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35話 心の温度

帰るまで遠巻きに見て来る人がいる。


それは郁也の親衛隊だと教えてくれた。


「そうそう、安心していいよ。彼らは何もしない

 から。逆に君のことを知りたがってるんだぁ〜

 郁也がいくら兄弟といえどあんな顔をするなん

 て滅多にないからね〜」


「あんな顔とは?」


「知らなかったの?郁也はね、いつも怠そうな顔

 をするんだ。つまらないとでもいうような……

 郁也に夢中になる子には全く興味を示さない。

 だから簡単に付き合えるし、簡単に別れれるん

 だよ」


「そうでしょうね………あんな優柔不断そうな人

 を好きになるなんてどうかしている…」


「歩夢くん、よく言えるね〜。でも、みんなあの

 顔に惹かれるんだよ。本当に君は面白いよ、い

 っそ俺の恋人にならない?俺も、男でも女でも

 イケるからさ」

『本当に素直な子だな〜、郁也には悪いけど諦め

 る為に俺が人肌脱ぐかな〜』


「…?」


その言葉に疑問を持つ。

どっちでもイケる?


それはどういう意味だろう。


考えていると、目の前に影が落ちる。


「そろそろ返してくれるか?」


「おっ、郁也じゃん。向こうはいいのか?」


「あぁ、話はつけた。もう二度と歩夢に手は出さ

 せない。だから………安心していいからな…」


「水戸先輩、僕これ見ておきたいです」


「ぷぷっーーーー。マジで嫌われたな?いいよ。

 行こっか」


全く郁也を見向きもしない歩夢の態度に、郁也の

苛立ちが募る。


それもこれも、全部奴らのせいだ。

後をつけていた連中を睨みつけると、怒りに任せ

て近くにあったゴミ箱を蹴り飛ばしたのだった。




実はさっき、歩夢を水戸が連れ出してから床に

転がったモノを蹴り飛ばすとその上に腰掛けた。


「で?この落とし前どうつけるの?」


「そ、それは……これは姫宮が言ったことよ?私

 達は別に…」


「そうよ、私も関係ないわ」


「俺もだ、姫宮が言うから仕方なく……」


「そうかお前らは誰かのせいにすればいいと思っ

 てるのか?歩夢が怖い思いをしたのも、自分に

 は関係ないと?」


「……」


その場にいる全員が口を閉ざした。

そんな中、一人だけは負けじと口を開いた。


「待ってよ。私は知らなかったのよ。ほら、途中

 で止めよとしたのよ?」


「なら、なんで歩夢に拒絶されたんだ?違うんだ

 ろう?率先してたんだろ?それと、姫宮、お前

 は今後歩夢の目に付くなよ?ここに来年入学し

 てもお前らは一切顔を出すな!言いな?もし破

 ったら……」


「すみませんでした。」


「ごめんなさい。本当にもうしないわ」


「たかが弟だろ?なんでそんなにこだわるんだよ!

 山尾先輩!僕の方が絶対に綺麗だし、満足させら

 れるのに……どうして」


「どうしてかって?歩夢は特別なんだよ。俺を拒絶

 してもいい。どうしても振り向かせたい存在んな

 だよ。兄弟でもいいから、俺が唯一欲しい存在だ。

 それが理解できないとはな」


きっとどんなに言っても伝わらないだろう。

心が温かくなる存在がいるという事がこんなに幸せ

なのだと思えるとは知らなかった。


興味から始まった仲だけど。

それでも、また出会えてよかったと思う。


そうして水戸が案内した医務室へと来たのだった。

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