Episode.000
「君には、あの世界で、とある劇を演じてもらう。
その代わりに、どこへでも飛び立つ能力を授けよう。」
謎の交換条件と共に何者かに呼び出され、世界へ降り立つ羽目になったのは、一体何年前の話だったろうか。
僕はエリカ。
この世界で、とある人間の身体を借りて、ちょっとした劇を演じることになった生き物だ。
僕自身の職業というものはないのだが、あえていうなら役者といったところだろうか?
さて、身体の本来の持ち主であるこの人間の魂は、どこにでもいそうな、ちょっぴり堕落した大学生だ。
この魂のことを、ここではサザンカとでも呼んでおくことにしよう。
最初はサザンカのことは、なんてよくわからないやつだと思った。
彼女の意味不明な願いのせいで呼び出されたと知った時は戸惑ったものだ。
まぁ彼女自身も、願っただけでまさか叶うとは思ってもいなかったらしいから、お互い被害者ということなのかもしれない。ーーいや、彼女が被害者というのはしっくりこない。やっぱりなしだ。僕だけが被害者だと思いたい。
とまぁ、最初はいろいろお互い思うところがあった訳だが、慣れというものは恐ろしい。
今では彼女の意味不明な言動も、すっかり生活の一部となってしまった。
それは向こうも同じようだが。それにしても、僕ほどにわかりやすいやつはいないはずだが…
人間というものはやはりわからない。
と、いろいろ考えているうちに、目覚ましが鳴った。もうそんな時間か。
“んーまだ、眠い…”
サザンカはまだ眠そうだ。それもそのはず、今はまだ朝の6時。
昨日?いや、今日の1時まで、課題とゲームに明け暮れていた彼女にとって、この時間はまだ「深夜」だ。
“起きるよ、もう…とりあえず目を開けて起き上がってよ。
そこまでしてくれたらあとは僕がやってあげるんだから。”
まだ眠そうな彼女を無理やり起こし、1日が始まる。
これは、サザンカと、彼女に振り回されながら生活する、ある役者のお話。
はじめまして、ちょこあめと申します。
今のところこの物語のエンディングなどは決めておりません。
だらだらと「彼らの日常」を綴っていく予定です。よろしくお願いします。