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第五話 抜け道のドワール屋敷


王城までの秘密の抜け道のある屋敷『ドワール屋敷』に辿り着いた僕たちは、


「ここだ。ドワール屋敷。

ここに例の抜け道があって、地下を通り王城の地下に直で忍び込む。行くぞ......!」


「ああ、案内は任せるぞ、バマウ......!」


僕らは屋敷の内部にある隠された床の扉を開けると、ポタポタと水の滴る音がこだまする薄暗い通路を通る。

そして僕らはあらかた進んだその先で鉄扉のあるポイントに差し掛かる。


僕らはその鉄扉を開けようと扉に手を置く。

するとその瞬間、何やら悪寒のようなものが手のひらから背筋を伝うのを感じた。


「なんだ、この嫌な予感......!」


「獣の唸り声......間違いない、これは魔物の声だ......!」


僕らは意を決して扉を押し出す。

鉄扉を潜ったその先には、広場のように広い地下空洞があり、そしてその中央にここは自分の縄張りだと言わんばかりに一匹の魔物が座り込み、眠りについていた。


「魔物......四つ首の犬か......!」


「まずい、コイツは鼻が効くタイプの魔物だ!

目覚めるぞ!」


魔物はグルルルと大きくあくびをし背筋を伸ばす。

そして僕らの臭いを嗅ぎ取ったのか、寝起きの目をギョロリと僕らに覗かせて「ガァァアアア!」と声高に咆哮した。


「闇を纏いし、魔物......コイツ、強い......!」


「首が長い犬だな。

さしずめ麒麟みたいなものか」


「麒麟はこんな化け物にはならねえよ」


「とりあえず退けよう! この化け物を残しておけば帰り道で厄介になる。確実に処理するぞ!」


「ガァァアアア!!!」


僕らは巨大な怪物に立ち向かう。

四人で連携し、敵を引きつけ首を分散させつつ目や鼻を集中的に攻撃。

これにより魔物の優れた探知能力を奪い、徐々に消耗させていく。


そして神の松明の力を使い、魔物を炎で焼き尽くすと魔物の全身を覆う闇が消滅し、魔物は一匹の狼に変わった。


「よし、ここまで弱らせればもはや敵なしだ。

結構な時間を浪費した。王城へ向かうぞ!」


僕らは魔物を倒した後、長く真っ直ぐな通路をひたすらに突き進む。

そして僕らはいよいよムジール王のいる城『ムジール王城』の地下に辿り着くこととなった。


「ここだ。ムジール王城の真下だ」


「待って、みんな」


「どうした、アーク?」


「僕、さっきの、戦いで、怪我、した。

だから、みんな、先に、行って」


「そうか......確かに足を引きずっていたもんな。

わかった。じゃあ僕がアークの様子を見ておく。

だからバマウとアシヌの二人は先に王城に入っててくれ」


「わかった。じゃあ二人はここで待機しててくれ」


僕は城内の案内役であるバマウを引き連れると、アークとヌミシーを地下に待機させてそのまま城の中に潜入。

すると、城内は何やら騒がしく、流石の僕らでも違和感を感じていた。


「なんだ、この妙な騒ぎは......?

城内の兵たちの様子が慌ただしいぞ」


僕らは周囲にいる兵たちに壁沿いで聞き耳を立てる。

彼らは明らかに突然の何かによって動揺し、とある場所に向かわされているようだった。


「どうやら、例の反逆分子の暴動が起こっているようだ。

これは好機だ。

慌ただしい今こそ侵入の時だ!」


僕らは静かにドアを開き、廊下に兵士たちがいないことを確認するとすぐにムジール王のいる玉座に向かう。

バマウは寸分の狂いもなく、正確な足取りで僕を玉座へ導いていく。

そして玉座の間の手前にいる兵士たちを不意打ちで気絶させると、僕らはとうとうムジール王のいる玉座に辿り着いた。


「ここだ、アシヌ。

ここからは王国最強の精鋭がこちらに牙を向く。

気を引き締めて行くぞ!」


「ああ!」


僕らは目の前の扉を開く。

そして正義の暴動を引き起こし、ムジール王国を力で支配する、そのムジールの王と僕らは対面したのだった。


ーーーー


「アーク、足の怪我は大丈夫か?」


「うん、怪我、休めば、治る」


「じゃあ僕は彼らの様子を見に行くから、そこで待機しててくれ」


「うん、わかった」


僕はアークを置いて城内の様子を見に行く。

アシヌたちが心配なのもあるが、妙に城内がソワソワしてるのがわかる。

何か騒ぎが起きているような、そんなざわめきを感じずにはいられない。


そして五分ほどして再度地下の入り口付近に戻る。

するとそこにいたはずのアークの姿が見当たらなかった。

僕は何事かと思って通路を覗き、バタバタと足音が聞こえたのでもう一度城内に侵入すると、そこには城の衛兵と話しているアークの姿があった。


「アーク......!? アイツ、何をやっているんだ!?」


僕は嫌な予感がした。

衛兵と話しているアークの顔はどこか邪悪に満ちた顔色をしていた。


「アイツ、まさか......!」


僕は急いで城内の倉庫を目指す。

ここにいれば、奴の密告を受けることになる。

間違いない。アークは裏切り者だ。

急いで彼らに伝えなきゃ!


僕はアークらに見つからないように遠回りに廊下を通過する。

その結果、僕は王城の保管庫周辺まで追いやられることとなった。


「城の兵たちが何かを探してる......!

間違いない、アイツが密告しやがったんだ!

クソッ、逃げる場所がない。

倉庫......クソッ、あそこしかないか!」


僕は急いで倉庫に駆け込む。

ハァ、ハァ、と息を切らし、僕は王城の保管庫の中でとある物を見つける。


「ここは王城の宝物がある場所だよな......すごい数の金銀財宝だ。ん......? あれは?」


僕が手に取った物、自然と引き寄せられるように手にしたその王冠には僕の運命を変える力が秘められていた。


「ギンマの、宝冠!」


ーー


ムジール王ユーゴン。

かつて世界を震撼させる『正義の暴兵』を派遣し一時代を築いてきた歴史に名を残す暴君。

しかしその確固たる実力と狡猾さから、誰もその政権を崩すことはできず、『巨人震撼を食い止めた』という実績から彼は英雄視をされるようになる。


彼の偉大なる実績は彼を次の王座へ押し上げる者たちを次々と増やしていったが、彼の凶暴な野心はムジール王国を闇へと誘った。


新たな王位を継承し、ユーゴンに『七人の使者』と『正義の剣ルディーサイオ』を贈呈したムジールの王は、家族もろとも血筋の全てを処刑される。


そして新たに王位に就いたユーゴンは七人の使者を『神の偶数』と呼び、正義の暴兵とともに最強の軍事国家を築き上げることに専念。

実に四十年にも及ぶ長期の間、政権を保持し続けてきたのである。


「ふはは、俺はつくづく悪運には縁がある。

正義の剣ルディーサイオ、そして七人の神の使者、この二つを手に入れればもはや王族どもに用はない。

これからは、俺が全てを支配する......!」


ユーゴンは全てを手にしほくそ笑む。

そして最高の軍事力を手にしたユーゴンは、世界中で余興となる『正義の暴動』を引き起こし、兵を送り、財を奪う。

そんな世界最悪の暴君として、彼は人知れず多くの反逆分子を生み出していた。


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