うあっ…そ、それは…うーん…”


最近レイアさんによく言われること。それは僕自身の名前を考えろというものだ。

実は、僕のこの名前の「エリカ」は、本当の名前じゃない。

サザンカは…彼女のプライバシーを守りたいという僕の強い意志による仮名だ。だが…正直僕の名前くらいは、本当の名前を書いてもいいだろうとは思う。

だがしかしここで大きな問題が発生するのだ。

自分の名前としてしっくりくるものが全く見つかりそうにもないのだ。

今の「エリカ」という名は、いわばコードネーム。名前がないと呼びづらいから適当につけたものだ。

そろそろ自分の名前を本気で考えないといけない気がするのだがーー


““ふふふ、楽しそ〜!””


朝っぱらからレイアさんに痛いところをつかれ、

うろたえながら考え込む僕を見て、ころころ笑い始める邪魔者が現れた。

この邪魔者の正体は、風の子たち。

邪魔者といっても敵ではない、むしろ友達だ。

しっかしまぁ困ったことに、この子達は少し度をすぎたいたずらっ子集団なのだ。

色んな意味で旋風を巻き起こすのが大好き。なにかが風で倒れたといえばきっと大体この子達の仕業だ。

どういうわけか僕のそばに現れてからもう数年経つ。絶対に他にも、もっと静かなおとなしい風の子達がいるはずなのだが、どういうわけか僕のところにいるのはこの困った集団のみ。いまだに彼らの正体は僕にはわからない。


“も、もう…笑わないでくれよ…僕は真剣に困っているんだからな!”

“”えぇーじゃあ決めてもらえばいいのにー””

“なっ、そ、そういう話じゃない!てかこらそこで遊ぶのはやめなさーい!”


さらに楽しそうに笑いながら電車で遊ぶこの子達には本当に困らされてばかりだ。

電車が止まるたびに、駅にいる人々の髪をなびかせるくらいならまだいいが、

ひどい時には電柱をなぎ倒そうとするから本当に大変だ。


“”ふぁーい、まぁ仕方ないかー””


何人もいるはずなのに聞こえてくる声はいつも一つなのは不思議なのだが、そこは気にしても仕方がない。

ようやくおとなしくなってくれた風の子達を横目に見ながら、学園の最寄駅にたどり着く。


最寄駅からすぐのところに学園はある。

生徒証をゲートで提示し、教室に向かうことにする。


今日はいつもより早めに学園に着いたおかげで、人はまだほとんどいない。

せっかくなのでレイアさんたちと話を続けることにした。


“すいません、さっきは風の子たちに気を取られて話途中になっちゃった…その、名前だよね…”

“あぁ、名前…そろそろコードネームだけだと…「名前の法則」は知っているだろう?”

“知ってるよ…うーん…それはそうなんだけど…”


この世界には、法則がたくさんある。

その法則のうちの一つは、「真の名前を持つ者のみが、正式に世界に記録される」というものだ。

縮めて「名前の法則」と呼ばれている。

いったいどういう法則なのか説明しよう。


この世界に初めから存在している者たちは、真の名前を皆持っている。

ところが僕のように、後から急に現れた存在は、たいてい名前がない。

コードネーム以外に、「祝福を受けた真の名前」が必要なのだ。

初めから真の名前を持っているものには当てはまらないのだが、後から来た者が名前を持つ場合、「自分がその名前の意味を本当に理解できる、絶対に忘れない名前」でないと真の名前としての効果を発揮しないようなのだ。


無論真の名前がなくとも生活はできる。

ただ、ずっと生きようと思うとひどく労力を使う。

なんといっても、記録されていないから、拠り所がないのと同じなのだ。

止まり木の止まることなく飛び続ける鳥、といえばわかりやすいだろうか。


さて、名前の祝福についてだが、これは正直誰がやっても構わない。

大切なのは、名前の重みと意味だ、そういうことなのだろう。


解説が長くなった。話を戻そう。


とにかく、僕には真の名前がまだない。

このままだと、エネルギーを使い果たして消滅してしまう。

それだけはなんとしても避けなければならない。

しかし生半可な気持ちで名前を自身につけても意味をなさない。

そのことは「エリカ」のコードネームで痛感した。


「今日は小テストらしいぜー、最悪」

「げっ、1限の現象学、また低い点数のやつ晒されてるー」


生徒たちの声で我に帰る。物思いに耽っているうちに、気付けば1限開始まで残り10分となっていた。


“名前また考える。今日も一日頑張るよ”

そうレイアさんに声をかけると、レイアさんは静かに微笑んだ。


“あぁ、そうだな。すぐに決めれるものじゃないだろうからな。

今日も見張をしておこう。安心して授業を受けてくるといい。”

地味に笑顔がかっこよくてパンチを喰らったが不可抗力だ。無自覚イケメンの笑顔って怖い。


“わ、私も今日は授業聞く、数理学は任せて”

サザンカも反応してきた。僕が数理学苦手なのはバレバレだ。仕方ない。


“みんなありがと!とりあえず、今日も臨機応変に行こう!”


念話を終了させ、前を向く。

ーー9時だ。現象学の教授が授業開始を告げる。


僕らの一日は、まだ始まったばかりだ。

お久しぶりです。放置しすぎました。すみません。

次は夕方まで時が飛びます。時間が少しできたので、ちょっとずつ更新していきます。

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