華と夢8
その日、吏志は清爛の元を離れていた。
翠明がいる限り、清爛は真面目に仕事をする事を吏志も学んでいた。付きっ切りで監視をする必要性が下がったため、吏志自身も自由が利く時間が増えた。
清爛は、書に目を通している翠明の手元に自分の手を差し込む。それは音が聞こえない翠明を呼ぶ合図だった。
翠明はそれに気が付き、顔を上げる。
「これを西の書庫に届けてほしい。」
清爛はいくつかの文を翠明に差し出した。
「ここをまっすぐ進み、突き当ったら右に曲がれば行きつく先にある。戸をあけたら机があるから、そこに置いてくればいい。頼めるか。」
翠明は頭を下げて、文を受け取った。そして静かに書斎を出て行った。
よく考えると一人で屋敷内を歩いた事がないと翠明は思った。すれ違う人たちは皆翠明に頭を下げる。それは翠明の服装が書官の服装であり、ある程度の身分を表しているからだった。翠明もその都度軽く頭を下げた。
そんなすれ違う者の中に、いい顔をしない者が何人かいる事に翠明は気が付いた。それらはすべて女であり、見下す様な敵視するような意味ありげな視線を向けていると翠明は感じていた。翠明はその視線に覚えがあった。花街にいた時、そんな視線を投げ合う女達を見た事があった。しかし花街のそれらは翠明には関係がない事だった。今もまた、翠明はそんな女達の視線など気にしてはいなかった。
翠明は言われた通り、西の書庫に付いた。戸を叩き、開けると数名の男女が翠明を見た。
翠明は頭を下げると持っていた文を言われたように机の上に置いた。そして再び頭を下げると黙って戸を出た。
書官達は翠明突然の登場に驚いて手を止めた。
翠明の噂は西の書庫で働いている書官達の中でも知られていた。
黙って入ってきて、一言も発することなく書を置いて、再び黙って出て行く翠明の姿に、ある者は幽霊の様だと言い、ある者はその美貌に驚いた。しかしほとんどの者は、翠明に対し良い感情を抱いてはいなかった。それは突然引き抜かれ孫文付きになった翠明に対する妬みの感情だった。
翠明は当然、そんな事は知らなかった。
元来た廊下を歩いている時、翠明は唐突に起こった出来事に驚き足を止めた。
突然、真横から水をかけられ、翠明は頭からずぶ濡れになった。事態が分からないまま数度まばたきをして、そしてそんな水が来た方に顔を向けた。
そこには数人の女官が立っていて、笑っていた。
女官達のその顔は、実に面白いものを見たと言う表情のほかに、蔑む様な表情も混じっていた。翠明はこの時やっと行きに感じた視線の意味に気が付いた。なるほど、あの視線はこういう意味だったのかと察した。しかし翠明はなぜ自分がこのような事をされるのか、その意味が分からなかった。わからなかったが、それをその女達に問う事にも意味がないと思った。女と言うのが一度この様な感情を抱くとどうしようもなく質が悪いと言う事を翠明は知っている。翠明は黙って、その場を立ち去った。
書斎に帰ると、そこには吏志もいて、二人はずぶ濡れの翠明を見て目を丸くした。
「どうした!?」
清爛の問いに、翠明は無表情に頭を下げる。そして筆を執り
【誤って水をかぶりました】
そう答えた。
「どうやって誤ったらそんな事になるんだ?」
驚きと同時に呆れている清爛に対し、翠明は頭を下げて自分の部屋に下がった。
「書庫までに大きな池でも出来たか?」
清爛がわけがわからないと言う顔で吏志を見た。
清爛とは対照的に、吏志には思い当たる事かあった。それはまた一つ、吏志の悩みを増やす結果となった。吏志は翠明が明らかに「いじめ」にあったことに気が付いていた。
