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21話 鈍感な気持ち

郁也には昔から一緒にいる悪友がいる。


合コンなど、彼女を作りたくて活発に計画を立

てるのだが、叶った試しはない。


その主な理由が友人にあったからだった。


水戸晃、彼の友人はあのイケメンの山尾郁也だ

ったのだ。

呼んだ女子のほとんどの視線は彼に集まってし

まう。

結局、見向きもされないという始末だった。


逆に誘わなければいいと思うかもしれないが、

友人なのに誘ってないとなると、女子の集まり

が非常に悪いのだ。


「なぁ〜、本当に来ない気か?」


「あぁ、家庭教師の方が大事だ」


「へ〜、郁也がそこまでこだわる子ってどんな

 子よ?」


水戸としては気にならないはずもなかった。


「そういえば、今度のオープンキャンパスに連

 れてこようと思ってさ」


「はぁ?大学ここを選んでるのか?」


「あぁ、選考も俺と一緒なんだ。可愛いだろ?」


「おいおい、マジで本命か?」


水戸に言われた言葉に、少し考えると納得いっ

た気がした。


「そっか、すげー気になるって思ったけど。俺、

 好きなのかもな〜。いつも素っ気ない態度だし、

 キスしても反応薄いからさ〜」


「なんだよ、その逸材は!誰がお前を見てもそん

 な態度できるっていうんだよ?」


「ってわけだから、じゃーな?」


「おい、今度写真見せろよ?」


「やだね!減ったらどーすんだよ?」


「何が減るんだよ!ケチッ!」


まだ一緒に写った写真などない。

一応家族写真はいつかは撮ろうと言っていたが、

まだ行っていなかったのだった。


家に帰るともう歩夢は帰って来ていた。


「もういたんだな。遅れて悪いな」


「別に……平気」


確かに、顔は平凡で何か際立った特徴があるわけ

でもなかった。

それなのに、見ていると可愛いと思えるし、どう

しても触れたいし、キスもしたい。


この感情はいつも他者から言われる好きという事

なのだろうか?


実際誰かを好きになった事はないし、嫌いじゃな

ければそれでいい。

そんな関係ばかりだったせいで久しく忘れていた

かもしれない。


「今日はどっからやる?」

『やっぱり可愛いいな…キス……したいな…』


机に向かう歩夢を眺めながら、じっと視線を投げ 

かけていたのだった。


その事に気づいているのか、そわそわして落ち着

きがないように見える。


「どうしたんだ?」


「ひゃぅっ……べ、別に……何も」


後ろから肩をぎゅっと抱くと、驚いたのか、上擦

った声が漏れた。


それさえも愛おしく思えてくる。

家族だから。


もうそんな理由では治らない。

自分だけを見てほしい。

自分だけを愛して欲しい。


他の誰かを見るなんて、耐えられそうになかった。

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