19話 家庭教師
毎日のように、学校から帰って来た歩夢を見つけ
ると勉強を教える事にしたのだった。
「そういえば歩夢は将来どうするんだ?」
「う〜ん、今のままの成績だと手近な大学かな…
○○大とかかな……」
実は郁也は、歩夢が来る前に机の上に置いてあっ
た進路用紙を覗き見ていたのだ。
それがなんと郁也のいる大学だった。
成績は悪くはないが、一部だけ苦手な教科が平均
点ギリギリだった。
これでは、多分厳しいと言わざるを得ない。
夏休み中によっぽど頑張れば、一応狙える圏内に
入りそうではあったが、それはちゃんと家庭教師
をつけた場合だった。
今の歩夢には難しい状況だ。
「もしかして、○○○大学狙ってる?」
『さっき進路用紙見ちゃったなんて言えないしな』
「……別に、今の僕なんかで行けるわけないし…」
「そんな事はないぞ、俺が教える。本当は家庭教
師でもつけれればいいが、そんなの無理だし、
夏休み頑張れば絶対大丈夫だって!俺が保証す
る!現に俺が通ってる大学だし」
「えっ……あっ……そっか…」
思い返すと確かに紹介の時に言っていた気がした。
「でも、毎日って無理なんじゃ…」
「大丈夫だって、歩夢がやる気があるなら、行け
るよ!それに夏休み中にオープンキャンパスあ
るし、一回来てみないか?」
『二人っきりでデート……いいじゃん。』
「うん…それは気になりはするけど……」
心の方の声が気になって素直に頷けなかった。
「考えさせて…」
「考えなくてもいいだろ?俺が教える。絶対に歩
夢を受からせるからさっ!」
どうしてこんなによくしてくれるのだろう。
歩夢にはどうしても、郁也の気持ちがわからなか
った。
「な?歩夢なら真面目だし、努力家だから頑張れ
ば行けるよ。俺が保証するし。しっかり面倒見
るからさ」
『毎日勉強見れば側にいれるじゃん。俺を好きに
なって貰う絶好のチャンスだろ!逃してたまる
かよ』
家族になった事だし、仲良くなりたかったのだろ
うか?
前にいきなり不意打ちのようなキスからどうにも
距離を置かれてしまっている。
「それじゃ……お願いします」
「おっけー、任せろよ。明日から毎日やろうな!
場所は俺の部屋でいいか?それとも歩夢の部屋
にするか?」
「別にどちらでも……」
「なら、歩夢の部屋でやるか!」
『いきなり部屋に連れ込むのもな〜。まずは仲良
くならないとな』
「あ……いえ、キッチンで大丈夫です」
こうして、明日から歩夢の勉強を見てくれる事に
なったのだった。