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華と夢4

内宮が皇族の屋敷であるなら、外宮は使用人や役人の場所だった。

その中でも、清爛が孫文として過ごしている建物は外宮の東の端に位置しており、長い廊下の奥、突き当りの部分にある別棟の建物だった。

中にはいくつかの生活スペースの他に、木簡や書物を置く書庫、竈もあり、井戸もあった。

ここが書官を行っている清爛が多くの時間を過ごす空間であり、出入りするのは吏志など限られた者だけだった。

翠明は清爛が過ごすこの別棟で生活を送る事となった。

翠明は自分の置かれている状況が今一つ理解できなかった。

いきなり買われ、風呂に入れられ、髪を整えられ、服を変えられて、ついさっきまでの自分とは別人になった気がした。玉連と名乗る老婆は人が良さそうで、自分の身の回りの事をすべて引き受けると告げてきた。その意味も、翠明は理解できなかった。

与えられた部屋は、今まで自分が暮らしていた部屋とは違い、広く、きれいだった。

玉連はお茶と茶菓子を持ってやって来た。そして椅子を引くと、翠明をそこに座らせてお茶を入れた。

差し出された茶器を手にして、翠明は暖かい茶を飲んだのはいつぶりだろうかと思った、お茶などもう何年も口にはしていないと思った。なんとなく、落ち着く気がした。差し出された月餅も、口にしたのは幼き頃だと思った。

玉連は、そんな翠明の表情の動きを正確に読み取っていた。そして、落ち着いた頃を見計らって、外宮を案内して回った。

外宮を歩きながら翠明はとんでもない広さだと思った。そして、うかつに歩き回ることは避けるべきだと思った。

人とすれ違うたびに玉連は頭を下げ、それを見て翠明も同じ行動を取った。その中の何人かが玉連と話をしていたが、翠明にはその内容が当然わからず、表情を作る事は難しかった。

翠明の容姿は、あまりに目を引いた。

すれ違った者たちは、男女を問わず翠明について尋ねた。皆翠明の凛とした知的な美しさが気になって仕方がないと言った様子だった。しかも書官の格好をしているのだ、余計気になってしまう。そんな周囲の反応を見て、玉連は翠明をあまり人に見せるべきではないと悟った。

翠明を与えられた部屋に連れ戻すと、玉連は食事の用意をしてくると伝え、部屋を出た。

玉連が部屋を去った後、翠明は部屋の窓を開けた。

まず目に入ったのは高い壁だった。その壁は空に向かって真っすぐと建っていて、強い孤独を感じさせた。足元にはわずかな土地があり、雑草が生えていた。陽があまり当たらないのか種類は限られているけれど、そんな中でも小さな花が咲いていて風に揺れている。

翠明は、そんな庭をただずっと眺めていた。

陽が落ちる前に玉連は食事を部屋に運びそろえた。

翠明は出されたものを見て驚き数度まばたきをした。目の前には多くの皿が並んでいる。それを見て、これは何人分なのだろうと思った。

玉連は立っている翠明に手を差し出し椅子に座るように促す。翠明はそれに従い椅子に座り、玉連と翠明の二人は食卓に着いた。

差し出されている食事は、どれも懐かしいものだと翠明は思った。

幼き頃によく口にしていた味に近い、翠明は遠い記憶がよみがえるような気がしていた。

食事を終えた後に玉連は全ての片づけを済ませ、部屋の中を整え終えると明日来ることを伝え、部屋を去った。

部屋着に着替え、翠明は清潔な寝床に腰を下ろす。そして、深く息を吐いた。

今日一日の変化があまりに目まぐるしく、まるで夢でも見ているみたいだと翠明は思った。

今朝の自分は暗い長屋の一室で目を覚まし、いつもと同じ着物を着て、担当している店の洗濯物を一件ずつ回収し洗っていた。花街が寝ている日中は部屋で仮眠を取り、夕刻前にまた仕事に行くために起きる。そして、ちょうど起きた頃に数人の女達が部屋に乗り込んできて、何かを叫びながら自分の手を引いた。女のうち二名ほどは自分の荷物を手あたり次第まとめ上げていた。そして、孫文と名乗る男に見受けされた。