「まぁまぁ、どうされましたか翠明様!?」
翠明の姿を見て玉連はすぐに手ぬぐいを差し出した。翠明は黙って頭を下げて、濡れた髪を拭く。
玉連もまた、翠明を見て吏志と同じ事を思った。何も言わない翠明、玉連もまた訳を問わなかった。
清爛の仕事が終わり、吏志は悩みながら廊下を歩いていた。
今日の事を翠明に問いただしても翠明はきっと答えないだろうと吏志は思っていた。しかし吏志も立場上このまま見過ごすわけにはいかなかった。犯人の性別はすぐわかる、そしてなぜ翠明がこんな仕打ちを受けなければならないのかという理由もわかっている。そしてさらに、その原因が清爛である事もわかっていた。
当の清爛にそんなつもりは毛頭ないし、自覚もさほどない。要は翠明は妬みと言うとばっちりを受けたのだった。
さてどうしたものかと思いながら人のいない廊下を歩いていると、急に一人の少女が吏志の前に飛び出してきた。
驚き足を止める吏志、少女は吏志の前にひざまずき頭を下げた。服装からして下女である事はわかる、少女は頭を上げず、震えている様にさえ見えた。
「どうしたのですか!?頭を上げなさい。」
吏志の問いに、少女は勢い良く頭っを上げて、強い瞳で吏志を見つめた。
「吏志様!私!見ました!!」
その勢いある言葉に吏志の方が驚いてしまう。吏志は若干狼狽えながらも、少女に手を添えて立たせた。
少女はその手を掴みグイっと吏志を引き寄せるように立ち上がると掴みかからんとばかりに声を上げた。
「吏志様!私、見たんです!」
「わかったから落ち着いて、ちょっとこっちに。」
少女の声の大きさと剣幕に吏志は慌てて少女を空いている部屋に引っ張る、少女はパタパタと引っ張られてついて来た。戸を閉めてふぅと息を吐く吏志に、少女は尚掴みかかる様に詰め寄って来た。吏志は咄嗟に手を上げる。
「吏志様!私見たんです!」
「わかった、聞くから落ち着きなさい・・・君の名は?」
「鈴鈴と言います!」
翠明の醸し出す大人の女性の空気感に慣れてしまっていた吏志にとって、鈴鈴の若い圧力はとても強いと思った。
「で、何を見たのか教えてくれますか。」
「私!見たんです!女官達が書官の女性に水をかけるところ!」
その言葉に、吏志はやはりと思った。
「それは、いつの事ですか?」
「今日です!昼間の話です!」
「鈴鈴、君はその事を私に言ってくると言う事は、それなりの覚悟を持っているんだね?」
「はい!だってひどいと思うから!」
「わかった、聞きましょう。」
たまたま洗濯物を置きに行った帰りに鈴鈴はその光景に出くわしてしまった。
最初は美しい書官の女に目を奪われ、足を止めた鈴鈴。憧れの眼差しで翠明を目で追っていた。その時ふと角に水桶を持った女官がいることに気が付いた。
気位の高い女官が水桶などを持つ事はない、今日は珍しいものをよく見る日だと思いながらなんとなくそんな光景を見ていた時、その女官が翠明に水を浴びせる光景を見てしまったのだった。
驚いた鈴鈴は咄嗟に翠明に駆け寄ろうとしたが、女官達の甲高い笑い声に我に返り、足を止めてしまった。水を浴びせられた翠明はまるで何事もなかったかのようにその場を去る、鈴鈴はただ何もできず、その光景を見送る事しかできなかった。
しかし、元来正義感の強い鈴鈴は、どうしてもその行為に納得いかなかった。そこで、書官孫文に仕える官僚である吏志に直訴しようと思い立ち、ずっと待っていたのだった。
「その女官が誰だか、わかりますか?」
「はい、わかります!」
