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31話 素直に伝えます

歩夢は部屋に運んで貰うまで、ただじっと身動き

もせず我慢していた。


いっそ暴れて落とされてもいいから逃げたかった。

でも、口にした言葉よりも、耳に直接届いた声の

方に驚いて何も抵抗できなかった。


部屋についてやっとベッドに降ろされると、一安

心したのだった。


「横になるか?」


「別に……平気……ありがとう」


「うん、素直でいい子は好きだぞ」

『可愛い歩夢が俺は好きだ。愛してるよ』


「なにっ……を……」


いきなりの不意打ち的な言葉に動揺しないわけが

ない。

いきなり唇を重ねられると、腕を強く掴まれたの

だった。

一瞬の事だったせいか、固まってしまった歩夢を

味わうように舌を絡めてきた。


「ンッ……!」


「ご馳走様」

『今度は歩夢をもっと、味合わせてくれよ』


すぐにパッと離したが、さっきの衝撃が頭から離

れなかった。


「僕を……好き?だって、これはただ聞こえてく

 るだけの声で…」


実際はそうではないかもしれない。

ただ、自分はそう思っているだけで、勝手に解釈

しているだけなのではないだろうか?


歩夢には分からないでいた。

人の善悪はすぐに入れ替わる。


ましてや、人の感情はすぐに変わってしまう事の

方が多い。


負の感情を受けた言葉は歩夢にとってはストレス

でしかないのだ。


でも、好意的な感情はむず痒く、心が温かくなる。

それが自分に向けられた事がなかったせいか、余

計に不思議だったのだ。


それから毎日のように、勉強を教えにくる郁也に

は変化は見られなかった。


ただ、唯一変わった事といえば……。


「おはよう、歩夢。今日も可愛いよ?歩夢が可愛

 過ぎてキスしたくなっちゃうだろ?」

『あ、寝癖ついてる。可愛いなぁ〜、抱きしめた

 いし、色々な顔が見たいな〜、キスしたらどん

 な顔をするかな〜舌を絡めて、もっと激しく…』


「今日もよろしくお願いします」


声の内容が段々と怖くなっていく。


そして、最大の変化といえば好きだと口に出して

言われるようになった事だった。


「俺の言葉の返事はないのかな?薄情だな〜」


「はいはい。じゃ〜ここなんだけど…」


「大好きな歩夢くんの頼みなら聞きますか!」


そういうと頬にちゅっとキスをしてきた。

多分慌てるのを見て揶揄っているのだろうか?


どちらにしろ、この毎日のように言われる告白に

耐える必要があったのだった。

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