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華と夢11

暑い時期が続いていた。

書斎は直接陽の光が当たる場所ではないものの、それでも気温は高く集中力を欠いた。

「さすがにこうも暑いとなぁ・・・」

清爛が筆を置いて着物の襟を引いて広げた。

「孫文様・・・」

「ん、」

「翠明様がいらっしゃいますよ・・・」

「あっ・・・」

清爛は同じ室内に女性がいることを思い出し、いそいそと着物を直す。

そんな姿を見て吏志はため息をついた。

吏志は二人に冷茶を渡す。

翠明は顔を上げ、吏志に頭を下げた。

「しかし・・・何やら熱病が流行っているみたいですね。」

「あぁ、その様だな。」

外宮では今、熱病が流行っていた。使用人たちがバタバタと倒れ、医局は大騒ぎになっている。

「薬は足りているのか?」

「今全力で手配をさせているのですが、なにせ町でも流行っているようで。」

「この暑い時期に寝込むのは嫌だなぁ・・・」

「予防の薬を処方してもらっていますから、お二方ともしっかり飲んでくださいね。」

「不味いんだよなぁ、あれ。」

「お願いですからかからないでくださいね・・・」

それから数日後の朝、清爛はすごく不快な目覚めだと思った。

身体が重くだるい、それに加え体の中が熱い気がした。清爛はまず間違いなく、自分は流行りの熱にかかったのだろうと思った。

「まずいなぁ・・・」

清爛は重い足取りで竈まで行き、水を汲んで飲んだ。

そんな清爛の様子に一番初めに気が付いたのは翠明だった。

その日も翠明は朝早く起き、廊下の掃除を行っていた。梁を拭こうと井戸に水を汲みに行ったとき、台所で水を飲む清爛を見かけた。それ自体は今までに何度か見た光景ではあったが、何か違和感を覚え、なんとなく清爛の方に足を向けた。

清爛は視界の隅に入る翠明に気が付き顔を向ける、翠明はそんな清爛に挨拶を行った。

片手を上げて答える清爛。やはり何かがおかしいと思い翠明は更に清爛の元へと歩み寄った。

翠明は、清爛の顔を覗き込んだ。

「どうやら、流行り熱にかかったみたいだ。」

清爛はそう言うと、力なく笑った。

翠明は驚き、清爛の身体を支える様に手をかける。その身体はとても熱いと翠明は思った。翠明は慌てて、清爛を部屋に連れ戻そうと体を押して歩くように促す。清爛は促されるまま、ふらふらとした足取りで自室を目指した。

翠明は清爛の部屋に入るのは初めてだった。

何やら重い扉、壁のつくりも自分が住んでいる部屋とは違う気がした。

翠明は清爛を寝床に横にさせると、窓を開け換気をする。そして、薄目でぼーっと天井を見つめる清爛の体に再び触れた。やはり体が熱いと翠明は思った。玉連が朝食の支度を開始するまでにはもう少し時間がると判断した翠明は部屋を出て、桶に水を入れて部屋に入る。そして手ぬぐいを絞り、清爛の額に置いた。

翠明は何か書くものを探した。しかし、一見した感じ部屋の中には紙や筆などはない。翠明はぼーっとしている清爛に一礼して部屋を出る。そして自分の部屋に戻り、半紙と筆、水の入った墨壺を手にして部屋を飛び出た。ちょうどその時朝食の準備でやって来た玉連と鉢合わせた。

