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華と夢13

「さて清爛様、そろそろ練習の時期ですね。」

「えぇっ、もうそんなか!?」

「そろそろ始めないと、披露できないですよ?」

「仕方ないか・・・」

清爛は怠そうにそう答えた。

その日から清爛は書官としての仕事の後しばしば宮中に通った。

「じゃ、吏志、後を頼む。」

「わかりました。」

清爛はその日も自分の仕事が終わるとすぐに書斎を出た。

そんな姿に翠明が首をかしげる。

「宮中で園遊会があるんですよ。」

吏志の言葉に翠明が首をかしげる。

「毎年この時期に行うんです、皇帝や皇位継承者、皇后、上級妃たちが集まり宴をするんです。その準備でお忙しいのですよ。」

孫文が清爛だとは知らない翠明に、吏志が差し支えないように説明した。

孫文と言う男はそんな事までやっているのかと、翠明は感心した。

【お忙しいのですね】

「そうですね、結構いろんな事をされているんですよ。」

何とも落ち着かない男だと翠明は思った。

清爛は銀色に輝く大きな剣を手に内宮の一角にいた。そこは誰かが来る場所ではない特殊な場所。黒光りする板張りの舞台、そんな清爛を見ていたのは初老の男だった。

清爛は剣を振り上げ、片足を上げる。そして静かに美しく舞った。

初老の男はそんな清爛の動きを見て細かく指導した。

「では今日は終わりに致しましょう。」

汗をかいて床に転がる清爛、体が鈍っている事を痛感した。

「まだまだ、皇帝に見せられる物ではございませんな。」

「そんなに酷いか・・・?」

「えぇ、そりゃぁもう。」

清爛は絶望した。

「全く握っていなかったことがよくわかります。」

そのままズバリで何も言い返せない清爛。

「今回もまた、時間がかかりそうですな。」

「くそ~・・・」

清爛はうなって、力尽きた。


「いててて・・・」

清爛は書斎で仕事をしながら肩を動かし思わず声を漏らした。

書に目を通している翠明はそんな清爛に気が付かない、吏志が振り向き清爛を見て笑う。

「筋肉痛ですか?」

「さぼっていたのがバレているんだよ。」

「そりゃぁそうでしょうね。」

吏志が笑う。

吏志は書を持って清爛の前に向かった、そして翠明と清爛の間に入る様に立つ。

「翠明様には宮中で催される園遊会のお手伝いに行っていると伝えております。」

「そうか、わかった。」

清爛は翠明を見た。こちらを見ることなく仕事をする翠明、清爛は何となく、翠明に言えない事が増えることに心苦しさを覚えていた。

吏志はそんな清爛を見て、今回の事もまたすぐに口にしてしまうのだろうと思った。清爛はもともと隠し事が得意ではない。ましてや翠明に対しては自分が見ていても呆れるほどわかりやすいと感じていた。

翠明に対する清爛の想いが日々強くなっていると感じるのとは対照的に、翠明が距離を縮めようとしないと感じていた。それは清爛に興味がないと言うよりも、あえて縮めないようにしている様にさえ見えていた。その理由がわからないと、吏志は思っていた。

その日は吏志も宮中に同行した。そして一年ぶりに舞う清爛の姿を見た。

清爛の剣劇は実に美しいと吏志は思った。

高蓬が力強く勇ましく、雄々しいのに対し、清爛は優雅で美しく、中性的。長い髪は高い位置で結われ、動くたびに一本一本が風に舞う様に揺れ動く。集中している時の鋭く流れるような目つき、この姿を見て見惚れない者がいるだろうかと吏志は思った。