吏志は鈴鈴からすべてを聞いた。
「わかった、鈴鈴。教えてくれてありがとう。後はこちらでなんとかするので、君は持ち場に戻りなさい。」
「わかりました!」
「くれぐれも自分からは動かない様に、今日この時の事も悟られない様に、いいですね。」
「はい!ありがとうございました!」
鈴鈴は勢い良くその場を去って行った。
吏志は走り去っていった鈴鈴の影を見つめ、こういう場合は誰にも悟られない様に静かに帰っていくものではないのだろうかと思った。
「やれやれ、勘弁してもらいたいものだ・・・」
これを機に、また新しい悩みが増えなければいいと思い、吏志は深い溜息をついた。
その後しばらく、翠明が清爛の書斎から出るような仕事はなかった。
吏志は翠明やその周囲の動向を気にかけていたが、女官やその他の者たちの翠明に対する何らかの意思を感じ取ることは出来なかった。そこで吏志は、あえて翠明を動かしてみる事にした。
「孫文様、本日少しばかり席を外したいのですがよろしいですか?」
「あぁ、かまわない。」
吏志が席を外すことは珍しい事ではなかったため、孫文は何も気に留めることなく了承した。
「では失礼します。」
吏志は頭を下げて部屋を出る、翠明もそれを見て頭を下げた。
書物を書庫に持っていくのはいつも昼過ぎだった。それは毎日ではないが、ある程度の量ができると吏志が持って行っていた。吏志は、今日持っていかなければならない状況であることを把握している。それを知っていて、吏志は清爛が翠明を動かすのを待った。
「なんだ、結構溜まってしまったな。」
清爛は溜まってしまっている書類を見て息を吐いた。そしていつも通り、翠明に合図を出す。
「翠明、悪いがこれを再び運んでくれないか?」
翠明は何も言うことなくうなずき、立ち上がり、書を抱えて部屋を出た。
部屋を出た翠明は、息を吐いた。前回の事を思えば今回も同じ事が起きるのは目に見えていた。そして翠明は、それらの行為が「行き」ではなく「帰り」であってほしいと願い、書物をしっかりと抱えた。
歩いている時に感じるものは前回と同じだった。なんなら、前回よりも悪いとさえ感じていた。翠明はなぜ自分がそのように見られているのか見当もつかなかった。しかし、女の園などと言うのはそう言うものだと心得ている。何もない所から急に煙や火が立つのは普通の事だった。
行きに何事もなく書庫に着いたことに、翠明は安堵のため息を漏らした。
そして、前回同様、戸を叩き、戸を開け、一礼し、入り口付近の机に書を置き、立ち去ろうとしたその時。足元が濡れたような妙な感覚を感じてふと足を止める。そして、振り向く様にその場所を見た。
「・・・・・・」
足元は真っ黒で、裾には墨がかかっていた。思わず顔を上げて部屋の中を見ると、墨壺を持ってくすくす笑う女が数人見えた。
「あらごめんなさい、こぼしてしまったの。」
女はそんな風に言っている気がした。
翠明は黙って懐から布を出し、裾に染み込んだ墨を拭いた。女達はそんな翠明の姿を見て笑った。翠明は何も言わず、黙って書庫を去った。
良くない日だと翠明は思った。この状況下で戻りの道中が前回程度で済むだろうかと翠明は思いながら廊下を歩いた。前回水をかけられたあの場所がやがてやって来る。さすがに裾を墨で汚し、二度もずぶ濡れの状態で書斎に戻っては孫文に怪しまれるだろうと思い歩いた。
翠明の視界に、女達の姿が見えた。前回見た女達であることはわかる。水であればまだいいと思いながら、翠明は覚悟を決めてその前を通過した。
バシャン!
