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33話 迷子

歩夢はいく当てもなくただ飛び出したせいで、今

どこにいるのかわからなくなっていた。


いわゆる迷子というやつだ。


「やばいなぁ〜、ここどこだろ……」


トイレと言って出てきたけど、トイレの位置が分

からない。


さっき案内図を貰おうとしたが、郁也が要らない

と突っぱねたせいでこうなったのだ。


ここに来て郁也の隣にいるだけで悪意ある声が聞

こえてきていて、嫌な感情が流れ込む。


気持ち悪い…


こんなところで4年間も過ごせるのかな……


不安でしかなかった。

あの感情はよく知っている。

嫉妬だ。

人を好きになって思いやる事の逆の感情。


好きな人に近づく相手を妬み、妬く好意だ。

殺意混じりのこの感情だけはどうにも平気ではい

られなかった。


何もしていないのに、ここまで殺意の混じった感

情に晒されるのはどうしてだろう。


気分が悪い……吐きそっ……。


その場に蹲ると、吐き気がする。


「うっ……おえっ………」


「大丈夫ですか?気分悪いのかな?」


親切に声をかけて来る人がいた。


「大丈夫……ですっ…………」


「そう?顔色悪いね?休める場所に案内してあげ

 るよ?」

『こいつだな?さっき山尾先輩にべったりくっつ

 いていた奴、モブ顔のくせに生意気なんだよ』


整った顔立ちはとても綺麗で、郁也と遜色ないほ

どの美男子だった。


「あれ?本当に大丈夫?遠慮しないでよ。ねー君

 達。連れて行ってあげなよ?」


ガラッと教室のドアが開くと数人の男子と女子が

混じっていた。

強引に腕を掴まれるといつのまにか引きずられる

ように空き教室へと連れて来られた。


「ねぇ〜、私達が手を組む必要あった?」


「そう言わないでよ?最近山尾先輩とご無沙汰だ

 ったんでしょ?」

『お前みたいな尻軽女が先輩に気に入って貰える

 と思うなよ?』


「なら、この邪魔な虫を排除しておいた方が未来

 的に安泰じゃない?」

『お邪魔虫はどっちも排除しないとね。郁也は汚

 れたモノが一番嫌いなんだよね〜汚れて仕舞え

 ばいいよ』


「それもそうね。いい考えだわ。郁也ったら男に

 も手を出すんだもの、困っちゃうわ」

『こんな高校生に手を出すなんてね〜、可哀想に』


「貴方達はなんなんですか!」


「なに?震えちゃって〜、可愛い〜」


数人の女性が見ている中で、歩夢に指を立てると、

周りにいた見知らぬ男性が歩夢を掴むと床に押さ

えつけたのだった。


そして服に手をかけたのだった。

心を読むまでもない。


わかっていてもどうしようもない。

ただ恐怖に飲まれ目を瞑ったのだった。

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