「これはやはり、面が必要ですね・・・」

吏志はやれやれと小言を漏らした。

「だいぶ良くなりました、ではまた。」

初老の男はそう言って去って行った。

「まだ駄目か・・・」

清爛は崩れる様に倒れてひっくり返った。

「お師範は相変わらず厳しいですね。」

吏志はひっくり返っている清爛の横に立ち、見下ろす。

「毎年だが、今年は増して厳しい気がする。」

「それはあなたの腕が鈍っているからじゃないですか?」

笑顔で言う吏志に返す言葉もない清爛。

「皇帝の前で踊るのですから、覚悟頂かないと。所詮あなたはただの剣劇師なのですから。」

「くそー・・・」

「面を付けない姿を見られる私が実は一番特別なのかもしれませんね。」

「顔出しは絶対に嫌だ。」

「えぇ、出して踊りなんてした日には皇帝と高蓬様に首を狙われてしまいます。」

「・・・・・」

「内宮の妃の数が減っては大変です。」

吏志はやれやれと呟いた。

「さぁ、湯を準備していますから、戻りますよ。」

清爛は立ち上がり孫文の部屋を目指した。

湯に入りながら、たまには体を動かすのもいい物だと清爛は思った。もともと高蓬の様な軍人になりたかった清爛は体を動かすこと自体は嫌いではなかった。しかし自分は軍人として剣を握るよりも、芸として握る方が良いと思った。先人が作り上げた完璧な型を受け継ぎ舞う、うまくできた時の達成感は非常に心地よいと思った。

清爛はふと自分の手を見た、筆を握っている時には出来ない肉刺ができている。それは数日前までなかったものだと思った。一年ぶりの光景に、時の流れを感じていた。

清爛が内宮に通いだして数日、その夜翠明は湯から上がった帰りにたまたま清爛の部屋の戸が半分空いていることに気が付いた。

不思議に思う翠明。戸を叩いてみるが中から反応はない。翠明は首を傾げ中に向かった。そしてそのまま確認するように歩き、寝室から明かりが漏れているのを見つける。清爛がいるのだろうかと思い覗き、翠明は立ち止った。

そこには、木刀を握り剣劇を舞う清爛の姿があった。

翠明は女が舞う舞しか見たことがなかった。美しくしなやかで柔らかな舞とは違い、今目の前で舞っている清爛の姿は動き一つ一つが機敏であり大きく、かつ流れるような動きだった。それは筋骨隆々な男性ではなく清爛のような無駄のない線の細さと身の軽さがあってこそなのだろうと思った。

翠明はしばらく、そんな美しい清欄の姿に見入っていた。

必死で踊っていた清爛はひと時翠明の存在に気が付かなかった。ふと向きを変えた時に視界の隅に人影を感じ慌てて動きを止めた。そしてそれが翠明とわかるや飛び跳ねて驚いた。