何度考えても、孫文との出会いは今日を外すと二回だと思った。

依然ふらついた自分の手を引いてくれた一回と、その後に話しかけて来た一回しか思いつかない。たったその二回で自分のような下女の見受けをするだろうかと考えた。下女とは言え、見受けにはそれなりの金を積まねばならない。宮中勤めともなれば金銭に余裕があるのか、それともそんなことを気にしなくてもいいほどの身分なのか。翠明は孫文の事が全く分からなかった。

翠明は、眠ることもできず、ただ寝床に座っていた。


清爛もまた、部屋で茶を口にしながら眠れぬ夜を過ごしていた。

勢いで翠明を連れて来てしまった事ついて、少し考え込んでいた。

もう二十五にもなると言うのに、ずいぶんと考えなしの突発的な行動をとったものだと思っていた。突如連れて来られた翠明の事を思うと、さぞ今の境遇が理解できないだろうとも思った。今日の彼女の一日は、とんでもなく騒がしく、理解の範疇を超えているだろうと思った。

今、翠明はどうしているのだろうか、部屋にいるのだろうか、玉連が去った後に抜け出してしまっているのではないだろうか、花街に戻ってしまっているんじゃないだろうか。そんなことを思い始めればいらぬ事ばかり考えてしまい余計に落ち着かなくなるもので、清爛は部屋を出ていた。

翠明の部屋の前に来て、扉の前に立った。そんな自分に何をしているのかと清爛は問いかける。

戸を叩いて、中の翠明に声をかけようかと思った。しかし、それはすぐに不可能だと思い出す。耳の聞こえない翠明には、それは全く意味をなさない行為だった。

しばし立ち尽くす清爛。戸に耳を寄せても、中の音は聞こえない。もう寝ているのだろうかなどと思ってみた。

清爛は考えた。

もし中の翠明が不在ならば、いきなり戸を開けたところで何も問題は起こらない。寝ていたとしても同じこと、音が聞こえなければ開けた事にも気が付かないだろう。起きていたとしても、ずっと戸を見ているとは考えにくい、少しばかり開ける程度ならば、中の様子を確認するだけであれば、音の聞こえない翠明は気が付かないのではないか。

もし、少しでも戸に力を加えて、動かなければ内側から鍵がかかっている。そうであればすぐに手を放そう・・・

清爛は、そっと、戸に手をかけた。

戸は、静かに動いて、中からが灯りが漏れる。

わずかに開いた隙間からでは中の様子をうかがうまではいかない。清爛は、少しずつ、戸の隙間を広げていった。そしてやっと、机に向かい筆を動かしている翠明の姿が見えたその時、風が戸の隙間を抜けた。

翠明は部屋の中を風が抜けたことに気が付き窓を見る。そして、風が抜けた先の戸に目をやった。

戸は、わずかに隙間が空いていた。

翠明は立ち上がり、戸の前までやって来る。そして、戸を閉めようと手を伸ばしたその時、戸の向こうに人の気配を感じ、戸を開けた。

翠明の前には、孫文こと、清爛が立っていた。

清爛の驚いた顔とは対照的に、翠明はさほど驚いた表情も見せず、頭を下げて挨拶をした。

「えっと、」

清爛はうろたえて、翠明の耳が聞こえないことも忘れ、言葉を紡ごうとした。

翠明はそんな清爛を見て、戸を開けて、中に入るように促した。

「いや、通りかかっただけで、灯りが漏れていたから、」

翠明はそのまま黙って立っている。その様子を見て、清爛は翠明の耳が聞こえない事を思い出し、戸惑いながら、中に足を進めた。

翠明は上掛けを羽織った。そして玉連が置いて行った蓋つきの陶器の容器を机に出し、清爛に座る様に促す。清爛はどこか照れたように落ち着きのない表情で、椅子に腰を掛けた。

