43話 説教
無断での外泊から帰って来てからは、父親の説教
があった。
たまに美咲も無断で外泊する事があるのに、歩夢
は初めてだったせいか、説教が長く感じる。
「歩夢、分かったか?外泊するときはだな〜しっ
かり連絡を入れてだな〜」
「……」
「もう、その辺にしたら?この年齢で初めての外
泊なんでしょ?」
まどかさんの言葉に父親の幸樹も渋々言葉を濁す。
「そうだな……それまで何もなかったんだ、今回
はこのくらいにするか……だがな、郁也くんが
凄く心配してたんだぞ?兄弟がこんなに打ち解
けるなんてなぁ〜。俺は嬉しいぞ」
「そうね、あんなに毎日ほっつき歩いていた郁也
が真面目に勉強を見て、兄弟の心配をするなん
て…なんだか信じられないわ」
「それでだ、歩夢……どこに泊まってたんだ?」
『この年だし、やっぱり彼女でもできたか?』
「そんな事を聞くもんじゃないわ、ね〜歩夢くん」
『この年なら彼女がいてもおかしくないわね。郁
也のように男女構わず手を出さないといいけど』
昔、息子が家に男を連れ込んで母親と鉢合わせし
た思い出があるらしく、まどかさんはあまり深く
追求してこなかった。
興味津々の父親には困ったものだった。
「綾野ん家だよ……」
「綾野くんか、仲がいいもんな〜。向こうのご両
親にもちゃんと挨拶してきたか?」
「今は旅行中だって…もういいでしょ……」
そういうと部屋に戻った。
昼前なのに、どっと疲れた気がする。
コンコンッ。
「歩夢、いいか?」
「はーい」
部屋の外から聞こえてくる声に返事を返すと、声
の主が入ってくる。
「別に入っていいなんて言ってないんですけど…」
「説教されたみたいじゃん?」
「そうですね…それで!郁也兄さんは慰めにでも
来たの?」
「まぁ、そんなところだ。」
かってにずかずかと入って来ると歩夢の横に座っ
てくる。
ベッドが軋み、揺れるが無視して横になる。
「今日からまた勉強手伝うぞ?」
『そんな無防備だと困るんだけどなぁ〜。シャツ
一枚だと捲るだけでいいんだよな〜、あ、臍が
見えてるっ!』
パッとシャツを引っ張ると丸まった。
「そう言えば、全部聞こえてるんだっけ……気を
つけねーと嫌われるな…こりゃ」
「気持ち悪く……ないの?」
「別に?便利でいいじゃん。相手の思ってる事が
わかるっっていいじゃん。考えるだけで通じる
んだろ?俺はいいと思うぞ?」
「……」
のそっと起き上がると、机の方に移動した。
その横にちゃっかり郁也が座る。
勉強している間は大体が横で眺めながら見ている
事が多い。
手が止まると、そこの問題のヒントを出す感じだ
った。
あとは、区切り毎に頭を撫でられたり、腰や膝、
太腿を撫でられる事もあったのだった。