20話 過去の教訓
他所で家庭教師を雇おうとすると結構お金がかかる。
時間も拘束されて結構不自由なのだ。
だが、それが家族となれば話は別だった。
その日の帰る時間をラインで入れて、あとは返
事を大学の講義の時間次第でどうにでも調整で
きた。
最近郁也の周りでも身体の関係を迫ってくる女
子も男子も減った気がする。
ある一定数はいるのだが、相手にしなくなった
のだ。
ある意味、本命ができたとさえ噂されたほどだ
った。
「おーい、郁也〜。今日コンパあるんだけど、
人数合わせで来ねーか?お持ち帰りありだぜ?」
「悪い、今日からしばらくは家庭教師する事にな
ってさ」
「おいおい、どこの家だよ?お前が家庭教師って
無理だろ?途中でベッドインして終わりだろ?」
「お前なぁー、その言い方は傷つくぞ?」
前にも同じような話があった。
後輩が家庭教師になって欲しいと言ってきて、結
局は家に行ってはヤって帰るだけで成績がガタ落
ちしたせいで親にもバレて母親のまどかさんが呼
び出されたのだった。
その子も、勉強など二の次だった。
ただ、郁也と二人っきりになりたい。
そんな考えだけで、申し込んだ家庭教師という依
頼だった。
「今度は大丈夫か?」
「女じゃないしな〜」
「男か…いや、男でもこの前抱いてくれって言っ
て来た姫宮はどうしたんだ?」
「あぁ、そういえばいたな〜。小綺麗な顔の子。
結構気持ちよかったけどさ〜、なんかしつこか
ったからな〜」
結局はまた女へと戻ったというわけだった。
次に付き合ってた彼女と取っ組み合いの喧嘩にな
って、それから見かけていない気がする。
姫宮倫。
一部では女より綺麗な男として噂で持ちきりにな
った。
それでも、やっぱり男には変わりなかった。
身体の付いているものは一緒だし、穴さえあれば
いいといえばいいのだが……。
そこまで本気にはなれなかった。
ま、いっか…
くらいの気持ちだった。
一回キスしたら、すぐにべったりになった。
そして寝たら、もう彼氏気取りだ。
「なんか思い込み激しかったもんな〜。今度の子
はどうなんだよ?」
「ん〜?俺に興味なさげかな……」
「はぁ?お前に興味ねーの?マジで言ってる?」
大きな声を荒げると、驚きを隠せないと言って来
た。
本当に失礼な奴だった。
「なんだよ?お前も抱いてやるって言ったら、抱
いて欲しいって思うのか?」
「それは……あんまり顔を近づけんな!その気に
なんだろ?/////」
どうにも、顔を近づけるだけでも、効果があるら
しい。
だが、歩夢には全く効果はなかった。
それどころか、わざと不意打ちでしたキスさえも
あまり反応がよくなかった。