「おはようございます、翠明様。」

玉連はそう挨拶をして、ふと翠明の手の中にある物に気が付いた。そして何かを伝えようとしている翠明の様子にも気が付いた。

「どうかなさいましたか?」

翠明は玉連に頭を下げ、なんとか事態を伝えようと狼狽える。そんな翠明を見て、玉連はピンときた。

「孫文様に何かありましたか?」

翠明は強くうなずき、部屋に足を向ける。玉連もその後ろに付いて行った。

「おやまぁ・・・大変。」

玉連は熱にうなされている清爛を見た。

かがんで手ぬぐいを変える翠明、玉連は翠明の肩に手を置いた。

「お医者様を呼んできます、ここをお願いしますね。」

翠明はうなずいた。

玉連に呼ばれてやって来たのは白皙だった、白皙は手早く清爛を診察する。

「今流行っている熱病ですね、お薬を処方しましょう。」

「悪いものですか?」

一緒にやって来た吏志が問いかける。

「熱が引けばすぐ良くなりますが、引くまでが少々長いようです。水分をしっかりと取らせるようにして下さい。」

三人は白皙に頭を下げた。

吏志は気が気ではなかった。熱病にかかっているのは孫文と言う書官ではあるが、その男は皇族の清爛だからだ。もし清爛に何かあってはそれこそ一大事だった。

外宮は今熱病の患者が多く出ており、医師たちも忙しい。白皙も孫文につきっきりと言う訳にはいかない。かといって今の状態で内宮に連れて行けば中に病を持ち込むことになるし、何より孫文が清爛だとバレてしまう。

吏志は頭を抱えた。

翠明は熱にうなされている清爛の汗を拭い、絞った布を額に置いた。

「困りましたねぇ・・・」

玉連がため息とともに言葉を発した。

「えぇ、困りました。」

翠明は、視界の端で玉連と吏志が話をしているのを感じて立ち上がった。

「流行り病ですから、吏志様にまでうつしては大変です。吏志様はこのお部屋には入られない方がよろしいかと。」

「それは玉連様も同じです、もし玉連様がうつり宮中に持ち込んだら・・・」

手が離れているとはいえ、玉連は清爛の兄高蓬の息子である翔栄の世話もしていた。翔栄はまだ幼い、熱病になどかかっては命にかかわることが容易に想像できた。

翠明はそんな二人の表情と口を読み、筆を走らせる。

【私が看ます】

吏志と玉連は顔を見合わせた。

【お二人にうつっては良くありません、私が看ます】

「しかし、翠明様にもうつってしまっては・・・」

吏志の言葉に翠明はにこりと微笑む。

【花街の人間は流行り病にはかかりません】

吏志と玉連は再び顔を見合わせた。

「そうなのですか・・・?」

翠明は、微笑んだ。

吏志と玉連は顔を見合わせ唸った。

翠明の申し出はありがたい事だが、清爛と言う皇族を思うとその命が係わる様な状況で託していいのかと吏志は深く悩んだ。ここはやはり、内宮に連れて行き医師の下に置いた方が良いのではないかと結論を出そうとしたその時。

「お願いできますか?」

そう言葉を発したのは玉連だった。

「お薬の準備やお食事など、お手伝い出来る事は致しますから、お世話を頼んでもよろしいでしょうか。」

翠明は手を合わせ頭を下げた。

「玉連様、」

「翠明様にお願いいたしましょう。」

そう言って、玉連は吏志に笑いかけた。

朝寝付いたまま清爛は目を覚まさなかった。翠明はその間ずっと水で絞ったタオルで額や体を拭き、そばに居続けた。頻繁に桶の水を変え、手ぬぐいを変えた。

「翠明様、何かお飲みになって下さい。」

玉連が翠明の肩に手をかけた。

玉連は笑いかけ、翠明を椅子に座らせる。そして冷茶と茶菓子をいくつか用意していた。

「幼き頃よりよく熱病を患っていました、大丈夫だと思いますよ。」

翠明は玉連に、気になっていた事を問いかける。

【玉連様は、孫文様の幼き頃をご存じなのですか】

玉連はうなずいた。

「はい、よくお相手をさせて頂きました。」

翠明は孫文を見た。この孫文と言う男はいったい何者なのだろうと考えた。玉連が内宮の女官であることは知っていた。そんな玉連が幼い頃より面倒を見て来た人間、そう思うと孫文の身分はかなり高い事が想像つく。もしくは、玉連と親族であるかのどちらかだろうと翠明は思った。

