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4話 他人からの評価

水城歩夢は放課後、担任に呼び出しを受けていた。


「はぁ〜……」


「どうした?今朝の事か?」


「あぁ、帰りに呼び出しだってさ…ちょっと遅刻

 しただけなのになぁ〜」


「そうだよな〜、俺もよく遅刻するけど水城は一

 発で呼び出しかよ?」


「だよな…………」


理由はなんとなく分かっている。

きっと警察から学校に連絡でも言ったのだろう。


あまり目立つ事はしたくなかった。

なのに……。


それでも朝の事は後悔などしていない。

誰かが困っていて、その声が自分にしか聞こえな

いとなればそれを放かっては置けなかったからだ。


憂鬱な気持ちで職員室へと行くとそのまま担任に

手招きされるように校長室へ招かれたのだった。


「あの……今日の遅刻は……」


「よくやってくれたよ!我が校の誇りだよ!痴漢

 を撃退したと聞いたぞ?」


「あ、それですか……ですが、本当に撃退したの

 は僕ではなく別の方で……」


「そんな事はどうでもいいんだよ。うちの生徒が

 率先して撃退したと言う事が大事なんだよ!」

『まさか警察から電話が来た時は驚いたが、実に

 いい事だ学級新聞にでも取り上げさせればいい

 だろう。』


「あの…僕は目立ちたくないので、誰にも言わな

 いで欲しいんです」


「それはなぜかな?いい事をしたんだぞ?」

『チッ、せっかく大々的に褒めてやると言うのに』


「いえ、あの……そう言うのってあまり騒がない

 方がいいと思うんです。被害者もきっと騒がれ

 たくないと思うから」


一応説得すると、匿名で生徒が痴漢撃退したと言

う事を学級新聞に載せることで手を打ったのだっ

た。


下駄箱前で待っててくれた綾野が、話しかけてく

る。


「よう!どうだった?」


「うん、ちょっと怒られた感じ?」


「マジかー!いつも真面目なのにな〜。そうだ!

 このままカラオケ行かね?元気のない水城に今

 日は俺が奢るぞ!」


気を利かせてくれるこの友人にはいつも励まされ

ている気がする。


裏表がない分、一緒にいて楽しいのだ。


「1時間だけ……行こっかな」


「決まりだな!行こうぜ!」


カラオケが終わると、買い物をしてから家に帰っ

てきた。

すぐに2階へと上がると洗濯物を取り入れて畳む

とそのまま風呂場に置いておく。


先程ラインに父親から早く帰ると返信があった。


米を炊いて、そのままおかずを作り始める。

ちょうど帰ってきた妹の美咲がキッチンに顔を出

した。


「ただいま〜、今日のご飯はな〜に?お腹ぺこぺ

 こだよぉ〜」


「すぐに出来るから手を洗ってから皿出して」


「なんかお兄ちゃんってお母さんみたい〜」


その言葉にドンッとフライパンを置くと、すぐに

手を洗いに洗面所へと向かっていった。


母親さえいれば……歩夢がこんな事しなくてもい

いはずだった。


受験生でありながら、家の家事までこなしていて

は息をつく暇もない。


こんな事好きでやっているわけではない。

勉強だってわからない事だって多いのだ。


本当なら塾にだって行きたいし、もっと上の大学

へも行きたい。

でも、そんな時間さえもないのだった。










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