6話 週末の予定
毎日の生活が少し憂鬱になった。
今週末に父の再婚相手に会うことになったのは
まだいい。
だが、それよりも一番鬱陶しいのは……。
「♪♪♪〜」
「美咲、お前洗濯物脱ぎっぱなしにするなって何
度言えば分かるんだ?」
「あっ、そうだったー、私とした事が……」
「何が私とした事がだよっ!まずそのだらしない
姿も直せよ!」
そうなのだ。
まず風呂から出てTシャツ一枚でキッチンをうろ
うろして飲み物を持って部屋に上がる。
この毎日の習慣をなんとかさせないといけなかっ
たのだ。
もしかしたら他人で、しかも男が一緒に住むとな
ると危ないかもしれない。
いくら家族といえど、結局は血が繋がっていない
から襲われないとも限らないのだ。
「そんなんだとイケメンなお兄ちゃんに嫌われる
ぞ?」
「えぇっ!!」
今なら一番効果的な言葉を選ぶ。
歩夢はまだ片付けを終えたばかりで、やっと風呂
の番だった。
大体は歩夢が最後に入るとそのまま掃除となる。
朝にはお寝坊な妹のせいで洗濯と食事で手一杯だ
ったからだ。
「歩夢、悪いな。風呂は俺がやるぞ?」
「いいよ、明日も仕事あるんでしょ?早く寝たら?」
「あぁ……」
父を部屋に追い返して、風呂へと向かう。
これでは口煩い母親ではないか?
この前妹の美咲に言われた事が引っかかる。
「僕だって好きでやってるわけじゃないのに……」
やらなくてもいいなら、やりたくない。
普通の高校生らしく、勉強に追われる受験生なの
だ。
「はぁ〜…母さんか………」
改めて、母親になる人の事を思うと、優しい人だ
ったらいいなと考えてしまう。
自分の息子も、自分たちも同じように接してくれ
るだろうか?
大学生と言っていたから、今は就職活動中だろう。
歩夢が受験生で、美咲は来年受験だ。
これは意外と大変な時期かもしれなかった。
学校に行っていても、少し気が滅入る。
「どうしたんだ?なにかあったのか?」
「うん、ちょっとね…父さんが再婚するかもって
…週末に相手の女性に会うんだけど……」
「お、めでたいじゃん!嫌なのか?」
「そうじゃないけど……向こうにも連れ子がいて
さ〜」
「女か?」
「残念、男だよ。イケメンだって父さんが言って
たせいで美咲のやつが毎日騒いでるんだよ」
「あぁ〜あるほどな〜。イケメン兄ちゃんとイチャ
イチャされたらかなわないもんな〜」
綾野からしたら面白いのだろう。
だが、こちらからしたら全く面白くもない。
浮かれた二人を諌めるこっちの身にもなって欲し
いものだった。
「週末写メしてこいよ!」
「嫌だよ…」
「いいじゃん、面白そうだし。家族写真は大事
だろ?」
「まだ家族になるとは言ってないだろ?会ってみ
ないと」
そう、会ってみないと分からないのだった。
そうして考えているうちにあっという間に週末に
なってしまったのだった。