26話 告白?
唐突に告白してしまった。
ちゃんと距離を詰めてから、景色のいい場所で言
うつもりだった。
なのに、なぜあの時言ってしまったのか?
郁也も慌てて訂正しようとしたが、言えなかった。
なぜなら、歩夢自身が何も気に留めていないから
だった。
「歩夢?あのさぁ〜さっきの事なだけど……」
『俺、さっき好きって言っちゃったよな…歩夢は
聞こえてなかったとか……?』
「何やってるの?帰るんでしょ?」
「あぁ、うん……そうだな」
『それとも……俺に興味すらないのか?』
「今日は疲れたから、部屋で休む事にすりよ…勝
手に入ってこないでよ?」
「あぁ、うん、わかった…」
全く気にも止められていない事に大きなショック
を感じたのだった。
大学でも、男女を問わず憧れの的だった。
だから、自分に気がないなんて考えもしなかった。
それも、半分勢いで出た言葉を完全にスルーされ
てしまったのだ。
こんな事ってあり得るのだろうか?
一番、あって欲しくない相手にこんな態度をされ
ては、流石に心が痛んだのだった。
家に帰るとそのまま歩夢の後を追うように部屋に
入ろうとして止められたのだった。
「ちょっと聞いてた?もう休みたいんだけど?」
「あ……そっか」
それを聞いて、隣の郁也の部屋へと戻った。
部屋に入ってからあまりにも静か過ぎて気になっ
てしまう。
隣の部屋には歩夢がいるのだ。
いっそ、お菓子でも持って部屋に行くべきか?
いや、さっきも入るなと念を押されたばかりだっ
た。
壁に耳を当ててみる。
全く音がしない。
「何してるんだろう……」
男が一人になりたい時と言えば一つしかない。
すぐさま自分の愛用品を手に持つと歩夢の部屋に
向かった。
「歩夢〜?」
そぉ〜っとドアを開けると中を覗いてみる。
本当に疲れていたのかベッドに横たわってか細い
寝息を立てていたのだった。
寝ていると本当に幼く見える。
「寝てれば可愛いのになぁ〜。俺さぁ〜これでも
モテるんだぞ?なんで歩夢だけ最初にあった時
と態度が変わらないんだよ……結構親切にして
るんだけどな〜」
本音が漏れる。
優しくすれば誰もが好きになってくれた。
そう言う存在なのだと郁也は思っていた。
自分が選ぶ側で、選ばれる側ではないのだと。
でも、ここに来て歩夢にだけはそれが通用しなか
った。
初めて郁也の方から気に入った子なのに、予想外
だった。
手の届きそうな距離にいるのに触れられないこの
気持ちがモヤモヤとして落ち着かない。
眠る歩夢の額にキスを落とすと部屋を出て行った。
「俺って結構チキンだったんだな……」
気に入ればすぐに手を出してきた。
だけど、今回ばっかりはそれが出来ずにいる。
もし、嫌われたら?
今の歩夢に拒絶されるのだけは、どうしても耐え
られなかったからだ。