「翠明!?」

翠明は踊り終えた清爛に拍手を贈った。

「なんでいる!?」

驚き焦っている清欄の言葉に、翠明は頭を下げて部屋に入ると筆を執った。

【戸が開いていたので、気になって】

清爛はまじめに練習をしていたところを見られてしまい動揺していた。そしていつから見られていたのかがわからず恥ずかしくて顔を赤くした。

【お上手ですね、驚きました】

「いや、えっと・・・」

翠明にはなぜこんなにも清爛がうろたえているかがわからなからず首を傾げた。

清爛は上がっている息と気分を落ち着かせ、持っていた木刀を置いて翠明のいる方へ足を向けた。

【昔からやられていたのですか】

「あぁ、まぁ、」

【園遊会でお披露目なさるのですか】

「・・・あぁ、そうだ、ただ誰ともわからないように面を付けてやるんだ。」

なぜ面など付けてわからないように顔を隠して踊るのだろうかと翠明は思った。そんな翠明を見て、清爛は頭を掻いた。

「まぁ、悪い悪戯みたいなもんだ。腕試しだよ。」

その言葉を聞いて翠明は、この男ならそんな事もするだろうと思った。

【もったいないですね】

「何がだ?」

清爛は首を傾げた。

【面を付ける事がです】

「どうして?」

清爛は再び首を傾げ、翠明が笑う。

【付けない方がお美しいからですよ】

清爛は真っ赤になった。

そんな姿に翠明は更に笑った。

「お前は、やらないのか?」

今度は翠明が首をかしげる。

「舞踊はしないのか?」

この男は何を言っているのだろうかと思いながら翠明は筆を動かす。

【音が聞こえないので踊れません】

そうだったと清爛は思い出し、何とも言えない気まずさを覚えた。翠明は筆を動かした。

【男の人が踊る姿を始めて見ました】

「・・・そうか、」

【多才でいらっしゃいますね】

翠明は清爛に微笑んだ。

【無事に披露できます様祈っております】

翠明はそう書いて、頭を下げて部屋を出て行った。

翠明の目に、書官孫文は一体どんな風に見えているんだろうかと清爛は思った。自分で考えてもただの書官じゃないだろうと思った。宮中への文に目を通し、返事を書き、自由に出入りをし、芸事まで披露する。どう考えても普通の書官ではないだろうと思った。

翠明はもしかしたら、何かに気が付いているんじゃないかと思った。そして、気が付いていながらもあえて黙っているのではないかと思った。

いずれ全てを伝えなければならない時が来るのではないか、清爛はそう思っていた。


とても綺麗に晴れた日、その日清爛は朝から書斎におらず、吏志も玉連もいない為翠明は一人で過ごす事となった。

宮中からはドラの音や様々な楽器の音が聞こえてくる、そんな音で外宮の者たちは園遊会が開催されている事を察し、中の豪華さに想いを馳せた。

しかしそんなにぎやかな音は翠明には届かない、翠明にはいつもと変わらない日常だった。

園遊会は屋外の庭園で開催されていた。敷石の庭園は美しく豪華に装飾され、皇帝と高蓬、そして高蓬の息子の翔栄が上座に並ぶ。それぞれの横には皇后と第一妃、そして上級妃たちが並んで座っていた。それ以外に高い役職の者たちも参加することになっており、首席官僚吏志も当然参加していた。

しかしそこには高蓬の弟である『清爛』と書官の最高位である『孫文』はいなかった。

毎回この二人が表に出てこない事を不思議に思い口にする者が数名いるが、ほとんどの者たちは毎回であることを知っているため滞りなく事は進んでいった。

父である皇帝もまた、清爛がこの場にいないことに対し何も言わなかった。

そして、いない理由を知っているのは高蓬と吏志だけだった。

清爛は誰にも気づかれないまま衣装を身に纏い面を付ける。そして皇帝の前で膝を付き頭を上げた。

やがて音楽が鳴りその音に合わせて清爛は舞った。派手に装飾された大きな剣、動きに合わせてなびく衣装と長い髪、その完成された美しい舞に誰もがその面の下の素顔に想いを馳せた。

清爛は最初から最後まで一言も発せず、踊りを終えて皇帝の前を下りた。

何度見ても美しく気高いと高蓬と吏志は思った。

そしてこの男の美しさは、妓女や遊女と呼ばれる女達はもちろん、ここにいる妃たちよりも秀でていると思った。

清爛は裏に下がると面を外してひっくり返った。

「いつも通り、お美しい舞でございました。」

師範である初老の男が頭を下げた。

「また来年も呼ぶと思う・・・」

「ではまだ、生きていましょう。」

「頼む・・・」

男はにこやかに去って行った。

やっと終わったと清爛は思った。

文学の道に方向を変えて以降、剣術は芸事としてのみ続けていた。それを知って面白がった高蓬が何度となく自分の部下と組み手をさせ、その都度清爛は勝っていたが、やはり人に向けるより踊っている方が好きだと思った。

清爛はふと、翠明が踊れたのならどれだけ美しいだろうかと思った。

淡い色の衣装を着て、漆黒の髪をなびかせ踊るその姿はきっと目を引くほどに美しく、天女のごとくだろうと思った。彼女が妓女であったのならとても高い値段が付いたのかもしれないと思った。

