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28話 男同士だから。

一緒にお風呂でも入ろうと思って……。


その言葉を言うべきではなかったかもしれない。


郁也の声が怒涛の如く聞こえてくると不安になっ

てきた。


「そうだ、せっかくなら銭湯行かないか?」


「銭湯……そう言えば近くにあったような……」


「すぐ近くのパン屋の裏手にあっただろ?そこな

 ら広いし、こんな早い時間なら人も少ないだろ?」


確かに家の風呂よりも広々としていていいだろう。

それに何かされないか不安だったが、人の目がある

場所のが安心だった。


「そうだね、今から行こうか?」


「そうだな!すぐに準備するから待っててくれ」

『歩夢と裸の付き合いかぁ〜、まるで銭湯デート

 だな〜』


嬉しそうな声に、いたたまれなくなる。

実際、男の体を見れば迷う気持ちもなくなると思

って言った事だった。


なのに、こんなに期待されてしまうとは思いもよ

らなかった。


嬉しそうな顔で手を引かれて、今銭湯の前まで来

ていた。

早速お金を払ってロッカーの鍵をもらう。


脱衣所のロッカーに貴重品と服を入れて中へと入

った。


予想よりも大きく、広かった。


「うわぁ〜、小さい時以来だから、すっごく久し

 ぶりかも」


「そうか?身体を洗ってやるからここに座れよ」

『やっぱり服を脱ぐと肌白いし、ほっそいなぁ〜、

 恥ずかしいのか前隠しちゃって可愛いのが見え

 てるけど……やっぱり可愛い〜、触りたいなぁ〜

 ……いや、洗うついでに合法的に触れるんじゃ

 ないか?』


泡を立てると背中を洗う。

そして前へと手を伸ばしたところでタオルを

キャッチして奪い取った。


「後ろ向いて、洗ってあげるよ」


歩夢は無理矢理変わると、背中を洗い出した。


「あぁ、気持ちいいよ。ありがとう、歩夢」

『うわぁ〜、歩夢の指が俺の肌に触ってる〜

 〜〜。前も触って欲しいなぁ〜。いやいや、

 それはいかん、まだ早い……でもなぁ〜、

 やっぱりちっちゃなおっぱいも可愛いし、

 しゃぶったらどうなるかな〜』


歩夢の手が止まると、郁也が不思議そうな顔

で振り返ってきた。


「どうした?」


「あとは自分でやってよ!」


そう言うと、歩夢はすぐに洗い流してお湯に

入ったのだった。


なぜか機嫌が悪そうだった。

その理由を郁也は知るよしもない。


まさか、さっきまでの妄想がダダ漏れになっ

ているとは思いもしないだろう。


それでも、真っ直ぐでエロい事しか考えてい

ない郁也に呆れ果てるしかなかった。

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