39話 夜中の訪問者
歩夢の友人の家は意外と近かった。
2階の電気はまだついている。
起きているという事だった。
ピンポーン。
インターホンを鳴らすと奥から声がしたのだった。
数時間前。
「ベッドの下に布団敷くから手伝ってくれ」
「うん、いきなりでごめん」
「別にいいって、家に帰り辛い理由があんだろ?
俺も今は一人だし、平気、平気」
『家で何かあったかな?まぁ、別に聞かねーでも
いっか、言いたければいうだろうし』
気が楽な理由が、詮索しないと追う事と、物事を
単純にしか考えないという事だった。
「風呂行ってこいよ。疲れが取れるぞ?」
「ありがとう。お風呂先に借りるね」
「着替えは適当に出しておくから」
「うん…」
歩夢は何かに秀でたものがあるわけでもない。
平凡で、スポーツもからっきしだし、全部が平均
だった。
唯一勉強だけはある程度はできるが、一人でやる
には限界がある。
郁也が勉強を見てくれると言った時は、本当に嬉
しかったのだ。
だけど、下心があると思うとどうにも素直になれ
ない。
あの整った顔は誰が見ても惚れ惚れする。
だからこそ、気に入らない。
見たくないほど、嫌いなのだ。
風呂から出ると、布団に潜り込む。
久しぶりに話をしながら眠りにつくはずだった。
そこへ、いきなりのインターホンが鳴った。
さすがにこんな深夜に訪問してくる人がいるなど
怪し過ぎる。
「こんな時間に来客?」
「誰だよ…今って0時過ぎてんじゃん。全くこん
な時間に迷惑だっつーの!」
そう言いながらも、降りていく。
それに続くように歩夢も玄関へと降りてきた。
「はいはーい。誰ですか〜?」
開いたドアの向こうにいた郁也を見て、息を飲
んだ。
「夜分にすまない。歩夢はここに……歩夢っ!」
郁也と目が合った瞬間、嬉しそうに見つめてく
るのがどうにも嫌で視線を逸らした。
「歩夢、無事でよかった。おいで」
「あのさ、悪いんだけど、あんた誰?不審者で
通報してもいいけど?」
綾野はぶっきらぼうにいうと、外に出てドアを
閉めた。
「俺は……歩夢の兄だ」
「へぇ〜、それでなに?」
「歩夢に会わせて欲しい。」
「で?こんな時間に?迷惑だって思わない?」
「それは……帰ってこない歩夢が心配で…昼の事
もあるし何かあったらと思うと……」
家に泊めて欲しいというくらいだ。
ただの兄弟喧嘩というわけではないだろう。
この反応からするに、本気で心配していたのだろ
う。
なら、昼間に何があったのか?
男子高校生を心配するような出来事などよほどの
事だろう。
綾野だって目を見れば、わかる。
信用していいのか、否かくらいの判断くらいは付
くつもりだった。
「ちっ……入れよ。話があるんだろ。ただし、変
な事したら追い出すからなっ!」
そういうと、中に招き入れたのだった。