45話 文化祭の出し物
夏休みが終われば実力試験があって、そのあとに
文化祭がある。
三年生は受験があるものの、恋愛するチャンスで
もあった。
文化祭のフィナーレで告白タイムというものが儲
けられており、この日だけは勉強を忘れて楽しん
で欲しいという教師一同からの生徒へのプレゼン
トタイムでもある。
ただし、恋愛にうつつを抜かすなよと、終わった
らすぐに試験結果が出るのだ。
夏休みの頑張りがみのるかどうかもここで決まる。
それらか、推薦枠の最後のチャンスでもある。
一応、二年の成績と、一学期の成績を考慮してから
プラスで一枠だけ開けてあるところに入るチャンス
でもあった。
歩夢はそもそも推薦枠を貰えるほど上位でもないの
で順位が二桁では推薦枠に届かない。
今回の試験は結構自信がある。
あれだけ毎日郁也兄さんに見てもらっていて、順位
が上がっていないはずはなかった。
そう思いながら、文化祭の準備に取り掛かっていた。
クラス毎に出し物があって、ちょうど歩夢のクラス
は劇になった。
練習時間も少ない中の劇とあってか、セリフもぎゅ
っと搾られ、最低限だけになっている。
それでも肝心な台詞はどうしてもいるのだった。
「それにしても女子はこういうの好きだよな〜」
「うん…そうだね………」
配役選定になってから嫌な予感しかしなかった。
女子の提案で男女逆転劇となったからだ。
シンデレラをやると決まってから、ロミオ役に、
クラスで男前な女子が立候補した。
では、灰被り姫は?
誰もがやりたくない役だった。
ドレスでの社交ダンス。
常に舞台上にいる役なので、誰もやりたくないと、
なったのであみだくじになった。
その結果がコレだ。
「水城……どんまい!」
「どんまいって……絶対笑い物にしたいだけだ
ろ?」
まさしく平凡な顔立ちのせいか美人とも言えず、
逆に似合わないとも言えなかった。
何もかもが中途半端なのだ。
「まぁ、運動部の奴らよりは断然いいと思うぜ?」
綾野が親指を立てて言うと、ため息しか出ない。
「それって……褒めてないでしょ?」
「うん、まーな」
こう言うところが素直過ぎて嫌になる。
それでも嘘は言っていない分マシだと思える。
外部の人間も来るので、出来ればもっとまともな
役がよかった。
「じゃ〜、セリフだけ通しで行くよ〜」
女子の仕切りでワイワイとしながらも始まったの
だった。