「とてもやんちゃでしたが、ある時から突然筆を持ち始めたんですよ。その時は驚きました。何があったのでしょうね、私にもわかりません。」

玉連は何かを思い出し懐かしむように目を細める。

「目を覚ましましたらお薬を飲ませて下さい。何か食べるものが必要そうでしたら粥を置いていますので食べさせてやってもらっていいですか?」

翠明はうなずいた。

「翠明様が倒れられては大変です、必ず、お休みを取ってくださいね。」

翠明は再びうなずいた。

清爛は夕刻前に目を覚ました。それは翠明が額の手ぬぐいを変えたと同時だった。

「・・・翠明?」

翠明は清爛の顔を覗き込んで、うなずいた。

翠明は枕元に水入れと湯呑、薬を用意した。体を起こそうとする清爛に手を添えて、翠明は体を支える。そして水と薬を手渡した。

「まずいよなぁ・・・薬って。」

清爛はそう言うと深く息を吐いた。薬を飲むことをためらう清爛に対し、翠明は顔を横に振る。

「わかってる・・・飲むよ、」

清爛はそう諦めた言葉をつぶやき、薬を飲んだ。翠明は空になった湯呑に水を注ぐ。清爛は深く息を吐き、その水も飲みほした。

【何か食べますか】

翠明は書いた文字を見せる。

「いや、今はいい・・・」

翠明はそっと清爛の肩に手を添えて上着を脱がす、そして固く絞った手ぬぐいで清爛の背を拭いた。

「お前一人か?」

翠明が正面に回ってきたタイミングで青巒は声をかけ、翠明はうなずく。

「迷惑かけたな・・・」

翠明は首をふり新しい上着を清爛に着せた。そしてその身体をゆっくりと倒し寝かせる。

「もうしわけない・・・」

清爛はそう言って再び目を閉じた。

寝苦しそうに眉間にしわを寄せて寝返りを打つ清爛の額や身体を翠明はまめに拭いた。襟元から首元を拭くと、まだ熱が高いのかその体は熱かった。時折清爛の口元が動くが、翠明にはそれが分からなかった。言葉なのか言葉ではないのか、熱でうなされている清爛の口元を読むことがどうしてもできない。そんな清爛を見て、翠明は、耳が聞こえない事の不自由さを思い知らされた。

翠明は清爛の身体を拭きながら不思議に思っていた。書官として書を扱い常に机に向かって仕事をしているはずの清爛、しかしその身体には筋肉がしっかりと付いており、武芸でもやっているかのようだと思った。何かそう言った趣味でもあるのだろうかと翠明は思った。

物音で気が付くことの出来ない翠明は清爛の元を離れることが出来なかった。見かねた玉連が時折代わるものの、やはりすぐに戻ってきてしまう。

かいがいしく清爛の世話をやくそんな翠明を見て、吏志は大変申し訳ないと感じていた。

吏志は秘密裏に翠明の身元を調べていた。それはもちろん、清爛を脅かす不安分子ではない事を確認するためだった。吏志自身、翠明を悪くは思っていないが、やはり清爛の身分を思うと疑い深くなる。今、目の前で自分の時間の全てを費やして清爛を看ている翠明を見て、疑いの眼差しを持ちながら翠明の素性を探っている自分に嫌気がさしていた。

主席官僚であるが故、人を調べ裁く事が仕事であるとは言え、翠明を疑っている事に心が痛んだ。

翠明は部屋に戻らず、清爛の部屋でほとんど寝ずに夜を明かした。

朝、いつもの時間になっても清爛は起きていなかった。翠明は桶の水を変え、新しい手ぬぐいで清爛の額や体を拭いた。

薬の時間になると翠明は清爛を起こし、薬を飲ませる。そしてその後再び目を閉じる清爛。

それが丸二日続き、いよいよ翠明の体力も限界が近くなった三日目の夜、夜中に清爛は目を覚ました。

身体はいくらか軽くなったと清爛は思った。真っ暗な部屋、目だけを動かして周囲を把握してみる。体を起こそうと手を動かしてみると何かが手に当たった気がした。その方向を見ると、そこには床に座り寝床の縁に腕を組み顔を埋め寝ている翠明がいた。