「もしかしたら俺はたいぶ安く買ったのかもしれないなぁ・・・」

清爛はそんな姿を想像して、つぶやいた。


舞台を終えて書斎へと戻る清爛、廊下でばったりと翠明に出会った。

翠明は清爛に頭を下げ、微笑んだ。

「終わった、汗を流したいんだが湯の準備を頼めるか?」

翠明はうなずき、湯の準備を行った。

湯に入り汗を流し、長い髪を雑に拭くと清爛は部屋に戻り寝床に転がった。

今日の仕事はもう終わったと思うと体中の力が抜けた。

そんな時、誰かが部屋にやって来た気がして清爛は顔を戸の方に向けた。

静かにやって来たのは翠明だった。

翠明は盆に菓子とお茶を乗せていて、清爛に微笑むとそれらを机に並べた。清爛は起き上がり椅子に座る。翠明は筆を執った。

【お疲れだと思いまして、甘いものをお持ちしました】

ふと、腹が減っていると清爛は思った。そして昼食を取っていないことに気が付いた。

「ありがとう、」

清爛は月餅に手を伸ばし口にする、そして大きく息を吐いた。

なぜかすごく落ち着くと清爛は思った。今やっとすべての緊張から解放された気がした。

翠明はそんな清爛を見てゆっくりと立ち上がると筆を執る。

【少々お待ちください】

「?」

静かに部屋を出て行く翠明。

清爛はそんな翠明の行動の意味が分からず首をかしげ、菓子を口にしながら出て行った方を見つめた。

翠明はすぐに戻ってきた。手に多くの手ぬぐいを持っている姿に清爛は再び首を傾げる。翠明はそんな手ぬぐいを清爛の横に置くと、一枚だけ取って清爛の後ろに立った。そして、濡れている清爛の長い髪をそっと拭き始めた。

「えっ!!!」

驚いて固まる清爛、翠明はそんなこと関係ないと言わんばかりに清爛の濡れた髪をていねいに拭き続ける。

「いやっ、まて!」

狼狽えて叫ぶ清爛の声は翠明には聞こえない。ふり向きたいが髪を持たれていて振り向けない。清爛はどうしていいかわからず、咄嗟に手を伸ばし筆を執り文字を書いた。

【そんなことしなくていい】

その字の雑さからとても急いで書いたのが翠明に伝わる。翠明は背後から手を伸ばし筆を執るとその横に書き足した。

【濡れたままでは風邪をひきます】

【自分でやるからいい】

【お気になさらず】

翠明は清爛の髪にくしを通しながら丁寧に拭いた。

【髪が長いので乾かすのは時間がかかります、今日はお披露目もありお疲れでしょう。ゆっくりされてください】

清爛はしばらく固まったまま翠明に髪を触られていた。

しかし最初こそ驚き固まってしまった清爛だが、やがて心地よさを感じ始めた。翠明の細い指が時折優しく触れる。それは妙な安心感を清爛に与えた。

清爛はお茶を飲み、菓子を食べながら黙ってされるがままになっていた。そしてふと、皇帝である父や妃たちは毎日このような事をされているのだろうかと思った。

身の回りの事はすべて使用人が行ってくれる生活、髪を洗うのも乾かすのも自分では行わないのだろうと思った。清爛は早い歳で宮中を出ていたので、幼き頃以外そんな生活を送った記憶はなかった。

今自分がされている行為は、時折玉連が世話を焼き行うものとは全く違うと清爛は思った。

「気持ちいいな・・・」

清爛はぼんやりとつぶやいた。

翠明は清爛の髪を乾かしながら、とても手入れされている事に気が付いた。この長さでこれだけの美しさを保つのはなかなか難しいのではないかと思った。

ふと清爛の顔が見えないことに気が付く翠明、真後ろに立っている事で清爛の唇や表情を読むことが出来ない。それは非常に不便であると翠明は思った。清爛と生活をしていく中で、会話をし、意思の疎通を行う事が普通になった生活の中で、翠明は音のない生活への不自由さを感じることが増えた気がすると思った。それは今まであまり感じたことのないものだった。