翠明は水で濡らした筆を執り、紙に字を書いた。

【何か御用ですか】

その問いかけに、清爛は止まる。まさかお前がいるか気になって見に来たとは言えなかった。

清爛は筆を執り、答えた。

【通りがかったら、灯りが漏れていたから】

翠明は、それが嘘であることにすぐ気が付いた。戸はきちんと閉めていた、それは花街の時からの習慣だった。しかし、そんなことを清爛に問いかける気はなかった。

【眠れないのか】

清爛は書いて、翠明に筆を渡す。

【はい】

答えを書いて翠明は清爛に筆を渡した。

【急にこの様な場所に連れて来て申し訳ない】

【いいえ】

【私の仕事を手伝ってほしい】

【私は、あなたに仕えられるほどの教養を得ておりません】

翠明は、表情を変えない。

筆談、それは時間がかかるもののそれなりの良さがあると清爛は思った。感情のままに言葉を発するのではなく、静かに向かい合い、一度自身の中で整理してからしたためる。それはまるで歌を詠むかの如く風情があるような気がした。何より、翠明の字は美しいと清爛は思った。

翠明もまた、清爛の字を美しいと思った。高い教育を受けた身分なのだろうと思った。そして、そんな筆を執る清爛の手もまた美しいと思った。武芸に励むような力強さではなく、知的な美しさだった。

清爛は息を吐き、筆を執った。

【あなたの字は、とても美しい】

そう書いて、清爛は翠明を見つめて、にっこりとほほ笑んだ。

【あなたが手伝ってくれると、私の仕事はだいぶ楽になる。ぜひ手伝って下さい】

清爛が頭を下げる。

翠明はそんな清爛を見て、目を細めた。

【ここの生活に慣れた頃でいいので、お願いします】

翠明は黙って、字を見つめる。

【では、また明日】

清爛は立ち上がり、礼をして静かに部屋を出て行った。


翌朝、玉連は翠明の部屋に入った。そこにはまだ寝ている翠明の姿があった。音が聞こえない為翠明は玉連の存在に気が付いていない。

玉連は穏やかそうな寝顔をしている翠明をあえて起こさずに、穏やかに微笑むと、そっと部屋を出た。

ちょうど廊下を歩いてこちらに向かってくる清爛と吏志に出会い、玉連は頭を下げた。

「おはようございます、清爛様、吏志様」

「玉連、ここでは孫文だ。」

「そうでした、失礼いたしました。」

玉連はにっこりと笑う。

「翠明はもう起きているか?」

「いいえ、まだ寝ております。」

「そうか・・・」

清爛は昨夜のことを思い返した。そして、きっと遅くまで寝られなかったのだろうと思った。

「穏やかそうに寝ておられましたので、朝食の支度ができるまでそのままにして差し上げましょうかと。」

「そうだな、任せる。」

では、と言って玉連は調理場の方へと向かった。

「吏志、少し知恵を貸してほしい。」

清爛のその言葉に、吏志は首を傾げた。清爛はそのまま書斎に入り、吏志が戸を閉めた。

「どうかなさいましたか?」

吏志は先ほどの言葉を思い返し尋ねる。

清爛は椅子に腰かけ、ふぅと溜息を吐いた。

「翠明の耳を、医師に見せてやりたい。」

清爛は悩まし気につぶやいた。

「あの耳は、幼き頃からのはずだから、治る事はないだろうと言う事はわかっている。だが、もしかしたら、きちんとした治療を受けていたら治ったかもしれない。何かできないだろうか・・・」

清爛は机に肘をつき、顎を乗せる。

「あいつと話がしてみたい、きっとすごく賢いだろうと思う。筆談が嫌なわけではないが、話をしてみたいんだ。医師に見せたいが、どんな理由で医師に見せたらいいか俺にはわからない。どうしたらいいと思う、吏志。」

