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第四話 王都への侵入者


◎世界解説その一

この世界は『東西南北』に代わり『海天太冥かいてんたいめい』と呼ばれる四つの星の名を冠した方角が存在している。

そしてそれぞれ、『東→海』『西→天』『南→太』『北→冥』に該当している。


ーーーーーー



森の駐屯地で三人の仲間を引き入れることに成功した僕は、次の舞台であるムジール王国に向けて足を運んでいた。


「ヌミシー、バマウ、アーク。

三人に少し聞いておきたいことがあるんだが、いいか?」


「なんだ、聞きたいことって?」


「僕らは今からムジール王国国王を打倒するという目標を掲げて乗り込むわけだけど、国の規模だったり王城へ侵入するルートがわからない。

それについて知ってる情報を話してはくれないか?」


「そういうことなら俺バマウに任せてくれ」


そう言うとバマウは懐から地図を広げ、赤いペンで円のマークを書き記した。


「ここがおそらく現在地、その冥部(北部)方面に広がるこれがムジール王国だ。

ムジール王国は巨大な壁に囲まれた最強の軍事国家の一角で、国民以外が無断で侵入すれば問答無用で捕獲命令が発令される。

ゆえに侵入する時は、特にアンタ、アシヌの身柄がバレないように細心の注意を払わなくてはならねえ」


「大変な国だな。

国に侵入するのも楽じゃないね」


「そうだ、侵入するのはかなりの荒技になる。

だが今回使う侵入ルートはムジール王城に直通する抜け道だ。王城に正面から乗り込む必要はない。

ただし、正門は通ることになる。

その正門を通るために俺たちは警備が手薄になっている太部(南部)を攻める必要がある」


「太部を......攻める......?」


「ああ、近年ムジール王国に対する反逆分子が冥部(北部)で暴れ始めている。

俺たちはその騒ぎの隙を突き、太部の正門から乗り込み秘密の抜け道のある屋敷まで直行する。

そのためにはアシヌ、お前が目立たず正門から侵入する手段を見つけなければならない」


「それしか、手はないのか......?」


「ああ、正攻法はそれしかない」


「ならばそれに委ねるしかないな。

よし、その手段とやらを聞かせてくれよ」


「ああ、怒らずに聞いてくれよ?

その手段ってのは......」



ムジール王国太部(南部)、正門前。

そこにはムジール王国屈指の衛兵が番人として君臨している。

正門に座する番人は『正義の王』と呼ばれ、ムジール王国の強固な守りを象徴する最高峰の騎士である。


「『正義の王』......いつもなら気にすることさえないのだが、今回ばかりは厄介だ。動くなよ、アシヌ。

お前は物だ。動じることのない、俺らの輸入品だ」


僕は彼らの背負う荷物に混じって正門の手前に辿り着く。


「よう、三馬鹿。お前ら元気か?」


「ああ、おかげさまでな、マウジ」


「それは皮肉か? おかげさまとは、随分と嫌味なことを言うじゃねえか」


「お前はマイナスに考えすぎだ。

とりあえず俺らは急がなきゃならねえから、もう行くぞ」


「ああ、お前らなら大丈夫だろう」


「(よしよし、正門は通過だ。

あとは人目を盗める場所を見つけて......)」


僕らが正門を通過したことに安堵したその時、正門付近に巨大なブザーの音が鳴り響いた。


《ウォンウォンウォンウォンウォン》


「なんだ!?

なんのブザーだ!?」


「ちょっと待て! そこの兵!

そこで止まれ」


すると、ヌミシー、バマウ、アークの三人組がとある衛兵に呼び止められた。


「なんだ、突然?

俺らに何の用だ、衛兵」


「待てと言っている。いいからそこで止まれ」


ヌミシーらは怪訝な表情で内心焦りつつ


「お前たち、森の駐屯地から来た兵士だろう?

ちょっと聞きたいことがある。着いてこい」


「着いてこい? 要件ならここで話せばいいだろう!」


「よかろう。実はな、お前たちにとある容疑がかけられている」


「とある容疑?」


「ああ、お前らが裏切り者である容疑だ」


「どういうことだ!?」


「実は森の駐屯地から連絡が入ってな。

一人の少年と三人の裏切り者の加担者によって、駐屯地が襲撃されたとの報告を受けている。

お前たち、他の兵士はどうした?」


「他の兵は安全な場所で待機している。

俺たちは彼らを救うため、急ぎ足で王都に足を運んだんだ。

急がなければ幾人かの人間が死ぬかもしれないんだ!

モタモタしている暇などない!」


「ならば潔白を証明しろ。

今から荷物を検査する。

例の少年をお前たちが庇っているかもしれないからな」


「庇ってる!?

どうして俺らがそんなことをやるってんだ!」


「念の為さ。さあ、荷物を早く見せろ」


「(まずいぞ......今荷物を見られたら......!)」


ヌミシーたちは観念したかのように恐る恐る自分たちのリュックを差し出す。

そしてそれらを見た瞬間、彼らは凍りつくことになる。


「なんだこれは? 鉱石?」


「あ、ああ。これか。

実は王都に来る途中、金になりそうな鉱石を拾ってな。

少しでも物資の足しになるかと思って袋に詰めたんだ」


「よかろう。お前たちは裏切り者ではないようだ。

だが気をつけろ。例の少年は我々に反逆を企ててるかもしれん。

もし見つけたら我ら衛兵に一足先に報告しろ。

奴には懸賞金がかけられている。ほら、これをやる」


「......!

第一級の指名手配!?」


「ああ、名前のわからぬ少年だ。

では、急ぎの用とやらを終わらせるといい。

引き留めて悪かったな」


「ああ、今度は気をつけろよ!」


こうして僕らは窮地を乗り切ると、無事正門を突破し近くの路地裏の物陰で作戦会議を開始した。


「おい、アシヌ!

一体どうやってあの場を凌いだんだ!?

あの時の変な物体は一体なんなんだ!?」


「ああ、あれは僕が変身した姿だよ。

松明の力を使ったんだ。

僕も流石に会話は聞いていたからね。

あの時は冷や汗をかいたよ」


「ほんと、引き留められるなんて思いもしなかった。

どうやら、森の駐屯地の情報がすでに王都に漏れているようだ。

どうする? 

もしかすると衛兵たちに僕らはマークされているかもしれない」


「それなら急いで秘密の抜け道のある屋敷まで向かおう!

衛兵たちに怪しまれる前に!」


こうして僕らは身を潜めるためにフードを被り、例の屋敷まで走って向かっていった。


そして僕らは王都中心のすぐそばにあるその屋敷に半日かけて辿り着くと、その古びた屋敷の中に人目を盗み足を踏み入れていった。


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