清爛は驚き跳ね起きそうになった。

息を整えいったん落ち着き、改めて状況を理解すると、清爛は翠明を起こさないようにそっと起きた。

寝ている翠明はいつも高く結っている髪を横に緩く束ねていた。その姿はここに来た時と同じようだと清爛は思った。しかし今目の前にいる翠明はあの時の様に痩せこけた姿ではなくしっかりとした女性の体形をしていた。荒れた手足もきれいになり、髪の艶も戻っていた。

そんな姿を見て、清爛は翠明をここに連れてきて良かったと思った。

翠明の性格を思えば、自分が倒れてからずっとこの場を離れず看病してくれていたであろう事が容易に想像ついた。

そんな翠明に対し清爛の中に不思議な感情が起こっていた。

それはつきっきりで看病してくれた事に対する感謝と申し訳なさと、また別の、胸の奥が熱くなるような何かがこみ上げてくる様な感情だった。

清爛は、翠明の頭にそっと手を下ろした。そして、数度、その頭を優しくなでる。そして再びゆっくりと布団に体を倒し、清爛は眠った。

朝、翠明はすっかり眠り込んでしまっていた事に驚き目を覚ました。目の前には寝ている清爛の姿がある。慌ててその顔を覗き込んで見ると、汗は引き、穏やかそうな顔つきになっていた。翠明はそっと清爛の額に手を置いてみる。昨日までの熱はだいぶ下がっているように感じた。

翠明はまるで力が抜けたようにその場に再び座り込んだ。表現のしようのない安堵の想いが翠明の胸の奥から込み上げてくる。ともすればそれは涙が出そうな程だった。

翠明は部屋の戸を開けた。陽が昇る前の涼しい風が窓から外へと抜けて行く。

再び寝室に戻ってみると、清爛がゆっくりと起き上がって、体を伸ばし始めた。翠明にはその光景がなぜかとても輝いて見えた。

ゆっくり歩み寄る翠明、清爛はそんな翠明に気が付き顔を向けた。

「おはよう、翠明。」

翠明は清爛の足元にかがみ、挨拶をした。

清爛はそんな翠明の頭に手を置き、翠明は顔を上げた。

「迷惑をかけた、申し訳ない。」

翠明は首を振る。

少し照れながら笑う清爛に、翠明は安堵の微笑みを向けた。

「何か汁物が欲しいんだが、玉連はまだかな。」

翠明はうなずくと、筆を執る。

【少しお時間を頂けますか、準備します】

「あぁ、すまない。」

翠明は立ち上がり、頭を下げると部屋を出て行った。

その後清爛も立ち上がり、机にあった湯呑の水を飲み干した。そしてそのまま部屋を出て廊下に出る。朝陽が出る前の薄暗い夜明け、もう何日もこの光景を見ていないような気がして、なぜか懐かしく思えた。そして熱を出したのなんていつぶりだろうと思い返してみる。きっとまた玉連が小言を言うだろうなと思いながら、清爛は思い出し笑いをしていた。

幼き頃熱を出しては玉連が付きっきりで面倒を見てくれた事を思い出した。そして治るといつも小言を言われた。きちんと湯に入らないからだ、好き嫌いをするからだなどいろいろ言われたものだと思い返した。

しかし今回は玉連ではなく、翠明が側にいた。

今朝自分が声をかけた時のあの翠明の表情は、きっと忘れられないだろうと清爛は思った。あんなにも心から安堵した顔を見ると、翠明がどれだけ心配をし、不安な思いをしていたのかが手に取る様にわかった。