翠明の事となるとこうもすらすらと感情が出てくるものなのかと吏志は驚いた。つい先日までの清爛の会話はどちらかというと投げやりで短い会話が続くと言った表現が正しかった。

吏志は今、自分の目の前にいる清爛がまるで思春期の青年のように思えた。

本人は否定したが、これは間違いなく翠明に対して人並みならぬ想いを秘めていると吏志は察した。

「さて、困りましたね。」

やれやれと、吏志はつぶやいた。

この言葉にはいろんな意味が込められていると、吏志本人は思った。

清爛は翠明を堂々と医局へ連れて行くことに躊躇いがあった。正当な方法で宮廷仕えになったわけではない翠明をどのような理由で医局に連れて行くべきかと思った。

清爛と言う男が医局に行けば、有無も言わずに医師たちは診てくれる。しかし、書官である自分は皇族のような身分ではない為医局で特別な扱いを望むことは難しいと思った。

職務中に急に耳が聞こえなくなったとあればまだ行きやすいが、幼き頃より聞こえなければそれをわかっていて使えさせていたことになる。今更医局に駆け込む理由はない。

しかも翠明は昨日自分が買って連れ込んだ女であり、どんな理由を付けて診察させるべきか、医師に詳細を問われた時どう答えるべきか、清爛は頭の中を巡らせてみたがいい答えが見つからなかった。

清爛は不貞腐れたような表情をしていた。

「玉連様がお連れになった下女、と言う事にでもしていただきましょうか。」

吏志の答えに、清爛が上目で見上げる。

「翠明は書官だぞ。」

書官と下女では身分が違った。服装も違うため、外見で役職はわかってしまう。

「玉連様がご親戚の娘を下女として連れて来た、その娘の才をあなたが書官として認めた。そして身の上を相談されて医局に連れて行った。このような流れでいかがでしょう。」

う~んと清爛は悩む。

「孫文と玉連の関係は公にはなっていないぞ?不自然ではないか?」

「書の才がある為にあなたの所に連れ込んだとなれば不自然ではないでしょう。孫文であるあなたは書官の中では最上位ですし内宮とも強い関わりのある身分です、玉連様があなたに話を持ち掛けること自体は不自然ではないと思いますよ?」

素直に首を縦に振らない清爛を見て、吏志は清爛が今までのどんな事柄よりも慎重で臆病になっていると感じた。どちらかというと大胆な動きをする清爛を見ては肝を冷やしてきた吏志にとって、それはとても新しい発見だった。

「玉連様の連れの者でしたら医局の者が初見であってもおかしくはないと思います。教養があってもおかしくはないかと。何よりも、この状況下では玉連様のお力添えは必須ですので、世話役をお願いしている以上口裏を合わせてもらった方が良いと思います。」