「・・・・?」
水が勢いよく廊下に撒かれたと同時に、翠明の体は後ろから誰かに引っ張られその水を頭から被ることはなかった。
女達の顔が引きつっている事が分かる。翠明は自分の体を引き寄せたその手をたどり、背後にある顔を見上げた。それは吏志だった。
翠明が見上げた吏志の表情は険しかった。
「何をしているのですか。」
吏志の言葉に、女官達は膝を付き、頭を下げた。
「一度ではない事は明白です、規律を乱す者にはそれ相応の処罰を下します。それらが不服とあらば異議申し立てをするか、自ら城を去りなさい。」
翠明に吏志の声は聞こえないが、身体に響く振動からその口調が強い事は感じ取れた。
女達は逃げるように去り、偶然その光景を目にした数人の使用人達も頭を下げてその場を逃げる様に去って行った。
吏志はやれやれと言いながら息を吐き、翠明の手を離した。
翠明は振り返り、吏志に頭を下げる。
見上げた吏志の表情はいつも通り穏やかだった。
「大丈夫でしたか?」
翠明は頭を下げる。吏志はふと、翠明の着物の裾が汚れている事に気が付いた。
「・・・遅かったみたいですね。」
呟いて再び息を吐いた。
「玉連様の所にご一緒しましょう。」
吏志はそう言って、翠明の前を歩き始める。翠明もそれに続いて歩き出した。
「まぁまぁまぁ・・・」
玉連は翠明の汚れた着物を見てやっぱりと思った。そしてそんな翠明を連れて来た吏志を見て、やっぱりかと訴え笑った。玉連は翠明に着替えを渡し奥の部屋へ連れて行く。そして部屋にいる吏志に向かい再び笑った。
「二回目、ですか?」
「えぇ、その様です。」
「坊ちゃんはご存じで?」
「いいえ、気付いておりません。」
「でも、さすがに二回目ですからねぇ・・・」
「はい、言うつもりです。」
玉連と吏志は深い溜息をついた。
「容姿は映えますからねぇ、坊ちゃんは。」
「翠明様も、目立ちますから・・・」
二人は自身がとても目立っている事に気が付いていない、だから質が悪いと吏志は思った。
吏志は翠明を玉連に任せ自身は清爛の所に戻った。
部屋に戻って来たのが翠明ではなく吏志であることに清爛は首をかしげる。
「吏志、翠明を見なかったか?」
「今玉連様と一緒におります。」
「なんだ、なんか用事でもあるのか?」
「えぇ、いろいろありまして・・・」
ため息をつく吏志に清爛は首を傾げた。
吏志は事の顛末を清爛に告げた。
清爛は深く息を吐いて、頭を抱えた。
「なんなんだそれは一体・・・」
「彼女達があなたの本当のお立場を知ったのなら、求婚の為にここに押し寄せて来るのでしょうね。」
「勘弁してくれ・・・」
「とりあえず、今後翠明様にお使いを頼むのはやめた方が良いかと・・・」
「さっぱり意味が分からん・・・」
「あなたのその容姿はあまりに目立ちます、そして翠明様も・・・」
「花街よりは自由に暮らせると思って連れて来たんだぞ?結局ここから出られないじゃないか。」
「仕方ありません。もしどうしても出る予定があるのであれば私か玉連様がお供いたします。」
「俺が行くよ。」
「絶っ対にダメです!!!!」
吏志に怒鳴られて清爛は机に伏せた。
清爛は少なからず自分がそういう目で見られていることは理解していた。しかしまさか、そのせいで翠明に被害が及ぶだなんて思いもしなかった。
「女とは、恐ろしい生き物だな・・・」
「これ以上女達を敵に回したくなければ、妃の所にも通うべきです。」
「・・・・・」
清爛はもはや、頭を上げることは出来なかった。
翠明の方もあらかた玉連から事の次第を聞かされていた。
「孫文様はここで働く女達の憧れの的なのです、ですので翠明様に矛先が向いてしまったのでしょう。」
翠明は理解した。女達の視線、嫌がらせ、これらは全て憧れの的である孫文と言う書官を奪ったと思われているがゆえに起きているのだと言う事を。それはひどい誤解だと思った。自分は孫文に買われた身分であり、同情はされても妬まれる様なことは何もないと思った。