「薬は、ちゃんと飲まないといけないなぁ・・・」

清爛は部屋に戻った。

ややあって翠明が汁物を椀に入れて持ってきた。

清爛はそれをそっと覗き込んで、違和感を覚える。そんな清爛を見て、翠明が筆を走らせた。

【毒見が必要でしたら今ここで飲みますよ】

「いや!違う!」

清爛は慌てた様子で翠明に顔を向けた。

そして、再び椀に目を落とし、匙で救って口に運んだ。

「やっぱり、玉連の味じゃない。」

【お口に合いませんか】

「いや、そうじゃないんだ。これを作ったのは?」

【私です】

翠明が首を傾げた。

【干し肉と瓜と生姜が入っています、本来は瓜をもっと大きくするのですが、潰して汁物にしました】

熱すぎない適度に暖かいその椀は飲み手の事を非常によく考えていると清爛は思った。熱すぎては飲みにくい、冷えていては病の者には良くない。崩してある瓜、細かく裂かれている柔らかい干し肉、そして細かく切られた生姜。この椀にはとても強い、優しさが込められていると清爛は思った。

「これは、母親の料理か?」

翠明はその言葉にしばらく考える。

【そうかもしれませんね】

なぜと問いたそうな翠明を見て、清爛は再び椀を覗いた。

「俺は、玉連の料理しか覚えがないんだ。」

翠明は目を細めた。

「俺の事、玉連から何か聞いているか・・・?」

【玉連様からは、孫文様を小さい時から見ていたと聞いております】

翠明は余り深く答えなかった。

「俺は、母親の記憶がほとんどないんだ。だから、母親の料理を食べたことがない。」

翠明はこの時初めて、なぜ清爛に自分と同じようなものを感じるのかわかった気がした。そしてなぜこの人は、こんなにも多くの人に囲まれているにもかかわらず孤独を感じさせるのか、それもわかった気がした。

「正直に言う、これは本当においしいと思う。」

清爛の言葉に、翠明は一瞬言われている意味がよくわからず、数度まばたきをしてからぎこちなく礼を示した。

「懐かしいとかそういうのは俺にはよくわからない、でも、懐かしさを感じる。また作ってほしい。」

【こんな物でよろしければ】

思いのほか、すがるような目で言ってきた清爛に翠明は戸惑いながらも、微笑んで答えた。

そこから先の清爛の回復は著しかった。食事もきちんととれるようになり、やがて熱も完全に引いた。

「だいぶ溜まってしまったなぁ・・・」

清爛は書物の山を見て頭を掻いた。

「仕方ありません、翠明様はあなたにつきっきりだったのですから。」

清爛は横目で翠明を見た。翠明は早速手紙の山を仕分けし始めている。

吏志はそんな翠明の視界に手を差し入れ、それに気がついた翠明は顔を上げた。

「翠明様、この度はお疲れ様でした。」

翠明は手を合わせ、頭を下げた。

そんなやり取りを見て清爛は気恥ずかしそうに目を逸らす。

吏志は翠明に聞きたい事があった。それは数日前の翠明の言葉であり、いずれ確認してみようと思っていた事だった。

「しかし翠明様、なぜ花街の人間は流行りの病にはかからないのですか?」

「そうなのか?」

博学な吏志は、ずっと疑問に思っていた。

そんな吏志と清爛の問いかけに、翠明はひょいっと目を逸らす。

「・・・えっ?」

吏志がまさかと言う顔をした。清爛はわかっていない。

「翠明様、嘘をつきましたね・・・?」

翠明はわざとらしく口元を抑えながら頭を下げて部屋を出る。

吏志はやられたと思った。きっとあの時翠明は自分たちの会話を読んで状況を察したのだろうと思った。

吏志はこの翠明の無鉄砲さにも今後悩まされて行くのだろうと察した。

「おい、翠明!待てよ!どういうことだ!?」

去り行く翠明を追い走る清爛、吏志にはそんな清爛と翠明の関係が対等ではなく、翠明の方が上手に見えていた。

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