13話 受験生だから
降りる駅に来ると、なぜか郁也も一緒に降りて来
た。
「なんでここで降りるんですか?」
「あぁ、ちょっと気になってね。歩夢はここでい
いの?もう一個先じゃないの?」
「ここであってます。あの時は咄嗟に乗り込んで、
降りれなくなっただけですから…」
少し考えると、郁也は不思議そうな顔で見て来た。
「それって、あの子を助ける為に乗り込んだって
事?」
「……」
「見ず知らずの他人なのに?」
「……別にいいでしょ?結局は貴方に助けられま
したけどね」
そういうと、そのまま駅を出て学校へと向かった。
流石にそこまではついて来なかった。
なぜか興味を持たれているのはわかる。
それがどういった感情なのかはわからない。
ただの面白半分なのか。それとも、ただ知りたい
だけなのか。
結局、何もわからないまま、学校へとついたのだ
った。
「お!水城〜!新しい家族はどうだった?」
「あぁ、美咲がべったりだよ。顔はいいけど……
性格はどうかな〜」
「なんだよ、お母ちゃんはどうよ?美人?」
「普通じゃないか?そんなの興味ないし。」
綾野は人の家庭の変化に興味津々だった。
朝、美咲を起こさなかったが、どうなったのだろ
う?
まどかさんが起こしに行ったか、それとも父さん
が行ったか…
どちらにしろ、歩夢にはもう関係ない。
ずっと世話を焼いて来たのに、あんな言い方され
るのは心外だった。
それと、部屋に勝手に入るのも嫌だった。
妹の部屋に入るのだって、朝起きて来ないから仕
方なく起こしに行っているのであって、時間がな
いのにわざわざ、面倒なことを好きでしているわ
けではない。
なんでも歩夢に任せるだけで、一向にやろうとし
ない美咲にはずっと腹も立っていた。
すると昼頃、ラインにメッセージが入っていた。
『お兄ちゃんのバカ!なんで起こしてくれなかっ
たのよぉーーー遅刻したじゃん!お昼だってな
かったんだよ!』
それもそうだろう。
わざわざ弁当を作るわけがない。
もう、母親がわりのまどかさんも来たことだし、
自分の為に勉強をする時間をもっと持ちたかった。
「そういえばさ、学年順位上位は推薦枠取れるん
だろ?いいよな〜、水城って順位いくつだっけ
〜?絶対にいいだろ?」
「別に普通だよ。それより、綾野は自分の心配し
なくていいのか?中間での成績も評価に入るん
だろ?」
「あぁぁーーー!そうだった!」
もうすぐ中間試験がある。
夏休み前までにはどこの大学へ行くか、就職する
かを出さないといけない。
これが最終締め切りだろう。
本当は行きたいところはあるが……少し成績が心
許ない。
やっぱり一人でやるには限界がある。
今更足掻いても仕方ないかもしれないが、夏休み
は大きな節目でもあった。
ここでの努力で案外変わるといってもいいのだ。
夏休みが終われば文化祭でお祭り騒ぎとなる。
あとはもう受験が目の前だった。