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08 令嬢探し

 翌日の朝、レオナルドの目の前にルイスが調査書を差し出して来た。

「レオ様、今から確認にいきますよ」

「もうリストアップしたのか? 早いな」

「その特徴を持つ令嬢はそんなにたくさんはいないので、今日中には確認が終わるでしょう」


 ランチタイムに学生が利用するカフェテリアや教室をこっそりのぞいたりして確認していく。


「これで最後ですよ。13メートル先を歩いている二人組の女子生徒のうち右側の令嬢です」

「顔をみなくても、その令嬢ではないな」

「その理由は?」

「体型が違う。……その、女性には失礼かもしれないが、少しふくよかな感じだから」

「ああ、ぽっちゃりをだいぶ通り越してはいますね」

「ルイス、もう少し言葉を……」

「ではこれで確認は終わりです。ちょっとサロンに移動して話しましょう」

「……」


 帝国の皇太子である立場上、学園の方で留学中に使える専用サロンを用意してくれていた。レオナルドとルイスのためのサロンだ。

 そこでスーパー侍女のエマも交えて作戦会議をする。


「やはり、レオ様の妄想だったとか」

「僕は白昼夢説に1票だ」


 どこが作戦会議だ。

 二人はすっかり『レオナルドいじり』モードだ。


「なあ、ミールは俺の味方だろう。あの子は実在してたよな?」

 サロンの中でうろうろしていたミールは、レオナルドをちらりと見ただけでスルーした。

「ミールの裏切り者~!」


 ルイスのリストはいつも完璧だし、なにより「気配が消える」令嬢なので普通の探し方では見つけられないのかもしれない。

 完全に手詰まりだった。


「レオ様がその特徴の女性を探しているという噂を流してみては?」

「もう一度話をしてみたい程度の軽いものなら大騒ぎにならずにいけるか?」

「ですが、噂はあることないこと尾ひれがつきますよ」

「ルイスの言うことも一理あるが、本人が動いてくれない限りもう会えないかもしれないんだ。そんなの今後の人生、耐えられる気がしない!」

「わかりました。その令嬢の耳に入るといいですね」



 ◇◇◇


「ねぇ~、聞きまして? レオナルド殿下がこの学園の令嬢を見初められたみたいですわ」

「えっ、どちらのご令嬢ですか?」

「残念ながら名前は分からなくて、プラチナブロンドの髪にエメラルドグリーンの瞳を持つ()()美少女を探していらっしゃるとか? その条件に当てはまる方が誰なのか、今この話でもちきりですわよ」

「プラチナブロンドとエメラルドグリーンのご令嬢は、数人いらっしゃいますが、美少女というのは主観が入るので微妙ですわね」

「そういえば、あのリリアーヌ嬢もブロンドで、グリーンと言えば言えなくない瞳の色、顔は……まあまあ? よね?」

「それだけはないと祈りたいですわ」

「でも、ああいう令嬢らしからぬ庶民っぽいタイプが新鮮でモテたりしますのよ」

「「見る目のない男って嫌ですわぁ~」」



 噂好きのクラスメイトの会話が、ソフィアの耳にも届いた。

 途中からレオナルドの話ではなくなっていたが。


 髪や瞳の色はソフィアの素顔に当てはまっているが、まさか、まさか自分のことではないだろう。

 とは言えこの件は早く父と兄に相談しないと、と思うソフィアだった。

 だが、レオナルドが女性を探していると聞いてから、それが自分ではなかった場合を想像するとそれはそれでなんだかモヤモヤするのだった。



 ◇◇◇


 レオナルドがプラチナブロンドでグリーンの瞳の女性を見初めたと、ほどなくしてリリアーヌも知ることになった。


 それってもしかして私のことじゃないかしら。あなたが見初めたのはこのリリアーヌだって早くアピールしないと。


 今の恋人ダミアンは、地位が高いのとお金持ちというところが気に入っているが、帝国の皇太子と比べたら見劣りする。

 レオナルドが自分を求めているならダミアンには諦めてもらうことになる。


 少し前に城下町を歩いていた時に出会った占い師に言われたことを思い出す。

『あなたは身分のある男と結ばれる運を持っているよ』


 そうよ。あれはこのことだったんだわ。


 それからは、昼休みや放課後にレオナルドが1人になる機会をさぐっていたが、大体はルイスが側にいるし、いろいろな人と交流していて話しかけるチャンスがない。


 ある時、レオナルドやルイスと王国の高位貴族の令息たちとの会話が聞こえてきた。

「帝国皇太子の隣に立つとしたら、それ相応の教育を受けたご令嬢が望ましいですよね」

「それに越したことはないが、向上心のある女性なら、教育を受ける機会はいくらでも与えられるからな」

「なるほど、確かに前向きな令嬢は好ましいですね」


 リリアーヌはこれだと思った。


 ダミアン様に王子妃教育を受けたいと伝えれば、向上心? をアピールできるし、ついでにレオ様の隣に立つのにふさわしい教養も身について、一石二鳥だわ。私って頭いい~。


 リリアーヌは単純な頭の持ち主だった。


 さっそく、ダミアンのところに向かう。

「ダミアン様ぁ~、リリアーヌはダミアン様にふさわしい女性になりたいですぅ。王子妃教育を見学したいですわぁ~」

「そうか、リリアーヌは俺のために頑張ろうとしているのか、かわいいい奴だ。見学と言わず、王子妃教育に参加できるよう話をつけよう。会場は学園の特別棟だ。今から行くぞ」


 そして婚約者候補を追加する例の騒動が起こるのだった。


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