脱兎のごとく。
駅の近くに停めた自転車に逃げるように到着し、お腹にくっついてるドラゴンをどうにか剥がし、自転車のカゴに入れたカバンの中に入って貰って、いざ帰宅。
まるで宇宙人を自転車のカゴに乗せる映画のように。
まぁ、自転車ごと飛んだりはしないが…
自転車のカゴに入ったドラゴンは、状況把握をするように、周りの景色をカゴの中からずっと眺めていた。
「どうやって、説明すっかなぁ…」
思わず、今後の事を考えると、ため息が出てしまう。
今は小さいからいいけど、こいつ急にさっきみたいにでかくなったら、住んでる実家は粉々になるよなぁ…。
住んでいる家は一軒家ではあるが、親父と二人暮し。
親父は、最近仕事を退職したが、持ち家があるんで、自由に生活している。羨ましい限りだ。
俺は、一人暮らしをするようなお金が無いので、子供の頃からずっとその家で生活している。
最近居た同居人達は仕事の都合で別の場所に住んでいる。
だから…幸い、こいつが住む部屋は空いてる…。
この大きさなら…。
「なあ。お前って、さっきみたいにデカい姿にいつでも戻れるのか?」
カゴにいるドラゴンは、俺に向かって頷いている。
「意思疎通は、なんでか出来てるんだよなぁ…」
「お前には窮屈かもしれないが、しばらくこの姿のままって大丈夫なのか?」
なんとなく、理解出来ているかわからないが、大丈夫みたいなニュアンスの思考が伝わってくる。
じゃあ、住む場所は…大丈夫か。
とりあえず、帰宅して、色々明日考えよう。
夜はネガティブな感情に呑まれやすいって、どっかで聞いたしな。
こんな事を考えながら。
俺たちは、帰宅した。