しかし、それもまた女の園である故である事と理解していた。男は外仕事、女は中仕事と決まっているこの城の中で、男性の数は圧倒的に少ない。そんな中であれだけ美しい身なりの男が歩いているのだから殺し合いが起きてもおかしくないのかもしれないと翠明は思った。
「翠明様、お一人で出歩くのはおやめになってください。孫文様と吏志様にもそのようにお伝えいたしますので。」
翠明は深くため息をついた。
その夜、翠明の予想通りに清爛がやって来た。
二人は卓の前に立ち目を合わせ、同時にため息をついた。清爛が座り、その隣に翠明が腰を下ろす。
「申し訳なかった・・・」
清爛のその言葉に、翠明は首を左右に振る。
「まさか、そんな事になっているとは思わなかった、迷惑をかけたな。」
【女が多く集まる処ではありがちな事です。花街でもそうでした】
「しかしなぁ・・・」
清爛が深くため息をつく。
しばしの沈黙の後、翠明は日中より気になっている事を清爛に問いかけた。
【吏志様は、どの様なお立場の方ですか】
翠明はずっと気になっていた。なぜあの時吏志は自分を救うことが出来たのか、女官達が一斉に頭を下げたのか。きつく言いつけるようなそぶりを見せた吏志を見て、実は位が高いのではないかと思った。
しかし、書官である孫文と言う男に仕えているのであればそんなに身分は高くないはずだとも翠明は思った。この男二人の位置関係が、翠明にはわからなかった。
清爛はその質問に困っていた。
本来の関係は皇族である自分と、外宮の上級官僚である吏志の関係性は明白である。しかし、書官の孫文と上級官僚の吏志では、立場としては吏志の方が上だった。それをいかに疑問を抱かせずに説明するか、少しばかり考えていた。
「・・・吏志は、外宮の官僚だ。昔からよく知っていてな、それで俺の手伝いをしてくれている。まぁ、お前と玉連のような関係だ。」
その答えに翠明は納得した様に見え、その様子で清爛は落ち着いた。
「吏志には人事権がある、外宮の人間達を自由に裁く事が出来る。謀反を働いたり、不審な動きがあればすぐに吏志や同じ官僚たちが制する。俺の文を監視するのもその仕事の一つみたいなもんだ。」
【あの女性達は、裁かれるのですか】
「まぁ、何らかの処分は降りるだろうな。とは言え人命に関わる様なものではない。役職を解かれるか、ここを出されるかだろう。」
その言葉に翠明は少しばかり安堵した。
「お前が気にする様な事ではない。」
翠明は時折見せる清爛の態度にも疑問を持っていた。
その態度はとても位が高い官僚のようだと思っていた。宮中に宛てた書類を見ることが出来るのだから位は高いのだろうと思っていたが、書官自体は決して位が高い役職ではない。もしかしたら自分が今見ているこの世界は、ごく限られた者しか見ることの出来ない世界なのではないかと翠明は思った。
翠明は自分が感じた違和感を黙っておくことにした。
「少し窮屈かもしれないが、我慢してくれ、そのうち何とかする。」
翠明は頭を下げた。
翌日、清爛は吏志を呼んだ。
「翠明の件、なぜお前は知ることが出来た?」
「まぁ、大方推測は出来ました。それに・・・」
「それに?」
「威勢のいい密告者がいたんですよ、その娘が教えてくれました。」
「威勢のいい、密告者?」
「どこの下女かはわかりませんが、鈴鈴と言う下女が一部始終を見たと言って私に飛びかかってきました。」
「それはずいぶんと威勢がいいな、そいつはその後自分にも災難がかかるだろう事を知らないのか?」
密告がバレでもしたらそれこそ自分がいじめの対象になるだろう、それくらいの事は想像できる。
「えぇ、確認しましたが、それでもいいと言いました。」
「ふ~ん、いい度胸だ。おもしろい。」
そう言うと、清爛は何やら考える。
「ちょっとその鈴鈴とかいう娘、調べてみてくれないか?」
「どうするおつもりで?」
「面白そうだったら、翠明の下女にする。」
はいはいと吏志はため息交じりに返事をした。