「・・・・?」

清爛の頭が揺れたと翠明は思った。ゆっくり項垂れる様に頭の位置が下がる清爛、翠明はそっと手を止めて顔を覗き込んだ。

清爛はお茶に手を掛けたまま、うたた寝を始めていた。

翠明はその手からそっと茶器を取る、そしてそのまま優しく静かに髪を乾かし続けた。

コクっと一つ大きく体が揺れて、清爛は目を覚ました。

そして自分が寝ていたことに気が付いて驚き辺りを見渡す。その時に髪を引かれる感覚を覚えて事態を思い出し慌てて振り向いた。

翠明の手から引かれる様にして零れた髪はもうほとんど乾いており、すべる様に清爛にかかった。

翠明を見上げ、固まる清爛。翠明は微笑んだ。

「・・・ごめん、寝てた」

翠明は首を振る。

「・・・髪、ありがと、」

翠明は笑った。

【お疲れですね、少しお休みになりますか】

「・・・あぁ、そうする。」

【夕食の用意が出来た頃に、声をかけに参ります】

翠明はそう書くと頭を下げて部屋を出て行った。

清爛は自分の髪を触ってみた。翠明がしていたのと同じように触っているはずなのに、あの心地よさを感じない。

布団に倒れて天井を見つめた。翠明といるときの自分は随分と無防備だと清爛は思った。翠明に触れていると魂が抜かれるかのように力が抜け、心が静まると思った。今もまたそうだった。翠明にもたれてうたた寝をしたことが今までに何度もあった。この溶けてゆくような安心感は翠明といる時しか感じた事がないと思った。

清爛は、清爛として内宮を歩いているとき、孫文として外宮を歩いているとき、皆が自分を見ては頭を下げていると思った。しかし翠明はそんな自分を皇族として見ることはない。そしてまた、書官孫文としての自分にも特別な態度を取ることなく、孫文と言う一人の男として向き合ってくれていると思った。それが清爛にはとても心地よかった。

清爛はそんなことを考えながらぼーっと天井を見つめているうちに、再び目を閉じていた。


夜、清爛は翠明の部屋にやってきていた。

【だいぶお疲れだった様ですね】

翠明が笑う。

「やっと終わったよ。」

【少し勿体ない気もします】

「そぉか?」

翠明が微笑む。

【えぇ、十分に稼げますよ】

清爛が笑った。

【園遊会とはどの様なものなのですか】

清爛は翠明に園遊会の様子を伝えた。豪華で派手な食事に装飾、音楽や舞踊などを説明した。翠明はそんな清爛の説明を穏やかな表情で聞いていた。そしてふと、疑問がわき筆を執る。

【吏志様は参加されて、孫文様は参加されなくてよかったのですか】

清爛は一瞬固まる。

「孫文は、こういうのが嫌いだと言う事になっている。」

まさか孫文と清爛は同一人物であり、ややこしくなるから両方参加していないとは言えなかった。参加しないなら踊れと言ったのは高蓬であり、以降それが習わしになってしまっている事もまた、言えなかった。

翠明は理解した様子だった。

清爛はまた、翠明に言えない事が増えたような気がして複雑な心境になった。

翠明に、すべて話してしまいたい。清爛はそう思っていた。

自分が清爛である事、皇帝の次男である事、なぜこの仕事をしているのか、全て話してしまえば楽になる様な気がした。翠明が自分を縛る見えない多くの糸から解放してくれるんじゃないかと思った。

「翠明、」

翠明は笑顔で首をかしげる。

「・・・いや、なんでもない。」

「?」

翠明は再び首をかしげて、笑った。

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