納得した清爛を見て、吏志は今日の書類を清爛に見せた。

「では、早めに取り掛かりましょうか。午後は別件で忙しくなりそうですからね。」

清爛は頭を抱えて机に伏せた。


翠明は優しい匂いで目を覚ました。

視界に入ったのは朝食の準備をしている玉連の姿だった。

見慣れないそんな光景に、寝起きの思考でここはどこだろうと思う翠明。そして昨日の事を思い出し我に返り飛び起きた。

そんな音に玉連は気が付き、翠明を見る。状況が理解できていない様子の翠明に、玉連は朝の挨拶を行った。

「おはようございます、翠明様」

翠明は慌てて床に膝をつき頭を下げた。それは身分の高い者に対する挨拶だった。

玉連は翠明の所に歩み寄り、手を添えて顔を上げ立つように促した。

翠明はふと、自身が寝間着であることに気が付き狼狽えだした。

「昨夜はよく眠れましたか?」

玉連の言葉に、翠明は再び頭を下げる。

「そんなにかしこまらないで、私はあなたの世話人ですよ。」

玉連は笑った。そしてきれいに畳まれた着替えを翠明に渡した。

翠明はその着物を手にし、いそいそと着替える。書官の着物に着替えた翠明を、玉連は椅子に座らせた。

翠明は筆を執り、字を書きだす。

【遅くまで大変申し訳ありませんでした】

再び手を合わせ頭を下げる翠明に、玉連はその手を下げさせて、箸を持たせた。

「さぁ、食べてしまいましょう。」

玉連は笑顔で翠明に食事の催促を行い二人は朝食を始めた。

朝食の片づけを終えて部屋に戻ろうとした玉連を吏志が呼び止めた。

「玉連様、ご相談がございます。」

吏志は玉連に、今朝のやり取りを伝えた。

「いかがでしょう、ご意見をうかがえますか?」

「さすが吏志様です、それがよろしいかと。」

「では、ご協力いただけますか?」

「もちろんでございます、では翠明様は私の親族の娘と言う事に致しましょう。」

「ありがとうございます、助かります。」

「医局での細かいやり取りは私にお任せください。」

玉連はそう言ってにこりと微笑んだ。

「しかし、吏志様も大変ですね。」

玉連はすべて見切っていると言わんばかりに声をかけ、吏志は深い溜息をついた。

「女性に本気になってくれたのはありがたい所なのですが、どうしたものか。」

「翠明様の御心が動くまでにはまだまだ時間がかかると思います、それまで坊ちゃんはどうされるのでしょうね。」

「翠明様の素性が掴めていないので、そう簡単に事は運ばないでしょう。今あてがわれている妃たちもいますから、ややこしい事にならなければいいのですが。」

「吏志様の気苦労は増すばかりですね。」

笑う玉連に、吏志は再びため息をついた。

「早く落ち着いてもらいたいのは事実なのですが・・・」

出所のしっかりした妃たちよりも妓女上りの花街の娘を選ぶとなれば、妃たちの心境はいかがなものかと吏志は思った。それこそ命を狙われるような事態にならなければいいと思った。

それより何より、吏志は翠明の事をほとんど知らないに等しい。清爛もどこまで素性を把握しているのか怪しいと思った。孫文として自由にふるまってはいるが清爛は皇位継承者、清爛に何かが起こることは何が何でも阻止しなければならず、清爛が幼き頃よりその役目を仰せつかっているのが吏志だった。吏志の危機回避能力は非常に長けていた。

吏志は、玉連に頼る以外になかった。

「玉連様、もう一つお願いがございます。」

吏志のその言葉と表情を見て、玉連は微笑んだ。

「翠明様の事ですね。」

「はい・・・」

吏志は、目を閉じる。

「悪い方とは思わないのですが、元妓女であると言うことぐらいしか私も把握はしておりません。身辺は調べておく必要があると思います。もしもの事があってはいけませんので、探ってはいただけませんか。」

「私の親族の娘となりますから、その辺りの事を聞いていても悪く思われる事もないでしょう。先ほど吏志様からご提案いただいた内容は私の方から翠明様にお伝えしておきましょう。お任せください。」

では、と玉連は去って行った。

吏志は一息ついて、書斎へと戻った。

清爛は書物の一つ一つに目を通し、内容を確認し、返事を書いたり仕分けをしたりしていた。

書物は皇族に関わるものから、妃たちの親族からのもの、使用人の親族からのもの、貿易に関わるものなど様々で、それらすべてを読み、国賊に関わるような内容はないか、売国奴になり得る様な不安分子はないかを確認していた。いわば検疫官だった。

送られてくる荷物の検疫は別箇所で行っており、そこにはそれ相応の人数がいるが、文章となると大勢で検疫するわけにはいかない。

毎日届く多くの文章の全てを一人で目を通す事は、確かに大変だろうと吏志は思った。

信頼できる者がいるのなら、手伝わせるのもいいかもしれないと思った。

しかしそれが翠明となると、すぐに首を縦に触れない。吏志は、翠明の身元をできるだけ早く明らかにする必要があると思った。

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